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コーヒーで旅する日本/九州編|若い2人の夢の第一歩。楽しみながらコーヒーと向き合い、未来へと歩む「Layers coffee」

  • 2022年6月6日
  • Walkerplus

全国的に盛り上がりを見せるコーヒーシーン。飲食店という枠を超え、さまざまなライフスタイルやカルチャーと溶け合っている。なかでも九州はトップクラスのロースターやバリスタが存在し、コーヒーカルチャーの進化が顕著だ。そんな九州で注目のショップを紹介する当連載。店主や店長たちが気になる店へと数珠つなぎで回を重ねていく。

九州編の第28回は、熊本県・熊本市にある「Layers coffee」。長崎県大村市出身で、小中高と同級生だった山浦公大郎さん、東島優太さんが共同オーナーを務め、2021年5月にオープンした。Life plus homeという住宅メーカーが手掛ける、ライフスタイル提案型複合施設、CLAMPY内にあり、観葉植物や生花が彩る、ナチュラルな雰囲気のコーヒーショップだ。大学卒業を機に一度は違う道を歩んだ山浦さんと東島さんが、熊本市に「Layers coffee」を開いた理由、弱冠28歳と若い2人が目指すこれからのことを聞いた。

Profile|東島優太(左)、山浦公大郎(右)
東島優太さん/1995(平成7)年、長崎県大村市生まれ。創業100年近い、老舗和菓子店を生家に持つ。長崎県内の大学では環境やデザインについて専攻。大学卒業後、東京のハウスメーカーに就職し、約2年間勤めた後、退職。2020年6月、山浦さんとコーヒーショップを開業するために、オンライン上で「Layers」を立ち上げる。
山浦公大郎さん/1994(平成6)年、長崎県大村市生まれ。大学在学中にメルボルンへ留学し、オーストラリアのカフェカルチャーに感銘を受ける。帰国後、スペシャルティコーヒーの味わいを通し、コーヒーの世界で生きていきたいと考え始める。熊本市内のコーヒーショップで約2年間働き、2021年5月、東島さんとともに「Layers coffee」をオープン。

■2人の個性、スキルがあってこその開業
東島さんは長崎市内の大学、山浦さんは熊本市内の大学と、高校卒業後は別々の道を歩み始めた。一方で暮らす場所が違っても、親交を深め続けた2人。大学時代に地元・大村市の喫茶店を間借りし、コーヒーとカレーのイベントを何度か企画。そのイベントに多くの人が来てくれたことが素直にうれしく、さらには接客の楽しさを肌で感じ、「将来、一緒に店をやれたら」と何気なく話したことが「Layers coffee」の原点だ。ただ、もちろんその夢はすぐに叶ったわけではなく、東島さんは大学卒業後、上京し、ハウスメーカーに就職。山浦さんも長崎市内の広告代理店に入社したそう。

最初にコーヒーに強い興味を抱いたのは山浦さん。「大学時代にオーストラリアのメルボルンに留学して、現地のカフェカルチャーに触れたのがきっかけになりました。カフェに集う人たち、空間のかっこよさに純粋に惹かれ、帰国後、熊本市内で果実感のあるスペシャルティコーヒーを飲んで、ますますコーヒーの魅力に取りつかれましたね」。一度は就職した山浦さんだったが、コーヒーを仕事に生きていきたいという夢を諦めきれず退職し、熊本市内のコーヒーショップで働き始める。

東島さんもまた、東京で働きながら、山浦さんと一緒に店をやるという目標を持ち続けた。一念発起して退職し、メルボルンへの留学を計画。しかしコロナ禍だったため、渡航が叶わず、断念せざる得なかった。ただ、東島さんは前職で培ったマーケティングのスキルを活かし、オンライン上で「Layers」の屋号のもと、スペシャルティコーヒーに特化したプラットフォーム、Bean to youを立ち上げるなど、実店舗である「Layers coffee」開業に向けて、動き始める。熊本市内のコーヒーショップで働きながら、コーヒーの知識、技術を磨く日々を送る山浦さん、そしてクラウドファンディングなどを活用し、「Layers」の認知を少しずつ広めた東島さん。まさに2人はそれぞれのスキルを活かし、「Layers coffee」をオープンさせたというわけだ。

