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キャンプの恵み

Vol.56 すてきなノーリアクション

  • 2014年5月8日

 言葉はとても重要なコミュニケーションの手段である。

 このことに異を唱える人はないでしょう。けれど、言葉以外の手段も過小評価することはできません。

背中で子どもが少々暴れても、動じることはありません。
背中で子どもが少々暴れても、動じることはありません。
 先日、一橋大学大学院の実習のお手伝いに行きました。実習の中身は、「自閉症の子どもたちと乗馬をする」というものです。今後、グローバルビジネスの世界で活躍をする学生たちが、社会的弱者の立場に置かれることの多い、障害のある子どもたちと時間をともにすることには、とても大きな意味があるとおもいますが、本題はそこではありません。

 本題は「ウマがしゃべらない」ことについてです。

 ウマは、子どもが背中に乗るのをしずかに待ち、しずかに歩き始めます。「乗りたくない」と体をねじる子どもを乗せようとする攻防が背中で繰り広げられていても、意に介す様子はありません。そして、馬場をゆっくり1周すると、さっきまでいやがっていた子も、嘘のように楽しそう。ウマはひと言もしゃべらないのに、どうやらコミュニケーションが成立したようです。


クマのようなおじさんに前足をつかまれていても、ポーカーフェイス
クマのようなおじさんに前足をつかまれていても、ポーカーフェイス
 また、話は3か月ほどさかのぼりますが、アメリカでセラピードッグの研修会に出くわしました。大小、いろんなイヌがいましたが、どれもとてもおとなしいのです。手を伸ばすと近づいてくるものの、頭を撫でてもシッポを振りもせず、素っ気ないと感じるほどでした。

 話を聞くと、どちらも少々のことでは動じないように訓練を受けているそうです。もちろん、驚いて乗っている人を振り落としたり、噛みついたりしないようにという安全面の理由もあるのですが、それだけではありません。言葉のない場所のコミュニケーションでは、過剰なリアクションが邪魔になることもあるのです。

 リアクションが薄い状況だからこそ生まれるコミュニケーションを最大限活発にする取り組みのひとつが、「アニマルセラピー」なのでしょう。ノーリアクションのふりして、見事にコミュニケーションを成立させているウマの姿を見て、ときには言葉を脇に置いて、しずかによりそうことも必要なのだと、改めておもうのです。



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