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キャンプの恵み

Vol.34 ひとりでは生きられないのも芸のうち

  • 2013年6月20日

 本屋でタイトルが目に飛び込んできて、気になって気になって、中身もわからないままについ買ってしまうということがあります。先日、自宅の本棚を整理していると、そんなふうにして買った一冊が目に入って、読み返してみました。その本のタイトルは『ひとりでは生きられないのも芸のうち』(内田樹著)です。

 なかなか語呂のいいタイトルでしょう?それに、タイトルの意味するところにも共感するのです。なにしろ、キャンプは「ひとりでは生きられない」という芸を持った人を育成するためにあるようなものなのですから。

 キャンプに子どもを送り出す親御さんは、いろんなことが一人でできるように成長してほしいと考えます。確かに、キャンプに行けば一人でできることも増えるでしょう。一方、「キャンプは社会性を育てる」といったうたい文句も聞いたことがあるのではないでしょうか?この「社会性」というのは、ほぼ「ひとりでは生きられない」能力を指すと言ってもよいのではないでしょうか。


 「昔はよかった」と言うつもりは毛頭ありませんが、昔は少々面倒くさいほどに地域コミュニティが機能していて、「お天道様が見ている」という言葉にも妙に信憑性がありました。ですから、子どもであっても周囲に対して無関心というわけにもいかず、「ひとりでは生きられない」という芸が身に付きやすい環境がありました。

 よいキャンプには、キャンプのもつ非日常性や不便を楽しむ空気をうまく利用して、助け合わなければならない環境や、ほかの人を蹴落とすようなタイプの競争を排除した挑戦が巧みに組み入れられています。キャンパーはその経験を通じて、「ひとりでは生きられない」という芸を身につけるわけです。

 さて、この本そのものは、キャンプとはなんの関係ありません。でも、たくさんのエピソードを積み重ねて語られるのは、「あんまりひとりで気を張ってても袋小路に入っちゃうし、いろんな人とゆる〜い感じでうまいことやっていきましょうよ。」ということ。

 なにやらキャンプと通底するものを感じます。


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