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「硫黄酸化物(SOx)」 詳細解説

読み:
いおうさんかぶつ
英名:
Sulfur Oxygen X

硫黄酸化物(SOx、「ソックス」と読む)は、石油や石炭のように硫黄分を含む化石燃料が燃える時に発生する物質で、大気汚染物質の二酸化硫黄(SO2)はその代表的なものだ。わが国では1960年代の高度経済成長期に大量の燃料を使用したため、SOxによる大気汚染が急速に悪化した。SOxはぜん息や気管支炎などの呼吸器疾患の原因となり、なかでも三重県の四日市市で起きた「四日市ぜん息」は四大公害のひとつで産業公害の典型例だ。また、SOxが大気中で硫酸(H2SO4)に変化すると酸性雨の原因となる。

SOxは自動車などの移動発生源からも排出されるが、大部分は工場などの固定発生源から排出される。1968年に制定された「大気汚染防止法」では、ボイラーや廃棄物焼却炉などにおける物の燃焼に伴って発生するSOxを「ばい煙」として、排出基準を定めている。具体的には、発生施設の排出口の高さと地域ごとに定数(K値)を定め、その値に応じて規制値(量)を設定することで、個別排出源からの排出量を抑えている。K値は地域区分ごとに異なり、数字が小さいほど規制が厳しいことを意味する。また、季節による燃料使用基準もある。

SOxによる大気汚染の改善に威力を発揮したのが、個別排出源ではなく地域で発生する総量を規制する「総量規制」方式だ。大気汚染防止法などによる規制強化でSOxの濃度は下がった。しかし、コンビナートなど工場が密集する地域では深刻な状況が続いていたため、1972年に三重県が総量規制を盛り込んだ条例を制定。その後、国が1974年に大気汚染防止法を改正して、都道府県知事が指定した地域にある特定工場に総量規制基準を適用する制度を創設した。総量規制基準は総量削減計画に基づき地域や工場ごとに設定され、現在24地域が指定されている。また、新・増設された特定工場に対しては、一般の基準よりも厳しい基準が適用される。
SOxの排出を削減するための技術としては、燃料に含まれる硫黄分を事前に取り除く燃料脱硫のほか、専用の装置によってSOxを燃焼ガスから除去する排煙脱硫などがある。政府や自治体による規制強化や処理技術の進展によって、わが国におけるSOxによる大気汚染は良好な状態が続いている。一方で、中国などの新興国や東南アジアなどの途上国における工業化の進展に伴い、それらの地域で発生したSOxを原因とする酸性雨などの越境大気汚染が問題となっている。

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