日本キャンプ協会の認定資格「キャンプインストラクター」の養成講習会で講師をする機会がありました。その準備をしているとき、教本の中の、キャンプ指導者の資質について書かれた“「人が好き」「自然が好き」ということがあげられます。”という一節に目が留まりました。「人が好き」はよく使われるフレーズですが、どうにも大雑把です。大いなる人類愛を求められているような気もしてきて、「とてもとても私には無理です‥」という気分になってしまいます。
そこで私なりに、「人が好き」の意味を考えてみました。講義の中で紹介した定義は、“人の不可思議な行動に「どうしてだろう?」と興味を持ち続けられる”というものです。
要するに、好意を持てるかどうかではなくて、関心を持ち続けられるかどうかということです。不可思議な行動というのは、指導者の指示とは異なるわけで、団体行動の場面ではちょっと迷惑かもしれません。その時に生じるムッとした感情に振り回されずに、「なんで、そんなことしているのかなぁ?」と関心を持っておもしろがれるのが、「人が好き」の正体なのではないかとおもうのです。
思いがけない雨で予定変更を強いられて、「まいったなぁ‥」とおもうことはあっても、ムッとすることはありません。『雨に濡れても』の歌詞のように、空に向かって文句を言って雨がやむでもなし‥と、さっさと別の方法を選ぶのです。けれど、人が相手となると「話せばわかる」「思いは伝わる」とおもってしまうもので、思い通りにならないことにいらついてしまいがちです。教本に並んでいた「人が好き」と「自然が好き」は、言葉としてはよく似ているけれど、心の動きとしてはずいぶん違うようです。
もちろん、大きな慈悲の心で「人が好き」と言えるならそのほうがいいのでしょうが、私にはどだい無理な話。けれど、「なんで、そんなことをするんだろう?」という関心ならば持つことができそうだとおもうのです。