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「このコンテンツは、FoE Japan発行の『green earth』と提携して情報をお送りしています。

Vol.4 里山と田畑から、私たちの手で未来を作り出そう~ぐるぐるスマイル農園の3年間

  • 2014年7月31日

幅広い層が集って楽しく作業をともにしています
幅広い層が集って楽しく作業をともにしています
 郊外にいくときらびやかな新しい町並みとショッピングモールが増えています。けれどもそれは、広大な田畑をつぶし、里山が切り開かれていることの裏返しでもあります。その一方で開発の対象にもならないようなところでは里山や田畑が惨めな姿に荒廃し、あるいは空き家だらけの町並みやシャッター通りの商店街も増えています。荒廃する里山や田畑、町並みは、私たちの心を映しているようにも思えます。

 里山ぐるぐるスマイル農園(埼玉県小川町・ときがわ町)では、里山を再生し、耕作放棄地を解消しながら、私たちの暮らし方も見直す活動を行っています。


巨大化しすぎた社会のシステム

 少し前まで、正月は家族が集い体を休めながらのんびりゆっくり過ごすものでした。そのための保存のきくご馳走がおせち料理。母親たちが畑の野菜や商店街で買ってきた素材で手作りしたものです。いまや工場で作られたおせちセットを買ってくるか、元旦から開店しているスーパーに買いに行く時代になりました。どこの誰が育てて、どこの誰が作ったのかわからない食べ物。私たちの「食」は巨大流通システムにすっかり依存するようになりました。相次いで起こる、産地や食材の偽装、有毒物質の混入、どんなに流通が「進化」してもそうした事件は無くなることがありません。巨大システムのなかで生産者と消費者が直接的に関わることができなくなったからではないでしょうか。

 食だけでなく、住まいも、エネルギーも、私たちは、巨大システムの中で、お金があれば何でもできるが、お金が無ければ何もできない、という完全な依存体質となってしまいました。自らの手や足を動かして必要なものをつくり出す能力や喜びも忘れてしまいました。しかし、お金で何かを満たすためには依存するシステムが安泰であることが前提です。

ダウンサイジングしていこう

 巨大システムだけに頼らずとも暮らしていける、手の届く範囲、責任の取れる範囲での実践を、各地で積みあげていくことが大切になってきています。背伸びをして大きなことをやろうとしなくても、いっぺんに暮らしを転換しようとしなくてもいいのです。周りの風土や人々との折り合いをつけながら無理なく継続していくことが何よりも大切ではないかと思います。まずは小さくてもいいから最初の一歩を踏み出しましょう。

 できるだけ小さくてシンプルな暮らしを心がけ、深めていきましょう。新しいものばかり求めずに、過去が残してきたものを大事に使う、食べもの、エネルギー、必要な資材や道具をできるだけ近く、手の届く範囲で賄っていく、といったことです。急いで結果を求める必要はありません。周りの人たちと協力し合いながら、プロセスを楽しみましょう。

 究極的にめざすところは、太陽と水と土と生き物たちの営みの中に根を張って、周りの人たちとともに楽しく穏やかに暮らしていくことです。そうしてぐるぐると巡りゆく風土、安心できる場所を自分たちの手で取り戻しましょう。


ぐるぐる農園のめざすところ

  

自然豊かな不耕起田んぼでの田植え。ちびっ子たちもお手伝い(?)
自然豊かな不耕起田んぼでの田植え。ちびっ子たちもお手伝い(?)
味噌づくりのための大豆栽培
味噌づくりのための大豆栽培
たわわに実った稲を刈り取り
たわわに実った稲を刈り取り
 2011年1月に開始した「里山ぐるぐるスマイル農園」。ちょっぴり長いこの屋号は、里山と田畑とのぐるぐると巡る循環の中で、作物やエネルギーを得ながら仲間とともに暮らしていこう、という希望を詰め込んだものです。フィールドは埼玉県の小川町とときがわ町の中山間地域にあります。

 ぐるぐる農園では、自然の営みに委ねた、生命としての作物を栽培していきたいと思っています。人間のほうが自然の都合に合わせていくのです。ぐるぐる農園で行う無農薬有機栽培は、栽培に使う資材も極力外部からの資材に依存しないで、ローカルに得られる自然資源を生かすようにしています。荒れたヤマを手入れして得られる竹や間伐材や落ち葉、田畑の管理で出てくるたくさんの草をフル活用しています。

 草や稲わらは作物の株元にぎっしりマルチします。草で草を抑え、乾燥防止と豊かな生物層を育み、その生物たちの営みによって作物が育つようにします。竹や落ち葉は堆肥になり、米ぬかや近くの搾油工場からの菜種油粕は肥料として、必要に応じて補っています。肥料をたくさん与えて栄養過多に育てるのではなくて、自然の生き物たちが織り成す営みのなかで作物が健康に育っていくようにお手伝いします。


メンバーは消費者であり生産者

温床作り 落ち葉や竹粉に米ぬかやオカラと水を混ぜて踏み込む
温床作り 落ち葉や竹粉に米ぬかやオカラと水を混ぜて踏み込む
簡易薪ストーブと自作したロケットストーブで煮炊き
簡易薪ストーブと自作したロケットストーブで煮炊き
 参加する農園メンバーたちは消費者でありながら生産者にもなります。とにかく体を動かして実践を通じて必要なものを生み出す能力を得ていきます。そして仲間たちとともに共同で作業しながら自給率を高めていきます。

 また、暮らしに必要なエネルギーも、自分たちの手で作り出すことができるように体で覚えていきます。冬の間、ヤマから竹や薪を集めて、薪割りや炭焼きを行います。活動日のお昼には、この薪と廃ペール缶のロケットストーブを使って煮炊きをしています。


 農園を始めて4年目になりました。おかげさまで、竹がびっしり茂って真っ暗だった約4ヘクタール(4万平米)のヤマ(里山)は、だいぶ明るくなってきましたし、耕作放棄地も約70アール(7000平米)ほど開墾してきました。まだまだよちよち歩きですが、もしよかったら一緒に農園を作っていく仲間になりませんか?ぐるぐる農園は、みんなで育てる小さくゆるやかな共同体です。


(『green earth』vol.49 2014 winterより抜粋)

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