
ビジネスの場においてマナーは大切であるが、時代に即さない謎のマナーも数多く残っている。昭和や平成の時代には“常識”とされていたマナーも、令和の現代では賛否両論が巻き起こる事案も。今回は、そんなビジネスマナーのなかから、「ハンコ」にまつわるエピソードを紹介する。
歪みもなく、真っ直ぐに押印したのになぜ? / まくべす(@maxvess3)
課長のもとへ書類の押印をお願いに行った平社員のぬこリーマン。しかし課長は書類をひと目見るや否や「なんだこりゃ?」と叫ぶ。「やり直しだ」と言われるも、何が間違っているのかわからないぬこリーマンに上司である課長は「ハンコの押し方が違うっ!」と一喝!しっかりとまっすぐに押印できているのに、何が違うというのだろうか?
社会に出ると、たくさんのビジネスマナーを教わるが… / まくべす(@maxvess3)
課長は「左に傾けて押印するのが常識だ」という。左に傾けて押印すると、ハンコが上司にお辞儀をしているように見え、書類上で部下が上司に頭を下げていることになる。お辞儀をしていないハンコは失礼に当たるらしい。この「サラリーマンのあるある」の漫画を描いたまくべす(@maxvess3)さんに話を聞いてみた。
どこがダメだというのか?その理由は? / まくべす(@maxvess3)
――このネタを漫画に描いたきっかけがありましたら教えてください。
最近はかなり電子化されてきたのでハンコを捺印するケースもあまりなくなりましたが、私が社会人になりたてのころは何かあるたびに書類にハンコを押していて、“角度にこだわるのが社会の常識”として聞かされていました。正直「そこにこだわる意味があるのかな…」という疑問を昔からもっていたので、このモヤモヤを晴らしたく、漫画にしました!
――実際にまくべすさんも過去にこのハンコマナーを教わったことはあるのでしょうか?
実際に教わったことや、注意されたことはないですね。まわりのみんなも、なんとなくそれが常識だと思っていて、なんとなくそうしてた…というような雰囲気でした。金融関係や役所勤めしている友人からは「守らなければならない暗黙のルールである」という話を聞いたことはあります。
この「お辞儀ハンコ」と呼ばれるビジネスマナーは、日本の金融業界を中心に慣習となったビジネスマナーで、それが一般企業にも広まったとされている。しかも目下の人になればなるほど、お辞儀の傾きを深くしなければならないというルールも付随して存在し、押印人数が多ければ多いほど、角度を計算して押さなければいけないことも!また、一部では「ハンコが天地逆に押されて返された場合は「承認したくないけど仕方なく承認した」という意味を含んでいるという話も!
世界広しといえども現在もハンコを使用して契約を締結する国は日本のみとも言われており、ハンコ文化発祥の中国ですら現在は使用していないらしい。「お辞儀ハンコ」も日本オリジナルのおもしろいマナーと言えるだろう。
ほかにも、「ビールはラベルを上にして注ぐ」「乾杯のときは上司よりグラスを下にしなくてはいけない」「名刺交換の際は相手よりも下側で渡す」「取引先で出されたお茶は飲んではいけない」など昔は常識だった“謎のビジネスマナー”は数多くあり、それらのマナーを肯定するわけでも否定するわけでもないが、マナーが生まれた理由やルーツを探ってみるのはおもしろそうだ。
現在はWeb広告関係の仕事をする傍らで、サラリーマンのあるあるを描いたまくべすさんの漫画「目指せ!日本一の社畜!ぬこリーマン」は、SNSにて新作が随時更新されているので、ほかの作品も気になった人はまくべすさんのSNSを覗いてみよう!
画像提供:まくべす(@maxvess3)