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「石見銀山」 詳細解説

読み:
いわみぎんざん
英名:
Iwami Ginzan Silver Mine and its Cultural Landscape

2007年6月23日、国際連合のユネスコ(国際連合教育科学文化機関:UNESCO)の第31回世界遺産委員会がニュージーランドのクライストチャーチで開催され、日本が世界遺産に推薦していた「石見銀山遺跡とその文化的景観」を世界遺産一覧表に記載することが決議された。石見銀山の世界遺産登録については、ICOMOS(国際記念物遺跡会議:イコモス)が4段階評価のうち下から2番目の「登録延期」の勧告を行うなど、否定的な見解が大勢を占めていた。しかし、文化庁の反論や、政府外交筋による勧告見直しなどのロビー活動が実を結び、審査の終盤で一転、登録に持ち込まれた。その決め手のひとつとなったのが、鉱山に関係する遺跡と自然環境が一体となって文化的景観を形成していること、そして環境への配慮である。石見銀山では、製錬に必要な木材燃料の供給が、森林資源の適切な管理の下に行われていたとされる。こうした、いわば環境配慮型の鉱山運営がなされていたことが、登録にあたって高く評価された。

石見銀山は、日本海に面する島根県大田市にあり、14世紀初頭に石見(現島根県西部)の守護だった大内氏によって発見されたと伝えられている。本格的な開発が始まったのは、16世紀初頭。博多商人の神屋寿禎が朝鮮半島との交易からもたらした新精錬技術「灰吹法」により、銀の産出量が飛躍的に伸びた。石見銀山の歴史は、経済的基盤を築こうとする大名による奪取と攻防の歴史でもある。その領有は大内氏から尼子氏、毛利氏、豊臣氏へと移り、関が原の戦い後に徳川幕府の管轄下に置かれてからは、天領として大久保長安が奉行となり、優れた鉱山経営によって銀の増産が行われた。16世紀以降、ポルトガル船の来航などによる外国貿易が盛んになり、その輸出の中心が銀であったため、石見銀は国際貿易の主役のひとつとなった。しかし、16世紀半ばから産銀量が減り、17世紀前半には大半が休山。明治に維新政府の管理となった後、藤田組などにより維持されたが、1923年に閉山した。現在、山吹城跡などが文化財保護法により史跡として指定されている。また、江戸時代、ねずみ駆除に用いる砒素系殺鼠剤は、同銀山産の砒石から製造されたと伝えられ、「石見銀山」は殺鼠剤の代名詞ともなった。

石見銀山の遺産としての種別は「文化遺産:遺跡(文化的景観を含む)、建造物群」だ。遺跡としての資産構成は、1) 石見銀の採掘・精錬から運搬・積み出しに至る鉱山開発の総体を表す「銀鉱山跡と鉱山町」、2) 銀・銀鉱石、諸物資の輸送路として機能した「街道」、3) 石見銀・銀鉱石の積出港であった「港と港町」―から成る。世界遺産としての登録には、他に類例のない固有のもので、かつ、国際的な判定基準に照らして「顕著で普遍的な価値」があると認められることが必要だ。また、資産価値にふさわしい保存管理がなされていることも求められる。大田市によると、石見銀山の「顕著で普遍的な価値」は次の3点である。1) 日本産銀の流通とそれによる貿易参入によって世界的に重要な経済・文化交流を生み出した点、2) 採掘から精錬までの全作業が人力・手作業で行われるなど、銀生産方式,鉱山開発の伝統的技術の跡が豊富で良好に残された点、3) 銀の生産から搬出に至る全体像を不足なく明確に示している点。

世界遺産は有形の不動産を対象とし、1) 文化遺産(顕著な普遍的価値を有する記念物、建造物群、遺跡、文化的景観など)、2) 自然遺産(顕著な普遍的価値を有する地形や地質、生態系、景観、絶滅のおそれのある動植物の生息・生息地などを含む地域)、3) 複合遺産(文化遺産と自然遺産の両方の価値を兼ね備えている遺産) の3種類がある。世界遺産リストの作成や登録された遺産の保護・支援は、「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき設置された世界遺産委員会が行う。また、ユネスコ内にはユネスコ世界遺産センターがある。2006年7月現在の登録件数は合計で830件だ(文化遺産:644、自然遺産:162、複合遺産24)。

石見銀山の世界遺産登録により、わが国における世界遺産の数は、文化遺産11件、自然遺産3件の合計14件となった。具体的には、登録年順に1) 法隆寺地域の仏教建造物、2) 姫路城、3) 屋久島、4) 白神山地、5) 古都京都の文化財、6) 白川郷・五箇山の合掌造り集落、7) 厳島神社、8) 広島平和記念物=原爆ドーム、9) 古都奈良の文化財、10) 日光の社寺、11) 琉球王国のグスクおよび関連遺跡群、12) 紀伊山地の霊場と参詣道、13) 知床、14) 石見銀山遺跡とその文化的景観。このうち、屋久島、白神山地、知床が自然遺産だ。現在、日本政府は「平泉―浄土思想に関連する文化的景観」の世界遺産への登録を推薦しており、2008年の世界遺産委員会で審議される予定だ。

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