建築界に革命が起きるかも。
2018年、メリーランド大学の科学者リャンビン・フー(Liangbing Hu)氏は、普通の木材を鋼鉄よりも強い素材に変える方法を編み出しました。当初は「研究室での話」にすぎないようにも思われましたが、今、この技術が実用化へと動き出しています。
同氏は数年をかけて技術を改良し、かつては製造に一週間以上かかっていた工程を数時間まで短縮することに成功しました。商用化の準備が整うと、彼はその技術をスタートアップ企業InventWood(インベントウッド)に提供します。
同社は、今年の夏より、鋼鉄よりも硬い「スーパーウッド(Superwood)」の生産に取り組んでいくようです。
InventWoodのCEO、アレックス・ラウ(Alex Lau)氏は次のように語ります。現在は、小規模なプラントで生産した素材を、建築物の外装(スキン)用途に展開することに注力しています。
将来的には、建物の骨格(構造材)にまで使用範囲を広げていきたいところです。建築物が排出する炭素の90%は、建設時に使われるコンクリートと鋼鉄によるものであり、スーパーウッドが普及すれば、建築業界にエコロジーな革新をもたらせるでしょう。
InventWoodによると、スーパーウッドは、鋼鉄よりも50%高い引張強度を誇り、強度対重量比では10倍の性能を有するといいます。
加えて、高い防火性能や腐食・害虫への耐性、ポリマー浸透による屋外使用の適性といった特徴も持ち合わせているとのこと。 さらに、スーパーウッドは、圧縮処理での色味が凝縮により、高級な熱帯広葉樹のような美しい外観も実現しています。染色を施さなくても、クルミ材やイペ材のような深みのある色合いになる点も注目すべき特長です。
スーパーウッドの原料はごく普通の木材。木の主成分であるセルロースとリグニンのうち、セルロースを強化して、この素材は生み出されます。
ラウ氏によると、「セルロースナノ結晶は、カーボンファイバーよりも強い」とのこと。
具体的には、食品業界で使用されるような安全な化学処理で木材の分子構造を変化させた後、圧縮処理を施し、セルロース分子間の水素結合を強化します。
素材を4倍に圧縮すれば、繊維量も4倍になり、強度も4倍になると思うかもしれませんが、追加で形成される結合のおかげで、10倍近くの強度になるようです。
InventWoodの初期製品は、商業施設や高級住宅向けの外装材。将来的には、木材チップから製造可能な構造用の梁材(Iビームなど)の展開を目指しているそう。
美しく、強く、環境にもやさしい。スーパーウッドは、建材の常識を塗り替える存在になるかもしれません。
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