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超ハッピーエンドの漫画が胸を打つ!圧倒的“光属性”と称された21歳が描く、ありのままの個性とは

  • 2022年1月14日
  • Walkerplus

より自由に、そしてありのままに生きようと奔走する主人公を描いた漫画で、注目を集めつつある漫画家志望の新条 香さん。超王道のハッピーエンドが読み手の心にあたたかい読後感を残し、その作家性が評価され2020年には「月刊ガンガンJOKER」の新人賞を受賞。当時は大阪アミューズメントメディア専門学校の学生で19歳だった。現在は連載デビューを目指して、日々新作を描き続けているという。いかにして彼女は漫画家を目指すようになったのか。そして、圧倒的“光属性”と称される作品に込めた思いについて、21歳の彼女の現在地を作品と共に紹介しよう。

■個性を見つけたことで、自由になれた
――イラストや漫画はいつ頃から描き始めたのですか?

「本格的に描き始めたのは高校3年生ぐらいです。姉やいとこが絵が好きで、自分も一緒に遊びたいから絵を描き始めたのが最初で、小学生の頃には漫画を描きたいなとぼんやりと思っていました。それから高校3年になって大学に進学することも考えましたが、とにかく絵のことだけを考えられる時間がとれるように専門学校に通いました。美大とかも考えたんですけど、絵が上手くなりたいわけでもなく、あくまでも漫画的な表現を学びたかったので」

――漫画を描きたいと思ったきっかけというのは?

「小学生の時に、漫画家を目指す少年漫画『バクマン。』を読んで、『漫画ってこうやって描くのか』と知ったのがきっかけです。ネームというものがあると知り、見よう見まねでノートに描いていましたね。ずっと遊び感覚でしたが賞に出したいと思うようになり、専門学校に入ってから応募したり出版社に持ち込みをするようになりました」

―― 一昨年には「月刊ガンガンJOKER」で、ワケありな夏の恋を描いた『ラストサマー』が新人賞を受賞されていますね。入学から1年ほどで入賞とは、かなり順風満帆な印象です。

「いえいえ、まわりは賞を獲ったり持ち込んで担当さんがついていく中で、私だけ1年半ぐらい全く芽が出ずでしたからとても不安でした。もうこれは漫画が向いてないのかなと思って、就活とかもしていましたから。だけど、やっぱり漫画を描きたいと決意を新たに、『月刊ガンガンJOKER』さんに持ち込んでみたら『賞に出してみよう』と言っていただけて。それが受賞できた上に、そのまま担当さんまでついていただいて、すごく嬉しかったです。その時の作品が、ツイッターに掲載している『ラストサマー』ですね」

――これまで持ち込んでいた作品と入賞した『ラストサマー』では、ご自身の中ではどんなところが違ったのでしょう?

「あんまり考えすぎずに、いま描きたい気持ちだけをぶつけて、私が読みたい漫画を描いたところは違っていたかもしれません。あとは、よく言われるんですが描くものが全て“光属性”だと。そこを評価していただけたのだと思います」

――“光属性”というのは?

「超王道のハッピーエンドといったイメージです。最近は少し暗い作品を好む人が増えていて、超王道のハッピーエンドを描く人が減っていたそうで。そんな中、私のように圧倒的な“光属性”が現れたので、担当さんも気に入って評価してくれました。ちょうど方向性を悩んでいた時期でもあったので、“光属性”という個性を見つけてもらえたのが嬉しかったです」

――新条さん自身もそういった漫画がお好きだったからこその?

「そうですね。『僕のヒーローアカデミア』や『青の祓魔師』のように、物語上どこかで落とす場面はあるんですけど、最終的にはみんなが笑っているハッピーエンドな作品が好きです。誰も傷つかない、読後感がいい作品の影響を受けてきたので、私もそういうものを描きたいなと。『ラストサマー』では特にその思いが表れていると思います」

――『ラストサマー』がひとつのターニングポイントになり、活動状況や作品へのアプローチも変化していったのですね。

「『ラストサマー』で自分が描きたいように描いていいんだと思えるようになりました。自分が読みたい作品を描いても、面白くないとは言われないかもと。それともうひとつ、アシスタント先でお世話になった先生に教わったことが変化にもつながっています」

――その変化とは?

「それまでは、表情や体の動きが固いなと悩んでいたんですね。するとある日、先生が『ここはパース通りでいくとちょっと嫌だから、いじっちゃって』と言っていて。最初は驚いたんですけど、理屈は無視していても実際には説得力のある誤魔化し方をした、よりいい絵になっているんですね。その時、そんなに自由に描いてもいいんだとハッとして。それからは、本当だったらここに鼻がないとおかしいけど、ずらしちゃおうかなとか。考え方が自由になれたので、キャラクターの表情が柔らかくなったと言っていただけるようになりました」

――「自由になれた」というお話がありましたが、『ラストサマー』もベリーダンスをする男性を描いた『スタートライン』も周りの目を気にしないで、主人公が自分の気持ちに素直に生きようとする姿が描かれていますよね。

「私自身はあまり素直ではない方なので、自分もこうあれたらという思いを漫画で描いているのかもしれません。なかなか言いたいことが言えなかったり、無意識に隠しちゃうところがあるので…、私の理想と現実を投影しているのだと思います」

――どの作品からも、より自由に、そしてありのままにというメッセージが込められているように感じました。

「学校の先生が『キャラクターは作者の代弁だから、自分の描きたいことを描きな』と言っていたことがありました。漫画では私が思っていることを、キャラクターを通して伝えようとしているのだと思います。『スタートライン』は、ベリーダンスは女性がメインに踊っているイメージですけど、実際には男の人も踊っていることを知って描いた漫画で。賞で落ちたので今見返すと絵が拙いですが、魔法学校の『ノアの魔法』という漫画も、人それぞれ特技があるよという自分でも気に入っているお話です。自分にしかない良さって必ずあるから、周りの目は気にしなくていいよという想いを込めています」

――イラストで描く人物像やファッションも個性的で、その人らしさを大事にされていますよね。

「人の目を気にせずに生きられたら楽ちんだよなと、常日頃思っているのが漫画だけでなくイラストにもあらわれているのかもしれません。地元を出るまでは人目を気にしていましたが、専門学校に入って好きな格好をしている人たちがたくさんいるのを目の当たりにして、自分も好きにしようと思えるようになりました」

――みんなが生き方を見つめ直し、多様性が求められる社会で自分らしさを模索している時代でもあるからこそ、より多くの人の胸を打つ新条さんの作家性に心打たれました。今後の作品もとても楽しみです。

「ありがとうございます。まずは、大きな賞をとってしっかりとデビューを果たしたいなと思います。それと少年漫画が好きで、いつかはバチバチにバトルしている漫画も描いてみたかったり、もっといろんな漫画を描いていきたいなと思います!」

取材・文=大西健斗

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