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コーヒーで旅する日本/九州編|渡り鳥のように北欧から日本へ。「FUGLEN FUKUOKA」がコーヒーの街、福岡にもたらすもの

  • 2023年3月6日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第65回は、福岡県福岡市にある「FUGLEN FUKUOKA」。ノルウェーのオスロに本店を構え、海外初の支店として開いたのが東京・渋谷。現在、浅草、羽根木公園に加え、神奈川県川崎市にロースタリーを展開する人気コーヒーショップだ。2022年9月に九州初となる店舗を福岡にオープンさせ、コーヒー好き以外からも注目される同店。ノルディックローストと呼ぶ果実味を前面に打ち出した浅煎りコーヒー、さまざまなシーンで利用できるフレキシブルなスタイル。オープンから約半年を経て、福岡のコーヒーシーンに馴染み始めた「FUGLEN」の魅力を探る。

Profile|鮫島隆秀(さめしま・たかひで)
1988(昭和63)年、神奈川県藤沢市生まれ。大学卒業後、金融機関に就職。約4年勤めた後、ワーキングホリデー制度を利用し、カナダ、オーストラリアでそれぞれ1年ずつ暮らす。現地でコーヒーを主体としたカフェカルチャーに触れ、カフェがコミュニケーションの生まれる場所であることを実感。帰国後、飲食業の世界に飛び込み、30歳で「FUGLEN ASAKUSA」で働き始める。2022年9月にオープンした「FUGLEN FUKUOKA」のマネージャーとして福岡に異動。

■オスロ発、世界的なコーヒーショップ
1963(昭和38)年にノルウェーのオスロで創業した「FUGLEN(フグレン)」。もともと「KAFFE FUGLEN」という地元民に愛された喫茶店だったが所有者の事情により閉店せざるを得なくなり、2008(平成20)年に現在のオーナー・アイナール氏が店舗を買い取って「FUGLEN」を誕生させた。独自のコンセプトである“カフェバー&スカンジナビアデザイン&カクテルバー”を確立し、今では世界的なコーヒーショップとして広く知られるまでになっている。

そんな同店が海外初の支店として2012(平成24)年にオープンしたのが渋谷区富ヶ谷にある「FUGLEN TOKYO」だ。オスロの本店同様、1940〜1970年代のアンティーク家具や壁紙が配された空間は開店当時から話題を集めた。生豆の果実味を表現したノルディックロースト(浅煎り)のコーヒー、ノルウェーのスピリッツを使用したカクテルなど、ドリンクメニューも当時の東京では真新しく、またたく間に富ヶ谷エリアのアイコン的なカフェバーへと成長。コーヒー好きの間で「FUGLEN」の名は広まり、遠く九州にいても、その噂はよく耳にした。「一度は行ってみたい」と思っていた人も多いはずだ。

■縁と街の雰囲気に惹かれ、福岡へ
「『FUGLEN』が福岡にオープンするらしい」という噂を耳にしたのは2022年5月ごろ。関東以外で初の出店となる場所が東海や関西を飛び越えて福岡だったのはなぜなのか。「FUGLEN FUKUOKA」のマネージャー・鮫島隆秀さんに聞いてみた。

「当店が入っているオフィスビル『博多イーストテラス』にはハイブリッド型スモールオフィス『Mol.t』があるんですが、そちらからお声がけいただいたのがきっかけです。そして弊社代表である小島賢治も関東以外への出店は以前より考えていました。福岡は世界トップレベルのロースターやバリスタがいて、独自のコーヒーカルチャーが根付いている街であることなど、さまざまな要素が重なり合い、福岡に出店することに決めました」

鮫島さんは、「FUGLEN FUKUOKA」がオープンした後、2022年10月1日と2日の2日間にわたり博多イーストテラスで開催されたイベント「PARK×COFFEE」に触れ、こう続ける。

