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あの子のスカートの中は「傷」だらけ。美しくも凄惨な少女たちの短編漫画にゾクっとする

  • 2022年6月30日
  • Walkerplus

物語の真相や謎の過程をあえて断片的に描いたり、感情に訴えかけるような画作りで、読者の想像力はむしろかきたてられるもの。そんなエモーショナルな表現が際立つオリジナル漫画が、Twitterユーザーから「余韻がすごい」「考えられる余地があってすんごいおもしろい」とさまざまな意見を呼んでいる。

■白い脚に刻まれた無数の傷跡…謎と余韻が際立つ物語に考察集まる
今年3月に刊行された『あーー別れてよかった!!! 恋愛ショートアンソロジーコミック』収録の「あなた色には染まれない」にて商業デビューを果たした、漫画家の東洋トタン(@To_Yo_Tutan)さん。5月末、東洋トタンさんが自身のTwitterに投稿した読み切り作品『「あの子のスカートの中」の秘密を知る話』が、8万2000件を超えるいいねがつくなど反響を集めている。

ある日、友人の女の子「アマネ」のスカートの下に、おびただしい切り傷が刻まれていることに気付いた「ユウ」。アマネはその愛らしさから多くの友人に囲まれる反面、一部の女子から執拗な嫌がらせを受けていた。下駄箱にカラスの死体が詰め込まれていたりと、常軌を逸した光景をたびたび目にしていたユウは、そうした状況と傷跡とを結び付け、「そばにいたのに…力になれなくて…ごめんなさい…」と涙する。

その言葉を聞いたアマネは「『明日』には、もう元通りになるから」と意味深な一言。立ち上がりあらわになった彼女の太ももには、傷で結ばれた五芒星が記されていた。これを「悪魔との契約の印」と言うアマネの背後には、無数のカラスが羽ばたいていた。

その後、気付くと病室で横になっていたユウ。熱中症で倒れたユウを見てアマネが救急車を呼んでくれたのだと母に説明されるが、なぜかユウにはその時の記憶が曖昧だった。

数日後、退院して登校すると、「元気になってよかった~!」とアマネに抱きしめられ出迎えられたユウ。その時、彼女はある机に置かれた花瓶に気付く。そこはアマネをいじめていた女子生徒の席。ユウが学校に来られなかった間に、その女子は交通事故に遭って亡くなったのだというのだ。机に乗り、「かわいそうだよね」と花を抱えるアマネ。彼女の脚には傷一つなく、ユウも「アマネの脚は白くて細くて綺麗だなあ」と、疑問を抱くこともなかったのだった。

■読者の心を捉えた「演出」への意識と、割り切れない“幸と不幸”の魅力
ユーザーから「こんな恐ろしい結末が待っているとは」、「思わず魅入ってしまいました」と、読者の心を掴む演出が感嘆の声を呼んだ本作。また、作中で示唆された「悪魔との契約」は一体どういうものだったのかをはじめ、本作の真相を考察するコメントも多数寄せられていた。

3月に発売された『いらない男を捨てました 恋愛ショートアンソロジーコミック』でも作品を発表し、現在も商業新作の制作に取り組んでいるという東洋トタンさん。今回、ウォーカープラスでは反響を受けインタビューを実施。本作のアイデアのきっかけや、作者としての狙いをうかがった。

――『「あの子のスカートの中」の秘密を知る話』のアイデアの発端を教えてください。
「とある邦画で『少女のスカートがまくれて太ももに自傷の跡が見つかる』というシーンを観まして、自分の中で強く印象に残っていました。“スカートの中”と“自傷跡”って、こちら側に『見てはいけないものだ』という強い罪悪感を感じさせるものだと思います。その2つが揃うとパンチ効いてるなあと思い、漫画で描いてみようと思ったのがきっかけです」

――1コマごとが1枚の絵として強く印象に残る画面作りだと感じました。作者として特に気に入っているシーンやコマはありますか。

「1コマごとの画面作りは今回かなり意識していたことなので、そう言っていただけてすごく嬉しいです。ありがとうございます。今見返すとつたない部分も多いですが、個人的に気に入っているのは、アマネが『悪魔との契約の印なの』と告げるシーンです。表情、陰影、遠近感などを細かく調整しつつ『どうか魅力的になってくれ』と祈りながら描いていました」

――読者からは真相を考察するコメントも多く寄せられていたのも印象的でした。こうした想像を描きたてる部分は狙いがあったのでしょうか?

「包み隠さず申しますと、全然意識していませんでした……。私は普段商業誌に載せるための漫画を制作をしているのですが、新人の身ですのでなかなかネームが通らず、原稿に着手できないこともしばしばです。

なので、今回の作品は『原稿を描く練習』、『演出の研究』みたいな感覚で制作しました。演出重視で、ストーリーの部分はかなりスカスカなのです。そのストーリーの未完成さが、幸運にも皆さんの想像を掻き立てたのかなと思います。コメントを拝見していると『おお!そうなったら面白い!すごい!』と感嘆する考察ばかりで、皆さんすごいなあと思いました」

――演出への意識が活きたんですね。ちなみにそれ以外にも、本作で挑戦したことや、やりたかった表現はありましたか?

「この作品に限らず、『白黒で魅せる』表現ができたらいいなあと常々思っています。私はユージン・スミスや植田正治などといった写真家の、かっこいいモノクロの写真が大好きでして、その方々の作品を見ると『こういうのを漫画でやりたい!』と強く思います。同じ漫画という枠ですと、魚喃キリコ先生の絵作りにも強い憧れを抱いています。まだまだ力不足なのでもっと勉強したいです」

――本作はうかがい知れないアマネの内面もあり、結末の受け止め方も様々です。ちなみにご自身としては「バッドエンド」「ハッピーエンド」、どちらを意識して描かれたということはあるのでしょうか?

「これは選べない2択です……。なぜかというと私は、物語の『終わり』に二面性を持っている作品が好きなんです。

例えば、主人公が大失恋をして、涙を流しながら空を見上げる……、という形で物語が終わったとします。“大失恋をした”という点に着目するとバッドエンドですが、主人公はこの失恋を乗り越えて新しい人生を歩んでいくのでハッピーエンド、という捉え方もできます。このように“幸と不幸”で割り切れないような作品が好きなので、今回の作品もそういった形になりました。アマネはいじめっ子がいなくなったという点ではハッピーですが、これから先に恐ろしい代償が待ち受けているかもしれません」


画像提供:東洋トタン(@To_Yo_Tutan)

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