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キャンプの恵み

Vol.84 山芋の声?

  • 2015年6月25日

キャンプ体験 「キャンプといえばなに?」と質問すると、かなり高い確率で「野外炊事」「カレーライス」という答が返ってきます。けれど、これは極めて日本に特有の現象と言えます。ほかの多くの国では、キャンプで野外炊事をすることはあまりありません。アメリカなどでキャンプ場を見学しても、日本のような野外炊事場を備えたところはほとんどないのです。
 どうしてこんな違いが生じたのでしょう?なにか特別な理由があるのでしょうか?

 いろいろ考える中でふと思い出すのが、「野老(ところ)」という狂言の演目です。物語は、旅の僧の前におじいさんの姿をした山芋(野老)の霊が現れて、自分がどのように山から掘り出され、いかに調理されたかを語り尽くし、成仏するというもの。山芋がお坊さんに思いの丈を切々と語るなんて、変な話だと思いませんか?
 実際の山芋は掘り出されても悲しくないだろうし、おいしく食べられたからといってうれしくもないでしょう。けれど、もしかしたら山芋にもそんな心の動きがあるのではないかと思ってしまうのが、日本人なのかもしれません。コメディとして山芋の気持ちを演じたり、それを見て笑ったりする感覚は、食べ物のひとつひとつに意味があって、大切にしなければならないという気持ちにつながっているように思います。

 古い写真を見るとアメリカのキャンプでも野外炊事をやっていたことがわかりますから、キャンプの目的に照らし合わせて取捨選択をする中で、ほかの活動に競り負けたということになります。確かに、野外炊事というのは思いのほか時間がかかるものですし、食中毒の予防など面倒なこともあるので、排除する理由はいくらでも見つかります。
 それなのに日本で野外炊事が続いてきたことは、山芋の成仏の話を楽しんでしまう日本人の感覚と無縁ではないとおもうのです。自宅の台所とは違う環境での苦労しながらの調理は、いつもより食べ物の大切さを感じさせてくれる作用があるのでしょう。そのとき、山芋の声が聞こえてくるかどうかは定かではありませんが‥。



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