東日本大震災をきっかけにして、私たちは「グリーフキャンプ」と呼ばれるキャンプに出会いました。「グリーフ」とはさまざまな理由で大切なものを亡くし、その喪失に傷ついた状態を言います。そのような状態にある人たちとキャンプを行い、喪失となんとか折り合いをつけながら生きていける力を身につける支援を目指すのが、グリーフキャンプです。
震災から1年、さまざまな準備を重ねて、ようやく初めてのキャンプを行うことができました。参加したのは、震災によって両親を亡くした8歳から18歳の10人の子どもたち。台湾での4泊5日のキャンプです。
子どもたちにとってはもちろん、私たちにとってもはじめての経験です。最初の目標は、新しい体験をしながら、ともに楽しい時間を持つこと。海外に出かけるのは大きな冒険でしたが、結果として台湾に行ったことは大正解でした。
まだあまり話もしたことがないメンバーと、知らない国に来て、最初はどの顔も緊張しているように見えました。しかし、日本からいっしょのキャンプリーダーと徐々に関係を紡ぎ、安心で安全な環境を自らの力で作り上げていきました。台湾の人たちが提供してくれる活動や、目新しい台湾の食べ物に挑戦しながら、楽しい気持ちも高まっていきます。会話も日に日に増えてゆき、3日目には「うるさい」と言っていいレベルになっていました。その騒がしさに苦笑しながらも、「新しい体験」と「楽しい時間」という最初の目標は達成できたとの確信を持ちました。
一方、グリーフキャンプとして考えると、「安心安全の場所をつくる」というごく初期の条件を満たしたに過ぎません。胸を張って「これが私たちのグリーフキャンプです」と示すことができるようになるには、たくさんの学びとたくさんの試行錯誤が必要です。そして、このキャンプの成果が見えるのはもっと先、この子どもたちが大学生になったり、仕事に就いたり、あるいは家族を持ったりするときかもしれません。このキャンプのことをいつまでも覚えていて、新婚旅行先に台湾を選んでくれたりしたらすてきだな‥と思っています。
私たちは「キャンプの恵み」を証明する長い、長い旅に出ました。幸い、船出は順調なものとなりました。これからも折に触れて、私たちのグリーフキャンプの取り組みをご紹介したいと思います。