酸素は周囲のものを酸化させる性質をもっている。空気中でものが燃えたり、食用油が変質したり、鉄が錆びたりするのもこの酸化作用による。呼吸によって体の中に取り入れられた酸素も、空気中の酸素と同様に、体内で遺伝子や細胞を酸化させ、健康に悪影響を与えるようになる。このような酸素を活性酸素という。
呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、体内で栄養分を燃やして、生命を持続させるために必要なエネルギーをつくり出す。この栄養分を分解するときに酸化作用が起こり、活性酸素が生み出される。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の約2〜3%が活性酸素に変わるといわれているが、これらの活性酸素はもともと人間の身体に備わっている抗酸化物質によって無害化され、活性酸素の害から体が守られている。しかし、激しいスポーツ、タバコや車の排気ガス、大量の紫外線、農薬などの化学物質、食品添加物の大量摂取、ストレスなどによって、活性酸素が過剰に発生すると、老化や発がん性、腎障害、動脈硬化、白内障などの促進につながるとされる。
活性酸素と老化現象・生活習慣病の関連性を探る研究はアメリカを中心に行われてきた。その研究によると、活性酸素は,1.遺伝子(DNA)を形成する核酸を酸化させ、がん細胞を発生させる、2.細胞膜に含まれる不飽和脂肪酸を酸化させ、過酸化脂質という物質をつくり、細胞を破壊する、3.老化色素であるリボフスチンをつくり、細胞の動きを止めて老化を促進するとされている。
日本では1990年代初め頃から活性酸素に注目が集まるようになり、活性酸素の発生を抑える生活習慣や食べ物、サプリメントなどが話題となった。また、放射線医学総合研究所の放射線安全研究センターでは、大阪大学などとの共同研究で、ビタミンEやカテキンなどの抗酸化物質によるフリーラジカル消去メカニズムを分子レベルで解明するとともに、溶媒によってメカニズムが大きく変わることを、2005年に公表。活性酸素やフリーラジカルによる生体組織の酸化を抑えることで、がんや動脈硬化などの予防効果が高い新薬の開発が可能となると期待されている。