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コーヒーで旅する日本/東海編|朝から夕方までの時間を、コーヒーのテイストに投影。「kissa hitonoto.」

  • 2023年6月14日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも名古屋の喫茶文化に代表される独自のコーヒーカルチャーを持つ東海はロースターやバリスタがそれぞれのスタイルを確立し、多種多様なコーヒーカルチャーを形成。そんな東海で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

東海編の第26回は、名古屋・八田にある「kissa hitonoto.」。名古屋の喫茶文化をリスペクトする滿田さんご夫婦が、モーニングの時間帯から営業しているカフェだ。InstagramなどのSNSでは、ビジュアルインパクトの強いアレンジトースト“ごパン”が注目されているが、実はコーヒー好きからの評価も高い。ご主人の圭亮さんのエスプレッソ抽出技術は、同業者からも称賛される腕前なのだ。真梨さんが「店名の『hitonoto』は、漢字にすると『人の灯』と書きます」と話すように、「kissa hitonoto.」では、コーヒーにも“光”のイメージを託しているという。丁寧に抽出されたコーヒーをいただくと、心にポッと灯がともるような温かい気持ちになった。

Profile|滿田圭亮(みつた・けいすけ)、真梨(まり)
滿田圭亮さんは1984(昭和59)年、千葉県市川市育ち。真梨さんは1992(平成4)年、愛知県名古屋市生まれ。もともとカフェ好きだった真梨さんは、「カフェで働きたい」と当時の仕事を退職し、名古屋市内にあった人気カフェで働くことに。ここで、バリスタとして活躍していた圭亮さんと出会い、結婚。ふたりでカフェを開業するために物件を探し始め、2021年に「kissa hitonoto」をオープン。

■真似しやすいアレンジトーストが話題
地下鉄八田駅から徒歩10分。名古屋市西部に位置し、大通りから少し外れるだけでのんびりとした空気が漂っているこの場所に「kissa hitonoto.」がオープンしたのは、2021年のことだった。人気カフェで働いていた滿田さん夫妻が、コーヒースタンドだった場所をそのまま利用してカフェを始めたのだ。長くこの土地に暮らしてきた人が多い場所柄、地域に根付く喫茶店を目指して、モーニングの時間帯からのんびりと営業している。

「ここはキッチン設備がないので、できることは限られています。だから、コーヒーと、真似したくなるようなアレンジトーストを提供しようと考えました」と話すのは、奥さまの真梨さん。開店当初は10種類にも満たなかったアレンジトースト“ごパン”だが、現在は26種類まで増えた。「飽きないように、いろいろやってみたらこんなに増えてしまいました」と笑うが、“ごパン”はそれだけアレンジの幅が広いということ。パンはご近所である「ベーカリー ヴィンチ・パンドーロ」の小ぶりな山形食パンを使用し、アレンジは食事系からスイーツ系まで実に多彩だ。なかでも、名古屋らしいあんこを挟んだ“ごパン”はコーヒーとの相性が特に良い。

おしゃれな店内も、カフェ好きの心を直撃する。「居抜きなので、内装は特に触っていません」と言うが、瑠璃紺色の壁にマットブラックの天井、座り心地の柔らかいデザインチェア、フレンチカントリーテイストのカウンターと、どこを切り取っても絵になる空間ばかりだ。

■ミルクと合わさった時のバランスが見事
エスプレッソはラ・マルゾッコのリネアミニで抽出。豆は、深煎りの専用ブレンドを使用する。ブレンドを依頼したのは、圭亮さんの大好きなロースターである愛知県日進市の「自家焙煎珈琲 豆楽」だ。グアテマラ、エチオピア、タンザニア、マンデリン、コスタリカ、コロンビアの6種類を組み合わせ、チョコレートのような深い香りと、ベリーのようなフルーティーな酸味、少しナッツのような香ばしさも感じられる仕上がりになった。

