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学生たちの赤裸々な恋愛事情が授業に?都立大学で10年以上続く人気講義「恋愛学」が書籍化!

  • 2023年6月16日
  • Walkerplus

1年ほど前、内閣府の研究会で「恋愛支援のため、教育に『壁ドン』を組み込む」という提案があったとニュースで知って、ぎょっとしたことがある。この春も、少子化の要因として語られた「恋愛力の低下」というワードがTwitterでトレンド入りし、違和感に首をひねった。そんな状況だったこともあり、『恋愛の授業』というタイトルに惹かれたのかもしれない。

※2023年5月16日掲載、ダ・ヴィンチWebの転載記事です

『恋愛の授業 恋は傷つく絶好のチャンス。めざせ10連敗!』(丘沢静也/講談社)は、東京都立大学の金曜4限、学生に「恋愛学」と呼ばれている人気授業を、ライブ感あふれる語り口で書籍化したものである。

この授業、付録の2019年前期シラバスに掲載されている正式な科目名は、「ドイツ語圏文化論」だ。オペラや音楽、バレエ、詩や小説などの名作を取り上げ、「恋愛をのぞき見する」授業であると書いてある。「習得できる知識・能力や授業の目的・到達目標」の欄には、「恋愛作法の達人になるのは、ふふ、無理だろうけど、『恋する私』や『失恋した私』をながめる眼鏡くらいは、手に入るかも。目指せ10連敗!」。

シラバスの書きぶりからも察せられるように、この授業は、著者のご高説を拝聴するものではない。学生たちは授業中に、オペラ『ドン・ジョヴァンニ』や太宰治の恋文、文学、ヴィトゲンシュタインの哲学、映画、ときには現代日本のドキュメンタリーやドラマ『カルテット』などの素材に登場する恋愛を見聞きして、どのように感じたか、考えたかを、著者からの問いに答える形で「紙メール」と呼ばれるリアクションペーパーに書いて提出する。授業は、著者がそのリアクションペーパーを読み、次回の講義の素材を決めて、学生たちの声を匿名で紹介しながら進む。

引用----
恋愛には相手が必要だ。そして相手はいろいろ。恋愛は(答える「私」とは無関係に成立する数学の答えのような“解答”ではなく、いつも「私」がかかわっている)回答の問題だから、正解がない。(※括弧内は筆者)
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「私」がどう感じているかを言語化し、リアクションペーパーで同じ教室にいる人たちの考えを知り、「恋愛」というひとつのテーマをさまざまな角度から眺めることは、「私」という殻を破って周囲を見回すこと、恋愛という正解がないテーマに向き合うことの練習になる。そしてそれは、そのまま人生に役立つ能力になるはずだ。こんな授業を経験していれば、たとえば「少子化」という複合的な問題についても、壁ドンの練習や恋愛力(?)の向上だけでなく、効果的な対策が挙げられるのではないかと思うが、どうだろうか。

この1冊を通して、恋愛にまつわる見識を深めるもよし、世の中の見方についてのヒントを得るもよし、大学の講義に参加している気分を味わうもよし、若者の生の声を知るもよし。恋愛と同じように、本書の読み方にも正解はない。10年以上続く人気講義の“実況中継”に、あなたもきっと夢中になる。

文=三田ゆき

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