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キャンプの恵み

Vol.109 キャンプのなかみ(7) 時間泥棒に盗まれた時間

  • 2016年6月23日
  • (社)日本キャンプ協会

 むっちゃ、ちゃんとしたキャンプ(Organized Camp/オーガナイズド・キャンプ)には、ルソーが『エミール』に描いたような、子ども自身が体験、発見し、学び、その学びを深めていくすばらしさがあります。だから、そんなキャンプがあちこちで行われればよいなと思っているわけですが、今の日本ではオーガナイズド・キャンプをすることがどんどん難しくなっているような気がします。

 自ら体験、発見し、学ぶというプロセスには時間がかかりますから、ちょっと長めの期間のキャンプをやりたいところですが、日本では子どもも大人も、なぜか大忙しです。すっかりおじさんになった私の経験と比べても参考にならないとおもうけれど、子どものころの夏休みはとことんヒマでした。大学生のときも、年に3か月は海外へ貧乏旅行に出かけることができました。でも、今の子どもにも大学生にも、そんな時間の余裕はないそうです。そしてもちろん、大人も忙しそう。たとえば1週間ほどのキャンプにつきあえる大人はそう多くはないでしょう。

 「しかたがない‥」と言ってしまえばそれまでですが、本当にそれでいいのだろうかと考えてしまいます。

 キャンプは人のちからがたくさん必要な労働集約的な事業だから、実はとっても高コストです。すべてを有給という意味でのプロで運営しようとすると、参加費は高くなり、参加できる子どもが限られてしまいます。そこを補うのが寄付やボランティアの働きです。日本では災害義援金のような短期的な寄付は多く集まるのですが、長期的に応援する組織を支えるような寄付は多いとは言えません。ボランティアも質が低いわけではありませんが、まとまった時間が取れないというのは大きなデメリットです。

 多くの青年や大人がボランティアとしてかかわって、ゆっくりとした時間を過ごすことのできるキャンプがたくさん行われる国は、子どもにとっても、大人にとっても豊かなところだとおもいます。けれど今の日本は、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる時間泥棒に時間を盗まれているかのようです。

 たくさんの子どもたちに楽しいオーガナイズド・キャンプを提供し、大学生や大人たちもキャンプにかかわることで豊かな時間を過ごせるよう、時間泥棒から時間を取り返すこと、これは日本のキャンプにとっての大きな、大きな課題です。

 今回で私の担当は終了です。今までありがとうございました。次回からは、吉田大郎が担当します。

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