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「樹木医」 詳細解説

読み:
じゅもくい
英名:
Tree Doctor

多くの樹木からなる森林は、木材生産、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の吸収、気温・湿度の調整、国土保全、水源かん養、生物多様性の保全など、さまざまな機能を持つ。しかし、日本の林業生産は、国産材の価格低迷による採算性の悪化などを受けて停滞し、高齢化による就業者減もあいまって、間伐などの手入れが十分に行われなくなっている。一方、都市部では、緑やオープンスペースを確保するため、都市公園の整備や、都市緑地法に基づく特別緑地保全地区の指定、市民緑地の指定、街路樹の整備など、緑を増やすためにさまざまな取り組みが行われているが、よく見ると、手入れが行き届いていなかったり、枯れかけたりしている樹木は少なくない。樹木医は、森林や都市部などで、環境の悪化や病害虫などが原因で樹勢(樹木の勢い)が衰えた樹木を治療し、元気にする「木のお医者さん」だ。

樹木医は、天然記念物などの巨樹・名木から、街路樹や庭木などの身近な木まで、あらゆる樹木を保護する。たとえば街路樹の場合、樹木の健康状態を診断することから始まる。樹勢に衰えが見られた場合、まず、樹木の概況を診断し、樹勢や樹形、枝の伸張量などを目視により確認する。樹木がどれだけ衰退しているか把握できたら、樹木の状態に合わせて立てた治療方針と計画に基づいて治療を行う。具体的には、傷んだり、病気になったりした樹木の病害虫の防除や、外科手術、土壌改良、周辺環境の整備などだ。また、樹木の維持管理や樹病の予防も行う。日常的な観察に加えて、予防措置や定期健康診断の実施、後継樹の保護育成なども重要な仕事だ。

樹木医になるには、(財)日本緑化センターが1991年度から行っている樹木医資格審査に合格して、登録されることが必要だ。受験資格は、樹木の診断、治療などに関する業務経験が7年以上の人だ。具体的には、大学及び研究所の教職員、研究員(林学、農学、造園学、園芸学など)、国や地方自治体の農林・緑化関係職員、農林業や緑化関係の公益法人及び会社役員、農林高等学校及び専門学校の教職員、造園業・植木生産業・農業・林業などの従事者やそのOBで樹木医にふさわしい実績のある人が対象となる。

樹木医は、森林の樹木を保全するほか、緑化関連の事業を行う企業や団体で、街路樹の植栽や屋上・壁面緑化など都市景観の向上を目指す仕事に就く。また、都道府県などの自治体で、「緑づくりアドバイザー」として緑化全般についての相談を受け付けたり、窓口になったりする。樹木医のニーズが増している一方で、その数は多いとはいえない。2011年4月までに認定された樹木医の総数は1964名だ。樹木医の数を増やすため、同センターは樹木医補の資格認定制度を行っている。樹木学や病虫学などの知識や技術を大学などで学んだ学生を対象にして、樹木医資格取得への道を開くのが目的だ。一方、樹木医がつくる全国組織に日本樹木医会がある。

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