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関西人は7割が“分ける派”、沖縄県では7割が“かける派”…「クリームシチューの食べ方」が二分する理由とは?

  • 2022年11月8日
  • Walkerplus

気温が下がって肌寒くなるこの時期、「そろそろシチューの季節だな」と考える人も多いのではないだろうか。シチューといえば“白いクリームシチュー”を思い浮かべる人も多く、家庭でもよく作られる冬の定番メニューだ。

では、そのクリームシチューを普段どのようにして食べているだろうか。シチューの食べ方でたびたび話題になるのが、“ご飯と分ける人(単体で食べる人)”と“カレーライスのようにご飯にかけて食べる人”がいることだ。SNSなどでは、ご飯にかけて食べる勢のことをご飯と分けて食べる勢が「ありえない」と言う様子をよく見かける。

「人それぞれ」という言葉で片付けてしまえないほど意見がはっきり分かれ、何度も議論になっているこの話題。今回は、ルウシチュー市場シェアNo.1で「シチューミクス」「北海道シチュー」などのロングセラー商品を販売するハウス食品株式会社(以下、ハウス食品) 食品事業一部 田村紘嗣さんに、日本人がシチューを「ご飯と分けて食べる派」と「ご飯にかける派」に二分される理由を聞いてみた。

■実はご飯にかけて食べるためのものだった…ルウの開発秘話
シチューには、クリームシチュー、ビーフシチュー、コーンクリームシチューなどさまざまな種類があるが、「シチュー」と聞いて思い浮かべるのは、やはり白いクリームシチューではないだろうか。クリームシチューに似た料理は大正時代にはすでに存在していたが、実際に日本全国に普及したきっかけは戦後の学校給食。給食にシチューが出されたことによって全国的に知名度が広がり、その後の1966年にハウス食品が粉末状のルウ「シチューミクス」を発売。誰でも家庭で簡単にシチューが作れるようになった。

シチューミクスを開発したきっかけは、開発担当者が「昔給食で食べた『白いシチュー』のルウを作りたい」という思いからだったという。担当者が目指したのは、日本の食卓に出すことのできる「ご飯に合うシチュー」。ご飯と一緒に食べておいしいルウの開発に取り組み、今の形に至るそうだ。

そのため現在のシチューは、実は“ご飯と一緒に食べるもの”として設計されている。ということは、シチューをご飯にかけるのは理にかなった食べ方であり、開発担当者が目指した1つの完成形と言えるだろう。

■沖縄では7割が“かける”!分ける派とかける派に分かれるワケ
ご飯と一緒に食べるメニューとして開発されたクリームシチューだが、実際のところ、ご飯と一緒に食べることは良くても「ご飯に“かける”なんて許せない!」という人が一定数存在する。逆にシチューをご飯にかけて食べる人も少なくなく、両者は互いに拮抗している状態だ。

「分ける派のなかには、シチューをご飯にかけることを『行儀が悪い』や『みっともない』と思う人も多いようです。かける派に対して手厳しい印象ですね。逆にかける派の人は分ける派のことをあまり気にしていないようです。シチューは各家庭ごとに味や材料などが異なるので、育った家庭によってご飯と分けるのが普通という人もいれば、かけるのが普通という人もいます」

分ける派とかける派について、ハウス食品が2016年に行ったWEBアンケート「シチューとごはん ごはんと分ける?ごはんにかける?」では、全国で分ける派が58%、かける派が42%という結果に。そのなかでも沖縄県では7割がかける派で、東北地方では分ける派とかける派が5対5と、全国平均に比べてかける派が多いという特徴的なデータが出た。

「沖縄でかける派が多い理由は、タコライスやチャンプルーなど、調理したものを混ぜて食べる文化が根付いているからではないかと想定しています。そのため、シチューも“混ぜる料理”としてご飯と一緒に召し上がるのかもしれません。また、東北ではきりたんぽやせんべい汁など、汁物に炭水化物を入れる料理が多いため、ご飯にかけるのに抵抗が少ないのかもしれませんね」

逆に分ける派が多いのが関西地方。特に奈良県では7割の人がシチューとご飯を分けて食べるという。関西に分ける派が多い理由ははっきりとわかっていないが、田村さんは「おばんざいをはじめとした“お皿を分ける料理”が多いため、かけることに抵抗があるのでは」と推測している。

