
漫画を構成するのは引かれた無数の「線」。そんな常識から離れ、ほぼすべてがスプレーのような細かな「点」で描かれる幻想的なWEB漫画にTwitter上で注目が集まっている。
■ぼやけたタッチ、なのに鮮明。「点」の漫画が反響呼ぶ
自身のTwitterや創作プロジェクト「チーム空洞電池」で漫画を発表している電気こうたろう(@gurigurisun)さん。これまではいわゆる「線」で描いた漫画を多く制作してきたが、9月からは点描のようなタッチで描いた漫画を発表。
画風ならではの淡いやわらかな輪郭で、愛する黒猫との出会いと別れを描いた漫画「そよちゃん」には、Twitterで3万件近いいいねとともに、「白黒のぼやけた感じのタッチなのに鮮明に思い出が伝わってくるのすごい」「素敵な漫画」とユーザーから多くの反響が集まった。
おぼろげに描かれるからこそ、読む者に強烈な印象を与える画風の漫画。現在も同様の技法で漫画制作を続けている電気こうたろうさんに、こうした画法で漫画を描き始めた理由を訊いた。
■「一枚ガラスを隔てて」スプレーで描く漫画の変化
――点描のように細かな点とシルエットで構成される漫画はとても新鮮に感じます。これはどういった画法なのでしょうか?
「点描によく似ているのですが、これはクリップスタジオという漫画制作ソフトのスプレーというツールを使って描いております」
――スプレーツールで漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
「もともとそのスプレーツールで絵を描くのが好きだったので使ってみたのと、前の絵柄で描くのが苦しくなってきたのが理由です」
――電気さんはもともとユーモラスなタッチで印象的な作品を多く作られています。スプレーツールでの漫画制作で内容面の変化はありますか?
「そうですね、前よりもより残酷さがあったり恐ろしい話を描きやすくなりました。線で描くとやりすぎになってしまうところも、スプレーで描くことによって一枚ガラスを隔てて読みやすくなるだろうなと思ってやっています」
――このタッチで描きSNSで反響を集める作品も多いです。ご自身としてはどう感じられていますか?
「驚いていますし、嬉しいです。偶然ちょうどいいところにボールが飛んでいった感じです」
――「奇抜さ」ではなく、伝えるための技術として、画作りに挑戦的、意欲的という印象を受けています。「漫画の画」として目指しているものはどんなところにありますか?
「何が描いてあるかわかるけれど、ものすごく抽象的な画を目指しています。ナレーションにたいしてそのままの絵を描いてしまうことがよくあるのですが、それが一番つまらないなと自分で思ってしまうので、もっと怯えず挑戦していきたいです」
取材協力:電気こうたろう(@gurigurisun)