
整形外科医の父親に「二重にすれば、美人になる」と言われたり、すれ違いざま知らない男性に「すっげー、ブス」と言われたことがきっかけで二重整形、ほうれい線、シミ、イボなどを除去し「綺麗になる努力」を惜しまなかった。なのに、どうしてかわいくなれないの?うみの韻花(@umino_otoka)さんの実体験を漫画化した「14歳で整形した私 『ブス』の呪いから解けて自分を好きになる日まで」を紹介するとともに、本作を通して伝えたいことを作者に聞く。
■整形したときは「かわいい」と思えるのに、時間が経つとまた「気になる」欲求は果てしない
「14歳で整形した私」15 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
成長期、容姿を否定されたことが大きな呪いとなることがある。作者のうみの韻花さんもその一人。整形外科医だった父親に「二重にすれば、将来ものすごく美人になる」と言われ、14才で二重の埋没整形をした。まだ、外見に無頓着だった14歳という年ごろでも二重にした方が「かわいい」と思ったという。
「14歳で整形した私」16 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
それから数年後、すれ違いざま知らない男性に言われた「すっげー、ブス」という心ない一言を流すことができなかった。これがきっかけで2度目の二重施術に。埋没法の糸が切れ、アイプチをしていたことでまぶたが伸びていたせいもあって思った二重幅にならず、切開手術を受ける。その後も、ほうれい線、シミ、イボなど、肌メンテナンスを行い、きれいな自分を目指した。次に彼氏に「胸がない」と言われ、豊胸手術をしたり、「理想の顔」を求めるようになり、鼻をいじったりと整形沼にはまっていった。
「14歳で整形した私」46 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
本作を描いたきっかけは、「モラハラの彼と別れたことをきっかけで『人生をまた一からやり直そう』と一念発起し、幼いころからの夢である漫画家を目指すことにしました。当時、漫画で『整形』をテーマとした作品は数少なく『実録エッセイなら、よりリアルで目立つのではないか…?』と思い、描き始めたのがきっかけです。誰かに批判されたとしても、自分自身のありのままの体験を漫画にしようと決めました」と、うみのさんはいう。
「14歳で整形した私」49 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
今までに整形をした箇所を聞くと、「目は埋没・二重切開が2回・目頭目尻切開とグラマラス形成。鼻は、小鼻縮小・軟骨移植鼻尖形成・わし鼻削り…といった鼻フル整形を2回。輪郭などは、頬と顎下の脂肪吸引注射、糸リフトを数回。ほうれい線・涙袋・顎・唇にヒアルロン酸注射、おでことこめかみに皮下組織再生注射。胸は、脂肪再生豊胸という再生医療の豊胸を4~5回しました」と、多岐にわたる。その総額を聞くと、「700万以上はかかってると思います」とか。
「14歳で整形した私」52 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
自分の容姿が好きになれず、整形沼に陥ったときもあったという。満足するのは一時的。漫画では、鏡を見ると自分をかわいく思えない、醜いと感じてしまうシーンが描かれる。「自分ををかわいく思えない、醜いと思う苦悩や葛藤をどう表現すれば伝わるか悩んだ結果、外見に執着するあまりに心が歪んだ化け物のような自分を描くことにしました。それほど当時は自分の顔が醜く見えていたのと、外見に執着する様は客観的に見れば、きっと恐怖で異常性を感じさせるものがあるだろうと思い、あのころの辛かった記憶を呼び起こし、力を込めて描きました。思い出して泣きながら描いたこともありました」ルッキズムが心を狂わせ、自分を愛せなくなっていったうみのさん。
「14歳で整形した私」62 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
しかし、それを乗り越えた今は、「整形はしてよかったと思います。2回目の鼻の整形で鼻の穴にかなりの左右差ができてしまい、気になっている現状ではありますが…。それでも、整形前のコンプレックスは解消されましたし、自分に自信を持つことができました」自身のコンプレックスを払拭できたことで前向きになったようだ。「今は胸を張って堂々と歩ける。まだ自分の中では理想の見た目ではありませんが、私を『かわいい』『キレイ』と言ってくれる人がいる。整形をする中で失敗したり、かわいくなかったり…、そう思い心を病んでしまうことは何度もありました。でもその経験を経て、少しずつ自分で自分を認めてあげられるようになりました。整形は『自分を好きになるために勇気を出した証』で、人生の勲章だと思っています」自身を認めるまでには、大きな葛藤があったようだ。
「14歳で整形した私」61 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
「外見やコンプレックスを抱えて悩み苦しむ人はたくさんいると思います。そういう悩みって根深いもので、あまり他人に相談できず、1人で抱え込んでしまうことも。そんな人たちに『悩んでるのはあなただけじゃないよ、だから大丈夫』と、本書を通して伝えたいです。そして、『人は見た目が一番大事』と言われてるけれど大事なのは見た目だけじゃない。他人の言葉の暴力に惑わされず、自分をしっかり持って生きてほしい。この作品を通して少しでも伝えられたらうれしいです。この本が誰かの心の拠りどころになりますように」自分の顔を好きになれないと苦悩する姿に共感する読者からは、「容姿にコンプレックスを感じたことがある人は、一度で良いから読んでみて欲しいです」と、コメントが届く。
「14歳で整形した私」73 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
SNSでは注射やプチ整形などの情報が溢れ、整形の敷居も低くなってきた。そんななか施術選びで気を付けたいことを聞くと、「施術のリスク・後遺症の可能性を理解して、ご自身で納得した上で整形をしてほしいです。とくに鼻の手術は顔の中心パーツですし、慎重にしないと何度も私のように再手術する『修正沼』にハマる可能性が高いです。SNSで最近流行り出したばかりの施術を安易に受けたり、流行りの鼻や目にするのも、一回踏みとどまって考えてください。最近出てきたばかりの施術は、安全性が不明確で、流行りの鼻や目はすぐまた次の流行りがきて廃れてしまうので、自分に似合う自然なものがいいかなと思います。どうかいい執刀医に出会えますように」と、うみのさんはポイントを教えてくれた。「一回で整形を終わらせるためにも、“その一回”を受けるための下準備をしっかりすることが大事だと」いう。
「14歳で整形した私」90 / 画像提供:(C)うみの韻花/KADOKAWA
また、うみのさんは2025年6月19日に2冊目の書籍「人生もっとうまくやれたのに 港区女子の絶望と幸せ」を発売する。かわいいを武器に"ギャラ飲み"の世界へと足を踏み入れ、港区女子として振る舞う主人公。やがておごられる額やランクが自己価値と結びつき、心が歪んでいく様を描く。イージーモードだと思っていた人生から一転、彼女が辿り着く先は?制作期間に1年半かかったという新作にも注目したい!
取材協力:うみの韻花(@umino_otoka)
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