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キャンプの恵み

Vol.86 私たちは間違える

  • 2015年7月23日

自然と親しみ、自然に学ぶために、安全には十分に心を配りたい
自然と親しみ、自然に学ぶために、安全には十分に心を配りたい
 日本キャンプ協会では、毎年7月第3日曜日を「キャンプ安全の日」と定めています。そのきっかけとなったのは、1999年8月に起きた玄倉川水難事故です。これは川原でキャンプをしていたグループが雨による増水で中州に取り残され、結果、13名が亡くなったという痛ましい事故でした。それから15年以上が過ぎ、アウトドアの安全に関する情報もずいぶん増え、多くの人がより配慮するようになりました。しかし、事故が完全になくなったわけではありません。
 事故はさまざまな要因や偶然が重なり合って起こります。すべての要因を取り除くことは不可能なので、最終的には「気をつけるしかない」のですが、それにもまた限界があります。
 「死ぬかとおもった‥」と、心臓がバクバクする経験は多くの人がしたことがあるでしょう。けれど、その時の恐怖はやがて薄れ、つい「あのときと同じように、自分は大丈夫だろう」と思ってしまいます。玄倉川水難事故の場合は再三の警告が無視されており、理解しきれない部分は残るのですが、少なくとも当初は「危ないって言っているけれど、自分たちは大丈夫だろう」と考えていたと想像できます。そして、「逃げなきゃ!」と気持ちを切り替えるタイミングを逸したまま、逃げ遅れてしまったのでしょう。
 こうした、危険を過小評価して「大丈夫だろう」と考える心の動きを正常性バイアスといいます。私たちは、過去に一歩間違えば死んでいたという危機からなんとか逃れたという成功体験を大なり小なり持っています。今も生きていられるのは、危機から逃れられたということなので、成功体験にともなう正常性バイアスを払拭するのはとても難しいのです。
 事故が起こるかもしれないとビクビクしすぎて、まったく楽しめないのでは困ってしまいます。けれど、逃げるタイミングを私たちは簡単に間違ってしまうのだということは、頭の隅っこに置いていてほしいなとおもいます。
 事故のない、楽しい夏休みをお過ごしください。



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