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沖縄のエッセンスが詰まった交響曲を大阪で初披露。演奏する「琉球交響楽団」とは?

  • 2022年5月20日
  • Walkerplus

2022年5月15日、沖縄は本土復帰50周年を迎える。これを記念し、「沖縄復帰50周年記念 琉球交響楽団 大阪特別公演」が6月5日(日)、ザ・シンフォニーホールで開催される。大阪では初披露となるオリジナル曲「沖縄交響歳時記」の演奏も予定されており、大阪にいながら、沖縄の空と海を感じられるコンサートになるはずだ。琉球交響楽団の音楽監督で指揮を務める大友直人さんにお話を聞いた。

■沖縄で音楽を仕事にするために誕生した「琉球交響楽団」
――桐朋学園在学中にNHK交響楽団を指揮してデビューした大友さん。日本フィルハーモニー交響楽団正指揮者、東京交響楽団常任指揮者、京都市響常任指揮者など国内はもちろん、海外のオーケストラでの客演をはじめ、多彩な活躍で日本を代表する指揮者だ。1980年代には大阪フィルハーモニー交響楽団で専属指揮者を務めていたこともあり、大阪とも浅からぬ縁がある。そんな大友さんが琉球交響楽団にかかわるようになった経緯を振り返る。

大友:実は沖縄は、クラシック分野の優秀な音楽家をたくさん輩出しています。その中に沖縄出身でNHK交響楽団の首席トランペット奏者の祖堅方正(そけん・ほうせい)さんという方がおられました。私のデビュー時も目の前で一緒に演奏してくれた人で、桐朋学園の大先輩です。

沖縄県で沖縄県立芸術大学が新設され音楽科ができるときに、祖堅さんはN響を退団して教授になり、教育活動に専念されました。それから何年かして突然祖堅さんから電話がありました。「沖縄県芸で昨年卒業生も出して、小さいけれど学生だけでオーケストラができるようになったから、指揮をしに来てくれないかな?」と依頼され、関わるようになったのが27~28年前です。

祖堅さんとの対話の中で出てきたのが、「一生懸命教えて卒業生を出しても、沖縄では音楽家が活動する土壌がない。これが悲しくて寂しい。だから、沖縄でちゃんと音楽が仕事になって音楽が社会の中に生きる場所を真剣に作らないといけない」という話。現実的にどうすればいいのか考えている中で、思い切ってオーケストラを作ってはどうかとの話が実を結び、現実になったのがこの琉球交響楽団です。昨年、結成20周年を迎えました。

■昨年東京で初の県外公演を開催、好評を博す
普段は、沖縄県内でいろいろな学校に訪問して演奏したり、イベントで演奏したりするのが基本です。それに加え年に2回、県内で定期演奏会を20年間継続して開催しています。ただ、残念ながら恒常的に給料が支給できる財政状況にはないので、1回1回の演奏会を引き受けて、そこに行くといった活動をしています。

私が沖縄に行くのは、定期演奏会の年2回。年によってプラスαの演奏会があるので、そういう場合には何度も沖縄に行くことになります。今回開催する特別公演は、そのプラスαの公演です。

これまで財政状況の厳しさから思うように演奏会が開けず、県内での活動にとどまっていましたが、昨年いろいろな幸運が重なって東京のサントリーホールで初めて県外でのコンサートを開催。これが思った以上に好評でいい手ごたえがあったので、沖縄復帰50年の節目である今年にもう一度東京公演ができないか、準備を進めてきました。

■あきらめかけた大阪公演。事態は好転し、ギリギリですべてが決定
同時に、沖縄と結びつきの強い大阪での公演も私たちの念願でした。我々としては沖縄復帰50周年の記念企画として、理想を言うと沖縄県主催とか、内閣府の沖縄振興局、あるいは文化庁や文科省などが記念行事の一環として琉球交響楽団を東京と大阪で公演させてくれればと期待して働きかけていたのですが、それがことごとくうまくいかず。幸い、東京公演は昨年主催してくれたエイベックスさんが今年もやりましょうと言ってくれて、実現できました。

大阪公演はさすがに無理かとあきらめていましたが、急転直下いろいろな話が動き始めて、吉本興業さんがクラシックのオーケストラのコンサートを主催してくださることになりました。さらに、会場のザ・シンフォニーホールも外来の予定が入っていたところ、コロナ禍でキャンセルになり、週末の一番いい日中に演奏できることに。ただ、この組み立てがすべてできたのが4月に入ってからと、本当にギリギリのスケジュールでした。

■桐朋学園の後輩・清水和音さんも共演
――今回の公演ではブラームスの「大学祝典序曲」、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」、そして萩森英明作曲「沖縄交響歳時記」を演奏する。チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第1番」はピアニストの清水和音さんとの共演だ。大友さんは桐朋学園の2年先輩にあたることもあり、清水さんとの共演は多い。息の合った演奏を聞かせてくれることだろう。

コンサートをどうしようかと考えて、彼の携帯に電話し「6月5日ってどうなってる?」って聞いたら「ああ、空いてますよ」と。たまたまスケジュールが空いていて、こちらも幸運が重なった感じです。

■大阪で初披露のオリジナル曲は、沖縄音楽のエッセンスがいっぱい
――そして何と言っても聞きどころはオリジナル曲の「沖縄交響歳時記」。琉球交響楽団の為に作られた曲で、大阪では初めての演奏になる。クラシック音楽に沖縄音楽の要素を多彩にちりばめた、壮大な曲想の交響曲だ。

沖縄は長い歴史があり、第二次世界大戦では日本で唯一地上戦を経験し、1972年までアメリカの統治下におかれていました。これは、沖縄の人でなければ分からない経験だと思います。そういう背景を持った中で素晴らしい音楽を奏でる楽団ですから、一聴の価値がありますよ。

琉球交響楽団は純粋で純真でパッションがあって、一番気持ちのいい楽団。オリジナルの「沖縄交響歳時記」は、沖縄ならではのメロディとリズムにあふれた名作です。結構難しい曲ですが、使われている素材が地元の音楽なので、メンバーにはおなじみのメロディ、おなじみのリズムです。リハーサルをした時から、実にみんな自然に生き生きと演奏して、沖縄出身ではない私や作曲の萩森さんの方が「こんな曲なんだ」と驚かされるぐらいでした(笑)。

■パワーのあるサウンドとチームワークはほかのどこにも負けない
日本各地に優秀なオーケストラはありますが、琉球交響楽団はそういう楽団と伍して優れた演奏をするだけではなく、非常にユニークで、パワーのあるサウンドとチームワーク、結束力のある楽団です。そして「沖縄交響歳時記」という沖縄のエッセンスがぎっしり詰まったオリジナル曲を、情感豊かにパワフルに奏でてくれると思います。

オーケストラのコンサートとしても非常に聞きごたえのあるユニークなコンサートになると思いますので、ぜひ多くの皆さんにお聞きいただきたいと思います。

取材・文=鳴川和代

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