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「メキシコ湾原油流出事故」 詳細解説

読み:
めきしこわんげんゆりゅうしゅつじこ
英名:
The Gulf of Mexico Oil Spill

2010年4月20日、米国ルイジアナ州のメキシコ湾沖合にある英国の石油大手BP社の石油掘削施設が爆発し、掘削リグが沈没する事故が起きた。この施設は同湾の深海約1500mに広がる海底油田から、総延長5km以上の掘削パイプを使って原油を採取するために設置されたものだった。しかし、坑井を構築するためのセメンチングという作業中に、原油が掘削パイプの先端から猛烈な勢いで噴き出す「暴墳」と呼ばれる現象が発生。施設は炎上を続け2日後に沈没した。

BPは当初、原油の流出量を日量約1000バレルと推定し、海底にある防噴装置のバルブを遠隔操作ロボットにより閉めようとしたが失敗した。しかも原油が壊れた防噴装置など3カ所から漏れており、原油の流出量は当初推定の5倍以上に修正された。なお、その後の米国政府の科学者チームによる分析で、最大で日量6万バレルに及ぶことが判明している。米国政府の対応を見ると、オバマ大統領は5月2日に事故現場を視察し、全力を尽くして対応にあたると述べた。また、科学・工学・環境・エネルギーなど各分野の専門家から成る事故対策委員会を設置。原因究明と影響を軽減する方策の検討を行った。

その間も原油の流出を食い止めるための作業が続けられた。まず、防噴装置の流出口に回収ボックスをふたのようにかぶせたが、原油の回収には至らなかった。また、防墳装置にセメントを注入して原油の流出を制御しようとしたがこれも失敗。万事休すと思われたが、防噴装置にじょうごのようなキャップをかぶせて流出油をパイプで海上まで吸い上げる作戦が成功し、7月中旬に新しいキャップの取り付けが終わり、完全に封印。8月中旬に坑井へセメントを注入して作業は終了した。また、こうした作業と並行して海中に油分中和剤が散布された。そして9月19日、別の場所で掘削したリリーフ井により坑井へとセメントを流し込み、終結宣言が出た。

事故発生から3カ月間にわたって同湾へ流出した原油の量は、約490万バレル(約78万キロリットル)に及ぶ。1991年にクウェート沖で起きた原油流出事故の約400万バレルを越え、史上最悪の原油流出事故となった。油井の火災と大量の原油流出は海洋に深刻な被害を与えるだけでなく、大気汚染などさまざまな環境問題を引き起こす。また、漁業への悪影響や風評被害の規模は計り知れない。2010年6月に開催された公聴会の場で証言したBPのヘイワード最高経営責任者は、事故発生について謝罪したものの、事故原因については明言しなかった。しかし、BPは地元住民への補償や環境修復の費用として、総額で約400億ドル(約3兆2800億円)を見込み、一部は支出済みだ。

その後も事故原因の究明と再発防止策の検討は続けられ、米国政府の事故対策委員会が2011年1月にメキシコ湾原油流出事故に関する最終報告書を公表した。同報告は、今回の事故はBPや関連企業の過失が重なって起きたと指摘。一方、政府の危機管理体制にも問題があったとしている。また、石油・ガス業界による自己管理の強化を求めている。米国政府は現在、油濁法を改正して海底油田から原油が流出した場合の損害賠償の上限額を引き上げるなど、対策法案を審議している。

事故を受けて、各国政府や企業、NGO/NPOなどがさまざまな支援を行った。2010年11月に韓国で行われたG20サミットでは、メキシコ湾石油流出事故を踏まえた海洋環境保護の経験を共有していくことが支持された。

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