「『PARK×COFFEE』には当店も参加させていただいたのですが、来場者の多さに驚かされました。博多駅そばというアクセスの良さはもちろんあるのでしょうが、コーヒーがこれだけの人を集められるのは純粋にすごいこと。福岡はコーヒーが愛される街だと強く実感しましたね」

■楽しみ方、過ごし方は自由でいい
「FUGLEN FUKUOKA」のメニューは東京の店舗とほぼ同じ。メニュー表はシンプルで、強くコーヒーを推しているという感じではない。鮫島さんは「もちろんコーヒーを主体としたカフェバーではありますが、ブラックティー(500円)、緑茶 玉露かりがね(500円)、ホットチョコレート(600円)などコーヒー以外のドリンクも並列という考え方です。ゆえに“特別、これがおすすめ!”というメニューはありませんし、お客様ごとに自由にお好みのドリンク、フードを楽しんでいただけたらと思っています」と話す。

ドリンクの価格もリーズナブルだ。例えばバッチブリュー(マシン抽出)で淹れる本日のコーヒーは410円、おかわりだと210円というから驚かされる。エスプレッソベースのアメリカーノも410円。これだったら日常的に利用しやすいし、パソコンワークなどでの長居もしやすそうだ。“東京から初上陸した「FUGLEN」”という、やや特別なカフェバーという印象を抱いていただけに、イメージは一気に変わった。

■鮮烈なノルディックロースト
一方でコーヒーの味わいという視点で見てみると、やはり特別だ。以前、豆を取り寄せて飲んだ時もそうだったが、同店の豆は圧倒的な個性がある。言い表すならまさにフルーツ。コーヒーなのにビターな味わいはほぼなく、フレッシュでみずみずしい。そんな表現がしっくりくる。

コーヒー豆はシングルオリジンのみで数種類を用意。2023年2月現在のラインナップはシナモンアップルやドライアプリコットを感じるホンジュラス、リンゴを思わせる酸味とドライフルーツのような熟成された甘さのウガンダ、ブラッドオレンジやストーンフルーツのような果実味のケニア、ジャスミンティーのような柔らかさもあるエチオピア。

このようにテイストの特徴にフレーバーを書くことは多いが、「FUGLEN」のコーヒーはそのイメージを裏切らない気がする。飲む度に「こんなコーヒーもあるのか」と感動があるのはさすがだ。ひと口目から感じられるフルーティーなフレーバー、スッと消えるクリーンカップを引き出すために大切なのは焙煎。「FUGLEN」では完全熱風式のローリングスマートロースターを採用し、豆の外側を焼きすぎることなく、内側に熱を加える焙煎を心がけているそうだ。

ノルウェー語で“鳥”を意味する「FUGLEN」。シンボルマークにもなっているアジサシという鳥は、オスロにも飛来する世界最長距離を飛ぶ渡り鳥だ。ノルウェーから日本へ。そして東京から福岡へ。まさに渡り鳥のように新たな目的地を目指す同店。「FUGLEN FUKUOKA」が福岡のコーヒーシーンをますますおもしろいものにしていってくれそうだ。

■鮫島さんレコメンドのコーヒーショップは「THE LOCAL COFFEE STAND FUKUOKA」
「ご近所にある『THE LOCAL COFFEE STAND FUKUOKA』は当店と同じく、東京に本店を構えるコーヒーショップ。国内外の人気ロースターが焙煎するコーヒーを月替わりで楽しめるのが魅力です。不定期で登場するゲストビーンズは普段なかなか飲むことができないロースターさんの豆だったりで、新しい出合いにワクワクさせられます」(鮫島さん)

【FUGLEN FUKUOKAのコーヒーデータ】
●焙煎機/LORING Smart Roaster
●抽出/ハンドドリップ(Kalita ウェーブ)、エスプレッソマシン(LA MARZOCCO Strada)
●焙煎度合い/浅煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/200グラム2000円前後




取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

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