手は口ほどにものを言う。コウイカは「手話」で話しているらしい

  • 2025年5月14日
  • Gizmodo Japan

手は口ほどにものを言う。コウイカは「手話」で話しているらしい
Photo: Nand Kapadia

イカとタコ、奥が深すぎる。

新たな研究で、コウイカが触腕を使って仲間と手を振り合う様子が初めて確認されたそうですよ。これまでだれも気づかなかった行動で、コウイカが持つ知性の可能性を広げる発見なのだとか。

手は口ほどにものを言う

コウイカは、その卓越した擬態能力から「海のカメレオン」とも呼ばれています。タコのような他の頭足類は、色を変える能力をコミュニケーションに使います。

今回確認された手を振る行動は、コウイカの知られざる洗練された一面を示し、機械学習を活用してその知性を調査する新たな道を開くといいます。まだ査読を受けていないこの研究は、プレプリント(学術誌に掲載される前に公開される論文)サーバーのbioRxivに掲載されています。

Image: Sophie Cohen-Bodénès / Mendeley Data 研究結果の補足資料サイトの動画より作成

研究チームは、ヨーロッパコウイカ(S. officinalis)とバンダコウイカ(S. bandensis)の2種類のコウイカを対象に、4種類の異なる腕の動き(上のGIF動画を参照)を調べました。

まず、コウイカが手を振ってサインを送っている様子をビデオに撮影し、それを別のコウイカに見せると、映像に向かって手を振り返す反応が見られたそうです。

さらに、ビデオの向きを上下反転させて再生した実験では、正しい向きで見せたときの方が手を振る頻度が高いこともわかりました。

確認されたサインは、「上(up)」「横(side)」「回転(roll)」「王冠(crown)」の4つに分類されています。

手話の意味はまだ不明

コウイカが手を振る意味については、まだ結論が出ていません。研究者たちは、手を振ったあとに他の個体が引き下がる傾向が見られたことから、このサインは優位性を示している可能性があるとしています。

求愛行動の可能性もあるにはあるのですが、性的に成熟していない若いコウイカも同じサインを出していたため、そうとも言い切れないとのこと。

そのほかにも、防御的な状況での威嚇行動や、気分のような内面的な状態を表している可能性もあるといいます。

研究チームは、「これらのサインが象徴的なものであり、状況や文脈に応じてさまざまな意味を持つ可能性があるというのが、もっとも妥当な解釈になります」と論文に記しています。

コウイカは手話と同時に波動も使っている?

驚いたことに、注目すべきは腕を振る動きだけではなさそうです。

手を振る様子は見た目にも印象的ですが、さらに腕の動きは水中に力学的な波を発生させるため、機械刺激受容(振動や圧力などを感じ取る感覚)によっても認識される可能性を探ることになりました。

と、研究チームは述べています。

これはつまり、水中でお互いの姿が見えていない状況でも、他の個体の腕の動きによって生じる振動波を感じ取っている可能性があるというわけです。

研究チームはさらにこう説明します。

視覚実験と同様の再生実験を行なったところ、この仮説を支持する予備的な証拠を得ました。

腕のサインは、視覚と機械刺激受容を含むマルチモーダル信号(複数の情報伝達手段)である可能性を示唆しています。

ここまでくるとわざわざ言う必要もないかもですが、コウイカはとても賢い生き物です。

過去の研究では、より大きな報酬が得られるとわかっていれば、コウイカはそのときをじっと待てる動物であることが確認されています。こういった行動は、ほ乳類や鳥類にしか見られないと考えられていたといいます。

コウイカ語を理解するためのアルゴリズム開発へ

フランスのパリにある高等師範学校の知覚システム研究所に所属し、本研究の主執筆者を務めたSophie Cohen-Bodénès氏をはじめとする研究チームは、機械学習アルゴリズムを用いて、コウイカが刺激に応じてどのようにサインを使い分けているのかをより深く理解できると考えているそうです。

同様の研究はマッコウクジラのクリック音データでも実施され、マッコウクジラの鳴き声のパターンを特定して、彼らの大まかな「アルファベット」を構築することに成功しています。

Cohen-Bodénès氏は、今回の結果に続く研究について、米Gizmodoへのメールで以下のように述べています。

私たちは以前の研究で、皮膚に現れる模様を、追跡と位置合わせを行なったうえで時系列的に自動分析できるアルゴリズムをすでに開発しています。今後は、腕の動きを自動追跡し、『上』『横』『回転』『王冠』といった動作のラベルを自動的に分類・付与できるアルゴリズムを開発したいと考えています。

私たちはまた、2つのアルゴリズムを組み合わせて、サインの仕組みをもっとよく理解できるようにするつもりです。たとえば、あるときは(コウイカの皮膚が)オレンジ色になって『王冠』のサインを出し、またあるときは暗い色になって『上』のサインを出すこともあるでしょう。こうした違いがなぜ起こるのか、機械学習がその理由を解明する手助けをしてくれるかもしれません。

今回の研究は、謎に包まれたコウイカの知性や推論力、行動のほんの一部を見せてくれていますが、それと同時に、この動物にはまだまだ解明すべき多くの秘密が隠されていることも示しているようです。

※ 論文の補足資料サイトには、今回の研究で撮影されたコウイカの動画がたくさん掲載されています。興味がある方はぜひチェックしてみてください。

Reference: Mendeley Data

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