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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.5 原発輸出~何が問題か?

  • 2014年8月21日

 トルコおよびアラブ首長国連邦(UAE)との原子力協定が、2014年4月18日、国会で承認されました。

 FoE Japanは、危険な原発輸出に道を開くものとして、トルコとの原子力協定に反対してきました。福島原発事故が収束せず、汚染水漏れも対策がたたない中、市民が国会議員に対して「反対」を伝える書簡を何度も出しているトルコに原発を輸出することは問題です。

 原発輸出の問題点や国税の使い道、今後私たちにできることについてまとめました。

税金を使って推進される原発輸出

 大規模でリスクが大きく、相手国のエネルギー政策を大きく左右し、安全保障上も特別な配慮が必要とされる原発輸出は、国の強い関与が必要とされます。

 このため、(1)首相や外相などによる売り込み、(2)国税をつかった事業化のための調査(実施可能性調査)、(3)技術支援/人材育成、(4)国際協力銀行(JBIC)による融資/日本貿易保険(NEXI)による付保――などの支援が行われます。

不透明な日本原電への国税
復興予算の流用、報告書は黒塗り

国税28億5,000万円を使って日本原電が実施したベトナムでの原発調査。ようやく一部開示された報告書は黒塗り
国税28億5,000万円を使って日本原電が実施したベトナムでの原発調査。ようやく一部開示された報告書は黒塗り
 原発輸出のための調査に、国税が不透明な形で支出されていることが問題になっています。 ベトナム中南部に建設予定で、日本の企業グループによる原発輸出が予定されているニントゥアン第二原発。この事業に関して日本原子力発電(株)が実施した調査には、国税合計約28億5,000万円が拠出されています。

 調査の内容に疑念を抱いたFoE Japanや「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、メコン・ウォッチは、何度も報告書の開示を求めてきました。昨年10月には、ようやく一部関連文書が開示されましたが、20億円分の報告書本体は開示されたものに含まれておらず、残りも内容がほとんど黒塗りで判別できませんでした。

 一方、トルコの原発建設についても、国税11億2,000万円をかけて建設予定地の地質調査などが進められています。こちらも受注したのは日本原電です。


原発輸出の問題点

 では、原発輸出の何が問題なのでしょうか?

(1)解決不可能な「核のゴミ」問題の輸出

 放射性廃棄物(核のゴミ)の問題は、日本でもまったく解決していません。
 使用済み核燃料(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場も決まらず、巨額の税金を費やして推進されてきた核燃料サイクルはいまだ実現のめどがたっていません。

(2)一旦踏み込めば抜け出せない利権構造

 原発は、官民学一体で進められ、巨大な利権構造を生み出しました。
 原発の誘致により、各地の経済は原発依存型のものに徐々に変えられていってしまいました。

(3)原発は安くはない!

 算定不可能な原発事故のリスクや放射性廃棄物の処理のコストなどを考えれば、原発は決して安くありません。
 さらに、原発は電力の大量生産・大量消費の社会構造そのものを前提とする大規模集中の発電システムであり、被爆労働がなければ運用が成り立たないことを忘れてはなりません。

日本側の安全確認体制

建設予定地近くの村で魚を干す女性たち(ベトナム)
建設予定地近くの村で魚を干す女性たち(ベトナム)
 トルコやベトナムの原発輸出に対しては、今後、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易保険(NEXI)の公的信用が付与されることが予定されていますが、審査体制が整っていません。事業者が提出した書類をもとに机上での確認を行っていた原子力安全保安院がなくなった後、原子力規制庁はそれを引き継ぐことを断り、宙に浮いた状況になっています。

 もしも、この「確認」を経産省が行うことになれば、原発リスクをそのまま相手国に押し付けることとなります。


トルコ・シノップ原発の問題点

日本領事館前で原発反対を訴えるトルコの市民たち 写真提供:守田敏也さん
日本領事館前で原発反対を訴えるトルコの市民たち 写真提供:守田敏也さん
 こうした原発輸出の問題点をよそにトルコ北部の黒海沿岸で進められているシノップ原発建設計画。総事業費は約220億ドル(約2兆1,700億円)で、三菱重工と伊藤忠商事、フランスの電力・ガス大手GDFスエズ、トルコ国営電力会社(EUAS)の4社が出資予定です。

(1)地震リスク

 トルコは世界有数の地震頻発地帯で、建物やインフラの耐震補強が進んでいないことも指摘されています。

(2)地元市長及び市民が大反対

 地元のシノップ市長は、原発反対を掲げ当選しました。最近も、「シノップ市の未来は観光と教育にある。原発では健康的で豊かな未来が描けない」と発言しています。

 市民も反対のデモを多数開催。4月4日には、100近くのトルコの市民団体から構成される「トルコ反原発同盟」からの書簡がトルコの国会議員宛に出されました。市民たちは命がけで反対の声をあげているのです。この書簡は日本語に翻訳され、参議院の外交防衛委員会の委員たちにも送付されています。


今後私たちにできること

 多額の国税を使って推進される原発輸出。私たち納税者は、これに対して意見を言う権利があるとともに、監視する責任があります。まずは、日本原電の報告書の完全公開や第三者によるチェックを求めていきましょう。

 また、今後は、JBICやNEXIの公的信用付与にあたっての環境社会配慮確認や原発事業の安全確認体制をどうするのか、が焦点になりそうです。FoE Japanは国内外の市民社会と連携し、引き続き問題点を提起していきます。


(『green earth』vol.50 2014 springより抜粋)

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