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中村獅童が奈良・薬師寺で新作歌舞伎舞踊を披露!「今の時代だからこそ歌舞伎俳優としてできることを」

  • 2022年7月8日
  • Walkerplus

常に新たな試みを続ける、歌舞伎役者の中村獅童。2022年7月16日(土)・17日(日)には、奈良・薬師寺で開催される「第一章『薬師寺ひかり響夜 - inori -』~歌舞伎と灯りと響きの夕べ~」にて、新作歌舞伎舞踊を披露。本イベントは株式会社ドワンゴとJTQ株式会社が共創した、祈り×伝統芸能×最新テクノロジーによる新プロジェクト「meme nippon project」(ミームニッポンプロジェクト)の第一章でもある。

今回は新作歌舞伎舞踊の主演である中村獅童と、本イベントのアーティスティックディレクターを務める空間クリエイティブカンパニー・JTQ株式会社代表の谷川じゅんじ、総合プロデューサーを務める株式会社ドワンゴ 専務取締役CCOの横澤大輔の3名に、本イベントに込めた思いを聞いた。

■中村獅童、コロナ禍で「芸能がお役に立てるのではないか」
横澤大輔(以下、横澤)「今回のイベントは、獅童さんの発案で動き出したのが最初でしたね」

中村獅童(以下、獅童)「そうですね。もちろん、常に新しい試みや今の時代に何をすればいいかということは考えているんですけど、コロナ禍で自分の舞台が次々と中止になって世間が苦しくて寂しくなっていった時に、芸能がお役に立てるのではないかと思ったんです。“配信”という手段があらためて見直されたりしていて、配信においては『やっぱり超歌舞伎が元祖だな』という自負もありました。歌舞伎は江戸時代の最先端の芸能として流行を作り出して、役者はファッションリーダーやロックスターみたいな存在だったんです。そういう“かぶいた”精神みたいなものは、今の人にもすごく興味を持ってもらえることを超歌舞伎などで実感しました。なので、こういう時代だからこそ歌舞伎俳優としての自分にできることをやりたいと考え、谷川さんに相談したんです」

谷川じゅんじ(以下、谷川)「そのお話を獅童さんから聞いて、すぐに浮かんだのが薬師寺のことでした。僕自身が薬師寺の1300年記念プロジェクトをお手伝いさせていただいたこともあったのですが、そういえば薬師如来って疫病なんかで不安な時に助けてもらおうと皆が祈り、そこに参っていた…そういう場所だったなというのを思い出したんです。それで薬師寺さんにご連絡したところ、お話を受けていただけました」

獅童「その報告を聞いた僕は、超歌舞伎を7年も一緒にやってきて“戦友”だと思っている横澤さんに助けていただいて、超歌舞伎とはまた違った、今度は『祈り』をテーマにしたイベントにしたいと考えたんです。お客様一人ひとりがそれぞれの思いでロウソクに火を灯していただいて、その光が集まって明るくなったところで、気持ちを1つにして歌舞伎舞踊が始まっていくというイメージです」

横澤「このお話を聞いたのがちょうど超歌舞伎の公演中で、しかも非常事態宣言が出て、本当にエンターテインメントの危機だったんです。でも動かしていかないと何も動かないんですよ。だから、かなり覚悟を決めて受けたのを覚えてます。そこで僕が考えたのは、野外で、しかも国宝の前でということもあって、とにかく“映(ば)える歌舞伎”を創りたいということでした。これはお坊さんも言ってたんですけど、『今、この世にある1番きれいなものを見せる』というのが極楽浄土を表現する時の考え方なんです。だから昔の人は極彩色を使って表現して、それを見た人々に『この世で見たこともない美しいものがその先にあるんだ』と感じてもらう。そうやって、仏法や悟りに向かう方向性を与えるんです。ならば、薬師寺と歌舞伎と現在のプロジェクションマッピングを使って、“今1番キレイな景色を極楽浄土として見せる”というのが今回の僕の使命かなと思ったんです」

■祈りの力と伝統の力、そこに最新テクノロジーを加える
谷川「今回、『meme nippon project』という名前にして“遺伝子”をテーマの1つにしたのは、日本という古くからある国の、森羅万象とか八百万(やおよろず)といった自然と対話したり調和したりしながら育んできた文化の力のようなものをもう1回浮かび上がらせて、いろんな形で勇気づけたいというところから来てるんです。そういう日本の遺伝子を持って、いろんな場所でいろんな形で一所懸命に魂を込めて活動していらっしゃる方たちに光をあてて、それらを継承していく人たちが生まれてくる、というようなことも合わせてやっていきたいなと思ってます」

横澤「そうですね。多分、歌舞伎もそうやって続いてきたんだと思います。日本の粋がすごく詰まっているというか、エンターテインメントの粋というか。ギリギリまでみんなの意見が飛び交いながらも、それを全部吸収していってしまう、その歌舞伎の深さ。決まりごとだらけなのに、決まりごとがないっていう」

獅童「超歌舞伎もそうですけど、本番直前までどんどんアイデアが出てきて、今回も完成形がどうなるか私たちにも分からないんですよね。現場に行くとやっぱりいろいろ思いついて、急に『真ん中に花道があったらいいですね』とか言い出したんですけど、横澤さんは僕がやろうとすることを全部包み込んで実現してくださるので助かりました」

横澤「あの花道は、多分薬師寺史上初めてだと思うんですよ。これまでも大講堂の前で何かを上演したりとかはあったと思うんですが、今回は大講堂と金堂を結ぶところに花道を作って、客席も花道に向けて斜めに設置するんです。大講堂を大道具に見立ててそこにプロジェクションマッピングが打たれている情景は、ほんと浮世絵にしたいくらいです。その光景のなかで、どこをどう切り取っても獅童さんが1番映えるような見せ方を心がけています」

谷川「『薬師寺は1300年間、1日も欠かさず誰かが祈っていた場所です』と薬師寺の方から教えていただいたんですけど、そういう場所なんです。今回はその力も借りられると思っていて、そこに獅童さんが持っている“人の力”が加わって、そこに僕らがカルチャーとかセンシビリティといったものを混ぜて、和えて、おいしく仕上がった時に、今まで見たことがないものになるんじゃないかと思っています。だから同じ演目を別の場所でやることもできますが、それはやっぱり別のものなんですよ」

獅童「ただ1つ忘れていたのが、夏の暑さですね。屋外で、この暑さのなかで歌舞伎衣裳を着けるんで、本当に倒れないようにしないと。お客様にも熱中症には気をつけていただいて、でもその暑さも含めてのライブであり、体験になればいいと思っています。そしてもちろん、配信は生配信で行いますから、それもまた別の体験として楽しんでもらえるはずです」

横澤「そうですね。単に舞台を切り取って見せるのではない、もう1つの景色になるはずです」

獅童「そうそう、生配信というのはやっぱり違います。一緒に今を生きてるというか、同じ時間だからうれしいというのがあるんですよ」

取材・ 文・撮影=納富廉邦

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