■コーヒーは果実であることを味わいで表現
「Layers coffee」はカフェとして利用できるほか、コーヒー豆の販売にも力を入れている。焙煎を行うのは山浦さん。焙煎機は熊本市にスペシャルティコーヒーを根付かせた一店、AND COFFEE ROASTERSのPROBAT半熱風式5キロを借りるシェアロースタースタイルだ。

豆のラインナップはシングルオリジン5種を常時ラインナップし、浅煎りをメインに中煎りを1種用意するのが基本。産地はペルー、ブルンジ、エチオピア、コスタリカなど、さまざまだが、デイリーで飲める味わいを大切にし、ウォッシュド(※1)やナチュラル(※2)といった伝統的な生産処理の生豆を仕入れることが多いそう。

山浦さんは「前職でも焙煎に携わりましたが、まだまだ勉強中。ただ、焙煎というのは味わいを新たに加えることはできず、引き算でしかないと考えています。ですので、どれだけ生豆が本来持っている味わいを消さずに焼き上げることができるかに重きを置いています。コーヒーは果実であることを、飲んだ方に感じていただけたらうれしいです」と話す。

山浦さん、東島さんともにコーヒーについて「正解がない飲み物。淹れ方、焙煎の仕方でテイストは変わるのはもちろん、味わいの感じ方も人それぞれだと思っています」と考えを述べる。「そこが難しく、だからこそおもしろい」と続け、まだまだ自分たちなりのコーヒーを突き詰めていっている最中だ。

オリジナリティを感じるのが一般的にやや深めに焙煎した豆を使うエスプレッソも、同店では浅煎りを主に使っている点。牛乳で割るラテでも華やかな酸や豆由来のフレーバーをしっかり感じられ、飲んだ人たちから「今まで飲んだことがない新鮮な味わい」と好評だそうだ。

コーヒーに合わせるフードはスイーツがメインで、なかでも人気が高いのがカヌレ。東島さんの実家は大村市で100年近く続く和菓子店で、カヌレはそこで特別に作ってもらっているそう。和菓子の老舗が手掛けるカヌレもぜひチェックしてほしい。

■バイタリティあふれる2人の夢
山浦さんがプレイヤー、東島さんはマーケティングやブランディングを担当する経営者的立場。役割分担もちょうどいいバランス感で線引きする2人だが、目標は同じく「地元である長崎県大村市に店を開くこと」。

「ご縁に恵まれ熊本市にて開業しましたが、やはりいつかは地元でコーヒーショップをやるのが夢。コーヒーは僕たちにさまざまな人との繋がりを作ってくれる存在ですし、たくさんの出会いも生み出してくれています。そんな体験を故郷の人たちにも提供していきたい」と山浦さん。東島さんも「コロナ禍になって特に強く感じているのが、コーヒーがもたらす日々の豊かさ。コーヒーを通して、家族や友人など、身近な人たちと過ごす時間の大切さを再確認できました」と続ける。

まだまだ20代と若い2人は、「まずは焙煎機を購入」「いつかはコーヒー豆の産地に行きたい」と、夢も膨らむ。お互いの長所を活かしつつ、伸ばしつつ、さらにはコーヒーやブランディングの知識や技術を共有し合い、日々スキルアップする山浦さんと東島さん。今後もコーヒーを通して、さらなる高みを目指していく。

■山浦さんレコメンドのコーヒーショップは「AND COFFEE ROASTERS」
「『AND COFFEE ROASTERS』さんは、熊本にスペシャルティコーヒーを根付かせた立役者的存在。僕自身、大学在学中からよく通っていて、スペシャルティコーヒーのおいしさに気づかせてくれた一店です。熊本のコーヒーシーンを先頭に立って引っ張っている店ですが、行ってみると親しみやすい雰囲気。スタッフさんとの会話も楽しくて、人との関わりを大切にされていると感じます」(山浦さん)

【Layers coffeeのコーヒーデータ】
●焙煎機/PROBAT PROBATONE 5
●抽出/ハンドドリップ(HARIO V60)、エスプレッソマシン(La Marzocco Linea mini)
●焙煎度合い/浅煎り〜中煎り
●テイクアウト/あり
●豆の販売/150グラム1300円〜

※1…コーヒーの実の果肉を機械で取り除き、発酵。さらに、その後の水洗過程で残りの付着物を除き、乾燥させる方法
※2…収穫したコーヒーの実を、そのまま果肉がついた状態で天日干しする方法

取材・文=諫山力(knot)
撮影=大野博之(FAKE.)

※新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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