台湾キャンプの最終日、成田空港に着き、入国審査に向かう通路でトイレに行った子どもたちを待っていると、最年少、小学2年生のKさんが、とても穏やかな笑顔で近づいてきて、言いました。
「ここだと、もっと日本語が通じるね」
その言い方がおもしろくて、ちょっと笑ってしまいました。「そうだねぇ。ここならみんなが日本語をしゃべれるもんね」などと言いながら彼女を見送ったあとで、外国という何もかもが新しい環境の中で、たくさんの初めて会う人たちと5日間を過ごすことは、まだ8歳の彼女にとって大きな冒険だったのだろうなぁと思いました。
キャンプ中の彼女は、時々、わがままな振る舞いを見せることがありました。保護者から「少しわがままなところがあるんですよ」と聞いていたので、そんなものなのかなと思っていたのですが、成田空港で見た笑顔は少し印象が異なるものでした。
なんでだろう? 思いついた仮定は、わがままは、彼女のがんばりから生じる自然な反応だということ。穏やかな笑顔は、ホッとして顔を出した彼女の素の部分なのかもしれません。キャンプでの、そして震災後の新しい生活の中での彼女のがんばりを思い、思いっきりほめてあげたい気持ちになりました。またそれと同時に、日常生活の中で彼女のありのままを受け入れておられる保護者に対して、強い敬意を抱きました。
今回のキャンプはまだ、「これがグリーフキャンプだ!」と胸を張れるような特別なものではありません。学ぶべきことはたくさんありますし、試行錯誤も必要でしょう。
Kさんに関する私の仮定は的外れなものかもしれません。でも、このキャンプのスタッフはみな同じように、キャンパー一人ひとりの言動に注意を払い、彼らの置かれた状況に思いを馳せ、どのように対応すればよいかと考えながら5日間を過ごしました。自信を持って私たちのグリーフキャンプが行えるようになるまでには、もう少し時間が必要でしょう。しかし、「こうした積み重ねがあれば大丈夫」と妙に自信があるのも事実です。
私たちに楽しくも貴重な経験をさせてくれた、キャンパーたちに心から感謝。