世代間のギャップに驚いたり、パートナーが先にいなくなってしまうことを考えて不安になったり。Twitterに投稿されている漫画「あーちゃんとたんさん(年の差20歳のカップルが悩みながら結婚に向かうお話)」が話題を呼んでいる。作者のSuzan Romix(@SuzanRomix)さんに、漫画を描いたきっかけや、作品のこだわりなどを聞いてみた。
■「この心の変化は、今しか描けないかも」自身の結婚が漫画を描くきっかけに
富山県氷見市に移住し、地産のアロマ製品やポン酢など新しい特産品をつくる地域おこしの活動をしながら、漫画を描いているというSuzan Romixさん。今回、「あーちゃんとたんさん」を描こうと思ったきかっけは何だったのだろうか。
「漫画の構想を練っていたとき、ちょうど結婚を決めたんです。生涯独身の可能性を考えていたので、この心の変化は今しか描けないかもしれないと思ったのがきっかけです。私の不安や悩みに向き合ってくれたパートナーへの感謝と、将来の自分のためにパートナーがくれた愛情を形に残しておきたいという気持ちもありました」
自身も年齢の離れたパートナーと結婚し、その経験がもとになっていると教えてくれたSuzan Romixさん。漫画ではあーちゃんは40歳、たんさんは60歳という設定だが、Suzan Romixさんとパートナーも年齢差は同じ20歳なのだそう。キャラクターの設定を考えるとき、2人の年齢差をどうするか悩んだが、「1人が0歳のときにもう1人は20歳」が覚えやすくて面白いと、最終的に自分と同じ年の差のキャラクターにしたという。
■漫画に出てこない細かなキャラ設定や、あえて余白を持たせるこだわりも
セリフや説明は多くないものの、2人の気持ちや葛藤が伝わってくる本作。漫画を描くときは、どんなことを心掛けているのだろうか。
「余白があること、説明的にならない漫画にすることです。読んだ方が『だから主人公はこうしたのかな？』と想像したり、『自分はそう思わない！』と反論したりできるような作品にしたいと考えています。『あーちゃんとたんさん』では、お互いを好きで大切に思っていることが分かる描写を心掛けていて、例えば、セリフが無くても、コマの間で2人が『ありがとう』と言っている雰囲気を作りたいなと。単純な絵柄なので微妙な表情の書き分けが難しいのですが、だからこそ描いた以上のことを想像で補ってくださる方もいるように感じています」
リアルに描かれるあーちゃんの結婚に対する冷静な考えや不安、たんさんがそれを優しく支える様子は、多くの読者の共感を集めている。2人はSuzan Romixさんとパートナーがベースになったキャラクターだが、それに加えて2人のこれまでの人生や職業、出会いなど、漫画には出てこない細かい設定までしっかり考えたうえで描き始めたそう。
「私なりに『だから2人は付き合っているんだ』と納得して描き始めました。細かいところを決めておくことで動作やセリフに個々の性格がにじみ出て、それがリアルさにつながったのではないかと思います」
■寄せられた多くの声も参考に、2人のこれからを描く予定
3万件近くのいいねが寄せられている今回の作品。同じ境遇の人からの共感を始め、「涙が出た」「温かい気持ちになった」などのコメントが続々と寄せられている。反響に対してはどのように感じているのだろうか。
「驚くほどたくさんの方からコメントをいただいて、本当にびっくりしました。印象に残っている声はたくさんありますが、年の差婚をされた方からの共感が多く、『不安はあったけれど相手といることを選んでよかった』という声には私も幸せな気持ちになりました。他にも、『結婚への考え方が少し変わった』という声など、自分でも気づかなかった感想をいただきました。皆さんのコメントも参考に、新編を描いていく予定です」
最後に、漫画の今後の展望と読者へのメッセージを貰った。
「『あーちゃんとたんさん』はこれからも続きます。新編は、結婚生活に向けたあれこれを2人で解決していく話です。あーちゃんは1人で悩まないし、たんさんもやきもきしないので、2人でいるっていいなと感じながら読んでもらえたら嬉しいです。些細なことでも『それ、いいね』と言ってくれる相手のありがたさと尊さを描いていきたいと思っています。2人が結婚生活を始めるまでまだしばらくかかりそうですが、温かく見守ってください」
不安や悩みを2人で分け合い、少しずつ前に進む様子を温かく描くSuzan Romixさんの漫画。新編もTwitterで掲載が始まっているので、ぜひ一度読んでみてほしい。
取材・文=松原明子
