数ある消したい過去の記憶の中から1つだけ変えられるとしたらどれを選ぶ？飛び降り自殺中の高校生の前に荒れた死神。”救済措置“として、青年の消したい過去の3つのうち1つだけを変えてくれるという。そんな衝撃的な始まりで読者を惹きつける無冬季(@After_man_gene)さんの「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」を紹介する。
主人公の消したい過去とは「小学校でのお漏らし」「イジメに耐えきれず同級生を傷つけたこと」「イジメから逃れられず犯してしまった万引き」と、辛いものばかり。この3つの中から1つだけ選んだ過去を変えることで、世界が変わってしまったラストにも注目したい。そこで今回は、作者である無冬季さんに本作の見どころや制作秘話について話を伺った。
――現在Twitterで10万いいねを超えている「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」ですが、これはいつ頃、どのような経緯で描かれた作品ですか？
これは『死出の枝道』というタイトルで、2013年頃に漫画賞に投稿した作品です。
――作品の中に、子子子子子子子(ねこじしみねこ)さんという同級生がでできますが、名前のインパクトがすごいですね。
西尾維新に憧れてたんだと思います。
――飛び降り自殺の最中に救済措置という、なかなかインパクトのある出だしに引きこまれました。忘れたい過去を修正してくれる部分に共感する読者も多いと思いますが、ご自身には消したい黒歴史みたいなものがありますか？
今はありませんが、当時はそういう消したい過去的なことはすごく多かったはずです。良くも悪くも、過去の苦々しい記憶を許したくない潔癖症じみた若い負のエネルギーを駆使して描いた作品なんだと思います。
――3つの忘れたい過去の中から1つを選択できる。本作ではどれも確かに消し去りたい記憶でしたが、失望や諦めではなく、後悔を選んだ選択になるほどと納得し、後半どうなるんだろうと期待が止まりませんでした。
ありがとうございます！主人公が根暗で陰湿という捻くれた設定ですが、最後に選ぶのは見栄や体裁ではなく誇りなのだという、わかりやすいカタルシスを強調する一助になってるんだな、と拙作なりに見どころを感じます。
――Twitterで「死ぬ前笑ってるのに生き残って泣いてるこの対比エモい」というコメントもありましたが、このあたりは意識されましたか？
全然してません。他にもいろいろ考察されて深い裏設定がいくつも読み解かれてましたが、全部偶然です。才能ある読者さんにたくさん発見してもらえて、ありがたい話です。ただ質問の部分に限って言うと、最初と最後で主人公に対比が生じるというのはストーリーテリングの定石なので、実はそうなるべくしてなってるというだけのことです。しかしそこに注目して感じ入ってもらえてるということは、ドラマの展開が上手く行ったんだなという手応えがあるので「やったぜ！」って感じです。
――長い期間たくさんの方に読まれて10万を超えるいいね、についてはどう思いますか？
感激でした。これを描いていた頃の幼くて鬱々していた自分が、時間差で報われた思いです。すごく自己肯定感を補強してもらえました。今の自分はちょっとこの作品を正視できないので、自分の黒歴史が大拡散された感覚があって嬉しさ半分はずかしさ半分です。
その他、本作「死んでも死にきれないクソ陰キャと金髪が似合うギャル」を含めた「安定志向で工業系に進学しても人間は狂うよ」「未来人世代シリーズ」のエピソード「勝手にしやがれ 131ver.」を収録した無冬季さんの作品はKindelで無料で読むことができる。Twitterで2作品合計15万いいね以上の反響を集めた作品たちをぜひチェックしてみよう！
取材協力：無冬季(@After_man_gene)
