
10月に入っても記録的な暑さが続いたかと思えば、急に冷え込む日もあって、「今が秋という実感が持てない」という人も多いのではないだろうか。しかし周りを見渡せば木々や草花は確実に色づき、少しずつ秋の装いに。そんな中、Twitterで公開されたかわいい草花あそびの写真が4万いいねを超える大きな反響を呼んでいる。
色とりどりの桜の落ち葉がカラフルな色鉛筆に大変身。葉っぱの裏と表の色の違いが色鉛筆にピッタリで驚く。Twitterには「すごくかわいい」「私もやりたい」「何色も揃えたくなる可愛さ」などのコメントや、実際につくってみたという報告が多数寄せられた。
スレッド内では2018年にアップしたという作り方動画も紹介されている。投稿したのは、「New草花あそび研究所」所長のinori(@kusabanaasobi)さん。これまでオリジナルの草花あそびを700種以上も考案し、テレビなどのメディアへの出演や、草花あそびに関する著作も多数手がけている。Twitterやブログでは、身近な植物を使った草花あそびが多数アップされており、自分でもつくってみたくなること請け合いだ。
草花あそびの魅力や日ごろの活動について、お話を伺った。
■身近な植物がかわいく変身!草花あそびの尽きない魅力
――落ち葉で「色鉛筆」をつくるようになったのはいつからでしょうか?アイデアを思いついたきっかけを教えてください。
「つくりはじめたのは2018年からです。道にカラフルな落ち葉が落ちているの見て、『何色あるんだろう』『これが色鉛筆だったら可愛いだろうな』と思ったのがきっかけです。葉の裏と表で色が違っていて、葉の裏の色が鉛筆の削られた木の部分の色に似ていたのも、アイデアに繋がりました」
――上手につくるためには、落ち葉選びも大切なのかなと思いました。「こんなものがつくりやすい」特徴があれば教えていただけますか?
「そうですね、あまりに乾燥してパリパリの葉は破れてしまうのでつくれません。でも、乾燥していても、水に濡らして少し置くと柔らかくなって使うことができますよ。葉っぱはサクラが今のところ一番向いていると思います」
――作り方のコツがあれば教えてください。
「初めて作るときに難しいと感じるのは、柄を差して巻いた葉を留めるところだと思います。思い切り爪で穴を開けて、柄を差し込むのが上手につくるコツです。それでも難しい時は、マスキングテープなどで留めれば、簡単にいろいろな色の色鉛筆をつくって遊べると思います」
――「落ち葉で色鉛筆」のつぶやきは4万いいね、5000RTを超える大きな反響がありました。ご自身の感想や、周りの反応はいかがでしたか?
「落ち葉の色鉛筆は何度か投稿していたので、今回の反響は意外でした。赤い落ち葉の裏がピンクだったので、ピンクの色鉛筆がよかったのかな??見た目がわかりやすかったのかもしれませんね」
――ところで、inoriさんは普段はどんな活動をしているのでしょうか?
「自宅の庭に生えていたナガミヒナゲシの実の形が面白いと思って遊んでみたのをきっかけに、オリジナルの草花あそびを考案する活動を始めました。2016年に『New草花あそび研究所』というブログを開設し、雑誌や図鑑の草花あそびの監修をしたり、ご依頼があれば草花あそびの講師をしています。講師活動は主に関東がメインですが、ご要望があればどこへでも伺いますよ」
――講座はお子さんが対象ですか?生徒さんの反応で印象に残っていることがあればお聞かせください。
「いえいえ、幼児から小学生、大人の方までいろいろですよ。お子さんの場合はとくに、私が教えた草花あそびをきっかけにして、オリジナルの草花あそびを始めることがあります。そちらのほうが楽しそうで、どんどん作品を見せてくれたりして(笑)。そんな時は、草花あそびの楽しさを伝えられた気がして、とても嬉しいです」
――作品を考える際に気を付けていることや、こだわっていることがあれば教えてください。
「New草花あそび研究所のルールとして心がけている5カ条があります。
1.身近な植物1種類でつくる。
2.道具を使わない。
3.植物の美しさや個性を活かす。
4.葉脈に沿って割くなど、無理のない加工をする。
5.簡単で、完成度が高いことを目指す。
なるべくたくさんの方に遊んでもらえるように設けたマイルールですが、簡単で楽しければ何でもありとも思っています。場合によっては、ハサミやテープ、油性ペンなどを使うこともあります」
――今まで考案した中でとくにお気に入りの作品を教えてください。
「イチョウの落ち葉の蝶々とエノコログサ(ネコジャラシ)のウサギはたくさんの方に作っていただけて、お気に入りです。個人的にはツクシの人間が好きです」
――今あげていただいた3つはTwitterにアップされていますが、どれもかわいいですね!ツクシが人間に見える日がくるとは考えてもいませんでした(笑)。inoriさんにとって、草花あそびの魅力は何でしょうか?
「草花あそびの魅力は多すぎて語り尽くせませんね…。大好きな植物と遊ぶことでその植物のことをより深く知ることができ、さらに仲良くなれたような気がするところが私にとっての一番の魅力です。
植物を知るきっかけになるのも、草花あそびのいいところです。植物にあまり詳しくない方やお子さんも、一度遊んだ植物には気づきやすくなります。街を歩いていても世界の解像度が上がりますよ。
その植物を見た時にふと昔遊んだ記憶が蘇ったり、次の世代に自分の思い出の草花あそびを伝えることができるのも、魅力だと言えます。落ち葉や木の実の季節に限らず、どの季節でも楽しめるので、もっと多くの人に魅力を知ってほしいです」
――草花あそびをする際に注意すべき点があれば教えてください。
「注意してほしいのは、以下の3点です。
●植物をとるときのマナー
私有地には入らない。公園や自然保護地域ではルールを守る。種をこぼさないように。
●危険な虫・動植物
ハチ、毛虫、ヘビ、マダニといった毒のある植物や、かぶれる植物、トゲのある植物、個人的なアレルギーがある動植物に触らないように注意しましょう。
●犬、猫の落とし物
意外と落ちています。ウェットティッシュを持っていると○。
危険を避け、ルールやマナーを守って楽しく遊びましょう」
――最後に、今後のご予定や挑戦したいことがあればお聞かせください。
「これからもどんどん新しい草花あそびを考えていきたいですね。子供たちと一緒に草花あそびをしたいですし、幼稚園や保育園、学校の先生、高齢者施設などの職員の方々に草花あそびの魅力や簡単な草花あそびをお伝えする活動もしていきたいと思っています」
身近な植物に少し手を加えるだけで、今まで見逃していたものが急に親しみやすく思えてくる。「あの草花は何に見えるかな」「季節が進んでどんな姿になっているだろう」と想像を膨らませるのも楽しそうだ。大人のあなたも、この秋は古くて新しい「草花あそび」にチャレンジしてみては。
取材・文=油井やすこ