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「ちょっとしんどいです」同級生の霊が何故か夢に現れる…。交わらない想いを描いた短編漫画に反響

  • 2022年10月31日
  • Walkerplus

物言わぬ死者の気持ちは測り知れない。その人と生前も関わりが薄ければなおさらだ。東洋トタン(@To_Yo_Tutan)さんの「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」は、同級生の幽霊に取りつかれた少女の断絶を描きTwitter上で話題を呼んだ短編漫画だ。

■毎夜現れる、隣のクラスの女子の霊。物言わぬ死者の想いと結末が切ない
高校生の「レイナ」は寝不足に悩まされていた。交通事故で亡くなった同級生の女の子、「加賀ミナミ」が、毎晩夢見枕に立っていたからだ。

額から血を流し、無言のまま自室にたたずむミナミ。夢のはずが彼女から触られる感覚も強く、レイナは夜な夜な苦しめられていた。だが、レイナとミナミの関係は、1年生の時に同じクラスになったというだけ。自室にミナミがまるで霊のように現れる理由には思い当たる節がなかった。

そんなレイナは、クラスメイトにも黙っていた現象を恋人に打ち明ける。レイナにとっては真剣な相談だったが、恋人は「お前ホラー映画の見過ぎなんじゃねぇの?」とそっけなく、それどころかレイナの意思を無視してベッドに押し倒そうとする。

組み敷かれかかったレイナを救ったのは、前触れもなく割れたコップだった。お盆の上にあったはずのコップが、一人でに動き、砕け散ったのだ。それを見て、恋人は幽霊を見たと思い逃げ出してしまう。

そしてレイナは数日した後、ミナミの墓前を訪れた。乱暴を働こうとした恋人と別れたこと、そのきっかけとなった心霊現象をミナミの霊が起こしたものだと思い、「ありがとう」と感謝を伝えるためだった。墓参を済ませ立ち上がろうとしたレイナだったが、何かが落ちる音に気付き、足元を見やる。そこにはレイナが好きなキャラクターのグッズがあった。

同じマスコットが好きだったミナミと生前、一度だけ会話を交わしたことを思い出したレイナ。覚えていなかったのを申し訳ないと思いながらも、「ちょっとしんどいです」と、ミナミからの不釣り合いな感情に押しつぶされそうになるのだった。

■いつも美しいだけではない。不気味さも帯びる強い感情の一端
作者の東洋トタンさんは、いわゆる女性同士の関係性や結びつきを描いた「百合」や「ロマンシス」といわれる作品を多く描いてきており、COMIC BRIDGEで連載がはじまった「ラストサマー・バケーション」でも「美月」と「海野」という二人の少女を主人公に据えている。本作にも7000件以上のいいねとともに、読者から「ああ、切ない」「重い」と報われない結末に反響が集まった。

そんな東洋トタンさんに、ウォーカープラスでは「事故で死んだはずの隣のクラスの女子が毎晩化けて出る話」を描いた制作背景をインタビューした。

――本作はどんなきっかけで描かれた作品でしょうか?

「短編漫画を不定期で作っているのですが、『ホラーテイストな作品を作ってみたいな』という思いつきから生まれた作品です」

――ミナミは幽霊でも回想でも台詞がなく、それだけに一方通行の想いという印象を覚えました。

「確かに一言も喋ってませんね!言われて気付きました。ミナミはレイナに強い好意を抱いており、自分みたいな人間が関わることは出来ない存在だと思っていた。その想いの強さから、ミナミの死後の魂がレイナの部屋に引き寄せられて姿を現したのだと思います」

――また、心当たりがなかったレイナは、読者の「ミナミがどんな人か分からない」という目線に重なっていたと思います。

「半年以上前の作品なので記憶は曖昧ですが、結末がわかるまではただただ薄気味悪い存在にしたかったので、『全然知らない別のクラスの同級生』という最小限の情報に留めたのだと思います」

――結末の「ちょっとしんどいです」というモノローグにはどんな想いをこめたのでしょうか?

「ミナミはレイナのことを暴力的な彼氏から守ってくれました。とはいえ、強烈な好意を寄せていて、毎晩自分の寝床に現れた……、という事実には、ストーカーのような性的な気持ち悪さがあると思います。『好き』という気持ちは特に創作物においては美化されがちですが、その中には加害性があると思っています」

――東洋トタンさんは女性同士の関係性に着目した作品をこれまでも描かれています。どんなところに惹かれ、また表現しようとされているのですか?

「私は女性なのですが、恋愛において女性との間で大きな失敗を犯しました。また、友情においても、私が引っ込み思案ゆえにうまく関係を築けず後悔した経験が沢山あります。それゆえ女性同士の深い関係は私の中で強烈に美化されていて、憧れの対象になっています」

――9月には二人の少女が主役の『ラストサマー・バケーション』の連載もスタートしました。漫画家としての今後の目標について教えてください。

「リアリティ、いわゆる生々しさを保ちつつ、エンタメ性に富んでいる。そんな作品が理想ですし、私が愛する映画や漫画もそういったものが多いです。『1人でも多くの人へ』というよりは、『深く突き刺さる100人中の1人へ』作品を届けられたらいいなと思っています。

まだまだ勉強不足でして、『ラストサマー・バケーション』も四苦八苦しながら制作を進めております。その細い腕で地獄を抱えながらも明るく振る舞う人気者の美月と、美月に特別な好意を寄せ続けていた嫌われ者の海野、二人の少女の接触から始まる『夏休み』を楽しんでいただけたら幸いです」


取材協力:東洋トタン(@To_Yo_Tutan)

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