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先天性感染症で複数の障害を持つ息子との日々を漫画に。「温かい気持ちになれる」と成長を見守る読者も

  • 2022年1月23日
  • Walkerplus

先天性サイトメガロウイルス感染症で生まれ、両耳高度難聴、発達障害(知的障害)、睡眠障害、摂食障害、体幹機能障害など複数の障害を持つ息子・カムくんの日常を漫画にしてInstagramで配信しているしおりさん(@bepo_shiori)。カムくんのパパと3人暮らしで、建築関係の仕事をしながら趣味で漫画を描いているというしおりさんにインタビューし、カムくんへの思いや印象的な出来事などを聞いてみた。

■カムくんの育児は驚きと発見がいっぱい
離れて暮らすしおりさんの両親に、孫の様子を伝えるため写真を撮ろうとするもシャッターチャンスを逃すばかりで、絵を描いて説明しようと思ったのが漫画を描き始めたきっかけだそう。

「思いのほか家族に好評で、続けてほしいと言われました。始めはブログだけでしたが、同じように障害を持つお子さんを育てている方からメッセージをもらうようになり、情報共有や不安解消、ストレス発散などの場になればと考え、Instagramでも公開を始めました。漫画を描き始めて、もうすぐ8年になります」

現在15歳のカムくんは、キラキラしたものやさまざまな色が混ざり合ったものが大好き。好きなおもちゃはスポンジ、靴下、タオル、毛糸の帽子、絵本など。性格はツンデレで甘え上手、しおりさんいわく習性はかなり猫にそっくりとのこと。晴れ男で本番に強く、方向感覚に優れていて記憶力も抜群だという。「服装の乱れや姿勢などに厳しく、我が家では風紀委員って呼ばれています。ちびっ子に優しいお兄さんなんです」としおりさん。

カムくんとの暮らしについては、「カムの育児は異文化交流です。コミュニケーション方法や感じ方などが違い過ぎて、驚きと発見の連続なんです。言葉のないカムですが、一目で仲良くなれる人を見極め、素直に気持ちを表現します。年齢、性別、人種、職種関係なくどんどんと突発的にお友達を作るカム。言語を使わずにお友達を作りまくることに驚きました。2011年に北海道へ引っ越してきた時、知り合いのいない地でできた私のお友達のほとんどはカムがきっかけで仲良くなった方ばかりです」と話してくれた。

2011年、東日本大震災を機に東京から北海道へ引っ越したしおりさん一家。1カ月ほど滞在するつもりが、気に入ってしまいそのまま移住したそう。

「食べ物を口にすることを拒否していたカムが、北海道に来てからよく食べるようになったんです。野菜の新鮮さ、水のおいしさを感じたのでしょうか。寝ない、睡眠時間が短いなどの睡眠障害があるカムが、真冬になるとよく寝るようになるなど、いろんな変化がありました。北海道はカムに合っているのかもしれないと思い、親戚も知り合いもいない北海道へやってきましたが、温かい方々に支えられて楽しく過ごしています」

■カムくんを包み込む優しい世界
読者からの反応が特に大きかったというのが、カムくんが小学4年生の時の話「電車旅」。電車とホームの間に大きな隙間があり、電車から降りるのを躊躇していたカムくん。「この頃のカムはバランスを取るのが苦手だったので、隙間をまたぐのは難しかったんです」としおりさん。

駅のホームで電車に乗ろうと並んでいた学生の男の子がそっとカムくんに手を差し伸べ、降りるのをサポートしてくれたのだ。しおりさんは「まるで姫に手を差し伸べる王子のようでした!スマートな行動にたくさんの方から『素敵!』『イケメン!』と称賛のコメントが。あの時の男の子に伝わればいいのにな」

また、カムくんの好奇心旺盛な姿が見られるエピソードも。「タトゥー」という話では、コンビニで一人の男性に熱い視線を送るカムくん。「襟元にチラッと見えるタトゥーが気になったみたいです。それに気が付いたお兄さんは快くタトゥーを見せてくれました」とのことで、子供の純粋な疑問に対応してくれたお兄さんの行動に『優しい!』『神対応!』とコメントが寄せられた。

「なんで?どうして?と疑問をすぐ口に出すのが子供。お子さんのいる方にはより共感していただけるのではないでしょうか」

■「障害のこと」にこだわらず何気ない日々を
どのような気持ちで漫画を描いて配信しているのか尋ねると、「育児は日々バタバタと忙しく、気が付くとあっという間に過ぎ去ってしまうので、いつまでも忘れたくないことなどを中心に描き残すようにしています。カムの行動が障害からくるものなのか、もともとの性格なのか分かりにくい部分もあるので、特に『障害のこと』というこだわりは持たず、何気ないことを描いています。ただ、普通の子供だと不可解なところもあると思うので、カムにはこんな障害がありますよ、といった内容のお話も公開しています。障害を持っている方と関わった経験がない方などに、こんな風に過ごして、感じていて、こんな世界もあるんだな~と思ってもらえたら嬉しいです」

今後は、障害のことに縛られずに、カムくんに関わるいろいろな人とコラボしたり企画したり、漫画以外の活動もしていきたいというしおりさん。「我が子はいくつか障害があるので、一般的な子育てとは違う部分も多いかもしれません。でも、子供を育てているという点では、みなさんと同じ。手のかかるところもあるけど、案外楽なこともある。大変なこともあれば笑えることもある。子供がかわいくて、幸せになってほしい。結構単純なんです。我が家の様子を覗き見て気楽に楽しんでもらえたらいいなと思います」と語ってくれた。

マイペースに、でも確実に成長しているカムくん。家族と支え合いながら、楽しく幸せな毎日を送る様子を、これからも見守りたい。

取材・文=重藤歩美(ウォーカープラス編集部)

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