ハウス食品が販売する全国シェアNo.1のシチューは「北海道シチュー」だが、東北地方などかける派の多い地域では「シチューミクス」の売上のほうが高いのだとか。この商品はルウの味付けが濃いめで、ご飯との相性もいい。開発当初の「ごはんに合うシチュー」というコンセプトは今でも変わらず、主菜としてご飯のお供に食べられるよう味わいに作られているため、かける派はシチューミクスを好むのでは?と考えているそうだ。

■「白いものに白いものをかける」のが許せない理由?
ご飯に合う味で作られているはずのハウス食品のクリームシチューだが、シチューに対してスープや味噌汁といった“汁物”のイメージを持っている人は、「汁物をご飯にかけるなんてみっともない」と感じることがご飯にかけない1つの要因として考えられる。

しかし近年、大手牛丼チェーンで「クリームシチューライス定食」が登場したり、コンビニエンスストアで「シチューライス弁当」が発売されるなど、シチューをご飯にかけた商品が徐々に世間に浸透してきている。このような企業の動きに、「認められた気がした」といったかける派からの声がSNSで多く上がった。

クリームシチューではかける派と分ける派の熾烈な論争があるにも関わらず、同じシチューの仲間である「ビーフシチュー」ではこのような議論は起こらないのだとか。ビーフシチューはカレーに色が似ているためか全く話題にならないという。田村さんは、「クリームシチューが“白い”ことも派閥が分かれる理由なのではないか」と話す。

「当社では2022年に『ブラウンシチュー』という豚肉とキャベツのみで作ることができる、クリームでもビーフでもない新しいシチューを発売しました。こちらの商品を事前調査した際、従来のクリームシチューよりも比較的かける派が多かった印象です。やはり白くなければ抵抗感も薄れるのかもしれませんね。あと、シチューはスープ的な立ち位置で食べられることも多いのですが、今回の商品は“ご飯のおかず”として食べる人が多かったのも特徴的でした」

クリームシチュー×白米の白色被りによる違和感を少なくするため、ハウス食品ではサフランライスなどご飯に色をつけたシチューライスのレシピを提案。また、最近はご飯にかけるメニューとして、「鶏肉のクリーム煮ライス」や「きのこの旨味たっぷり!シチューライス」をはじめとしたアレンジメニューの発信に力を入れている。

そして2017年には「シチューオンライス」という“ご飯にかける用”のルウを発売。ご飯に合いやすいように酒粕粉末やレモンの酸味など加えて独自の味わいになっていたり、ご飯と絡みやすいようにとろみ多めにしているなど、かける派が大満足の仕様に。この商品を発売した後はかける派が全体的に3%増えたそうで、徐々にかける派が進撃してきている。

■どちらの食べ方も大切に!ハウス食品が考えるシチューの在り方
ハウス食品は分ける派とかける派、どちらも大切にして商品の開発やメニューの提案をおこなっているが、今後取り組んでいきたいと考えているのが“主食・主菜イメージの強化”だ。というのも、シチューのヘビーユーザーになる人は汁物として食べている人よりも、主食・主菜として食べている人のほうが多いからだそう。

「シチューが好きな人ほど、粘性強め、具多め、味濃いめで食べています。シチューをご飯にかけて食べる場合は味を濃くして作るほうがおいしいので、結果的にかける派がヘビーユーザーになることが多いんです。逆に分ける派はシチューを汁物として食べていることが多く、作る時間は一緒でも、主食・主菜としてではなく汁物として作ると、もう1品おかずを用意しないといけないので、手間感を感じやすくなってしまい、その結果ヘビーユーザーになりにくいのが難点です。そのため、今後はシチューライスなどのメニューにも力を入れていき、かける派を増やしていきたいと考えています」

田村さんは「家庭内で独自に進化したガラパゴスメニューであるゆえに『分ける派かける派論争』は永遠に続くと思います」と話す。今後もさらなる調査をしていき、分ける派とかける派に二分する理由の解明に取り組んでいくという。今後の両派の動向と、ハウス食品の商品展開に注目だ。

取材・文=福井求(にげば企画)

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