これがミルクと合わさると、まるでいちごミルクのようなフルーティーで甘味のあるカフェラテになる。ホットをオーダーすると美しいラテアートを描いてくれるが、夏の時期にはひんやりしたアイスカフェラテも人気がある。これは、日中の活動的な時間に楽しむブレイクタイムにぴったりではないだろうか。爽やかに広がるエスプレッソの香りに、心がスッと軽くなった。

■夫婦それぞれの好みを反映させたブレンド
ハンドドリップはブレンドとシングルオリジンがあり、ブレンドは2種類を固定で用意している。ひとつは朝日をイメージしたsunrise、もうひとつは夕日をイメージしたsunsetだ。「どちらも『自家焙煎珈琲 豆楽』さんに作っていただきました。狙った訳ではないですが、夫婦それぞれの好みを反映したブレンドになりました」と真梨さん。この2つのブレンドは、使っている豆の種類は同じ。どちらもコロンビア、ケニア、タンザニア、エチオピアの4種類だ。このうち、タンザニアの焙煎度合いを変えて、それぞれのブレンドのテイストを表現している。

ブレンドのsunriseには真梨さんの好みが色濃く反映されている。「sunriseは中深煎りの焙煎度合い。朝に飲みたくなるようなさっぱりとした味わいの中に、どこか深みを感じさせます。これは、私の好みで決めた味です。名古屋の人は濃いめが好きという人が多いので、サラッと飲みやすいだけではなくボディー感も意識しました」

一方、ブレンドのsunsetは圭亮さんの好みが反映されている。「sunsetは深煎りの焙煎度合い。だんだん夜になっていく時間をイメージして、光がありつつもガツンと濃いしっかりした味わいを目指しました」

安定した味を出すために、ドリッパーはカリタウェーブを使用。お湯は88度と少し低めの温度にして、広がりすぎないように円を描きながら注いでいく。

■浅煎りのおいしさも知ってほしい
シングルオリジンは、オープンして1カ月が経った頃からメニューに加わった。石川県金沢市の「Nonstop Coffee Stand & Roastery」の豆を取り寄せ、時期ごとに2種類をラインナップしている。「最初は浅煎りのコーヒーが好きではなかったのですが、飲んでいくにつれてその良さがわかるようになってきました。フルーティーさや、スパイス感、紅茶のような繊細で豊かなフレーバーなど、浅煎りならではの味わいを知ってもらえたらうれしいです」と真梨さん。浅煎りの味わいを生かすために、ドリッパーはORIGAMIを使用。ブレンドと使い分けている。

「kissa hitonoto.」は、名古屋市西部という郊外から、さまざまなコーヒーの一面を提示する。昔から名古屋の人に愛されてきたガツンと濃い深煎りのsunset、ボディー感はありつつもさっぱりとした飲み口のsunrise、ミルクと合わさることでフルーティーさも感じられるカフェラテ、コーヒーが苦手だと思っていた人にも好評な飲みやすい浅煎り。魅力的な“ごパン”に惹かれて店を訪れ、知らなかったコーヒーの魅力を知る人も少なくない。モーニングやランチもあるので、時間帯に合わせてコーヒーを変えてみるのもいいだろう。ここに来ると肩肘を張らずに楽しくコーヒーを選ぶことができ、知らなかった味を試してみたくなる。

■滿田さんレコメンドのコーヒーショップは「HAJIKAMI」
「愛知県半田市の『HAJIKAMI』は、プライベートでもよく行く大好きな店です。いろいろな国のご飯とビールを楽しめる多国籍料理の古民家レストランで、海外にいるような気分になれるのが楽しいですね。ご飯がおいしくて、コーヒーもおいしい!カフェラテが特に気に入っています」(真梨さん)

【kissa hitonoto.のコーヒーデータ】
●焙煎機/なし
●抽出/ハンドドリップ(カリタウェーブ、ORIGAMI)、エスプレッソマシン(ラ・マルゾッコ リネアミニ)
●焙煎度合い/浅煎り~深煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/100グラム900円~

取材・文=大川真由美
撮影=古川寛二


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