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【漫画】転校生に感じた恋心、惹かれた真相に慟哭――。父親なき少女の初恋に反響集まる

  • 2022年5月24日
  • Walkerplus

父親のいない女の子「カズキ」の前に現れた転校生の少女「マコト」。自分と同じく父を持たない彼女にカズキは惹かれ、やがて恋心を抱くようになるが――。漫画家の駒魔子(@pe_roco)さんが自身のTwitterに投稿した短編漫画が反響を集めている。

■父のいない子供同士、惹かれ合う二人。その初恋の残酷な結末
『歌舞伎町の洗濯屋さん』(新潮社)や『マンガ家だって女の子だもん』(コミックアウル)など、商業作家として活躍している駒魔子さん。話題を呼んだのは、駒さんがオリジナルの短編作品としてTwitterで発表した『「父親」のいない私の初恋』だ。

本作は、未婚の母を持つ少女・國澤カズキが、転校生の深津マコトに恋をし、そして失恋に至るまでを描いた物語。癖毛をはじめ母には似ていない自分の身体的特徴に「父」の面影を見出し、父の不在で寂しさを感じることもなく、シングルマザーの母を尊敬し平穏に過ごしてきたカズキ。彼女のもとに、ある日一人の転校生が現れる。

深津マコトは、有名女優・深津ランの娘。深津ランは結婚をしておらず、マコトもやはり「父のいない子供」だった。お互いの共通点からシンパシーを感じ、すぐに打ち解けていったカズキとマコト。父がいないだけでなく、自分と同じく強い癖毛を持っているといった共通項も多く、二人の結びつきにカズキの友人が「二人すごく似てて姉妹みたいで…」と嫉妬混じりに漏らすほどに、その関係は深まっていった。

他人とは思えないほどの重なり合いに“遺伝子が反応してる”と、カズキはマコトに対して生まれてはじめての恋心を抱く。大好きな母にもその気持ちを伏せるほどだったカズキだが、ある日ニュースでマコトに関わる重大な秘密を知ることになる。父のいないマコトは精子提供によって生まれた子供。母子家庭というだけでなく、遺伝子上の父しか存在しなかったのだ。

ニュースを知ったクラスメイトは、渦中のマコトをあたたかく受け入れるが、カズキは一人、踵を返し立ち去ってしまう。その様子を見て追いかけたマコトだが、カズキは何も言わずに大粒の涙をこぼすばかり。

実はその時、カズキは一つの仮説に辿り着いていた。なぜ自分とマコトは似たところがこんなに多いのか。どうして自分はマコトに惹かれ、恋をしたのか。それはきっと、二人の「父」が同じだから。そう、カズキ自身も精子提供で産まれた子供だったのだ。自分の気持ちも「ジェネティック・セクシュアル・アトラクション」と呼ばれる現象に過ぎないと悟り、「姉妹」であるマコトへの、どうしても叶わない“恋”に慟哭するほかなかったのだ――。

「ジェネティック・セクシュアル・アトラクション」という言葉は、離れて暮らしていた近親者同士が、お互いの共通点から性的に惹かれ合う現象のこと。日本ではあまり聴き馴染みのない言葉だが、海外ではこうしたケースで裁判に発展することもあり、認知された概念だ。今回、ウォーカープラスではこうした概念を題材として漫画を描いた理由などを作者の駒魔子さんにインタビューした。

■衝撃的に映るラスト、漫画に託した「まったく特別なことではない」という思い
――本作を描いたきっかけを教えてください。

「本作では精子提供においてでしたが、離別やその他の理由で兄弟として共に育たなかった兄弟が、他人として出会った時にお互いがわかるのか、また互いの類似点をどう捉えるのか、という疑問が元々ありました。ある時に、ジェネティック・セクシュアル・アトラクションという近親者間に起こることのある現象を知り、この物語を思いつきました」

――本作はカズキの視点で描かれています。未婚の母を尊敬し、前向きなカズキだからこそ、マコトとの間にある真実に慟哭する姿は胸を突かれました。

「カズキとマコトは大人びた聡明な少女に描こうと努めました。特にカズキは賢く、親友の少女らしい嫉妬にも大人な対応を見せられる子に。取材などで、賢いが故につまづいてしまう10代たちに出会ったことも影響しているかもしれません」

――そうした人物描写は、表情をはじめ漫画表現からも伝わってくるものがありました。作画で特に力を入れた点や、ご自身でも気に入っているシーンがあれば教えてください。

「マコトとカズキがどこか似ているようにとは意識しました。また、マコトは母親に似た鼻と赤髪で母親の面影を。逆に、カズキは母親とは似ていない、父親似に描きました。母親と似てないからこそ、母親に憧れ、父親に思いを馳せたという意味を持たせたいと思いました」

――漫画に描く上で難しい題材だったのではと思います。本作を描く上で苦労したところや、または意外なところからヒントを得た部分はありましたか。

「題材としては難しいものですね。キャラの考えは別ですが、漫画として何事も否定はしないように描くこととしているので、そこは気をつけました。ストーリーとしては、すぐに思い浮かびました」

――結末は衝撃的に映りますが、マコトの母が「記事にするような出来事ではない」という台詞もあり、実は「この世界で当然起こりうる失恋のお話」とも読めると感じました。

「その通りで、全く特別なことではないという思いで描きました。精子提供も、同性を好きになることも。自分の初恋が『ジェネティック・セクシュアル・アトラクションという現象に過ぎない』とカズキ自身が賢さゆえに“気付き、決めつけ、失望してしまった”ということも、多くの方が恋愛や友情で感じてきたものと同じで特別なものではなく、少年少女が大人になるためのイニシエーションなのかもしれません」



取材協力:駒魔子(@pe_roco)

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