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グルメ!奇岩!巨像!笑いの絶えない編集会議から生まれる「旅の図鑑」の裏側!

  • 2021年11月2日
  • Walkerplus

旅行ガイドブック『地球の歩き方』(株式会社学研プラス)が突如発売した「旅の図鑑」シリーズが、あまりにもおもしろい!と話題になっている。実用性に長けた老舗の旅行ガイドブックが今なぜ図鑑を出すことに?しかも、奇岩に巨像、世界の指導者まで、想像の上を行く切り口がたまらない!新作が登場するたびにSNSがにぎわうこのシリーズの編集部に制作の裏話を取材した。

■「旅にまつわる図鑑」が生まれたきっかけは、東京五輪!
『地球の歩き方』といえば、実際に旅した人の声を取り入れながらマニアックな視点で情報を詰め込んだ1979(昭和54)年9月創刊の老舗ガイドブック。

そんな編集部から「旅の図鑑」シリーズが生まれたきっかけは?と聞くと「2020年7月の東京五輪でした」と言うのが『地球の歩き方』編集部の「地球の歩き方プロデューサー」である福井由香里さんだ。

この図鑑シリーズの第一弾は、2020年7月に発売した『世界244の国と地域』。これは「2020年7月に開会式を迎える予定だった東京五輪の盛り上がりに合わせての発行だった」という。「開会式の選手入場や競技をみながら、この本を楽しんでほしいという思いで作ったのですが、新型コロナウイルス感染症の影響でオリンピックが延期になってしまった」と振り返る。

しかし、この本は編集部の予想を上回る売れ行きを見せた。「海外旅行に行けない時期が長引き、旅人のみなさんが海外の情報に飢えている時期に重なったのと、『地球の歩き方』では地域別ではなく、初めて世界の国や地域を1冊に網羅したものになったので、多くの方に注目いただきました」。

とはいうものの、その後も新型コロナウイルス感染症はなかなか収束せず、『地球の歩き方』を改訂することも難しい状況が続く。老舗ガイドブックの存続をかけて、知恵をひねり出さなくてはならない。

そこで思いついたのが「旅の図鑑」のシリーズ化だ。

「『地球の歩き方』が創刊以来40年以上蓄積してきた旅の知識を活かせるものはないか?と考え抜いた結果、それなら、これを機会に新たなシリーズとして『旅の図鑑』を拡大していこう!ということになりました」

こうして、1年3か月の間に10冊以上もの「旅の図鑑」を発行し続ける怒涛の日々が始まった。

■「旅の図鑑」のこだわりは“旅に深みが増す雑学”です
豊富な旅の知識をさまざまな切り口で見せていく「旅の図鑑」シリーズには「『地球の歩き方』には載せきれなかった、旅にぐっと深みが増す雑学をたくさん掲載しています」と福井さん。

「例えば『世界244の国と地域』では“虫歯予防のために水道水にフッ素が添加されている(オーストラリア)”、“航空機にひとり1羽までハヤブサを持ち込める(カタール)”、“ネズミから作品を守るために美術館で猫が飼われている(ロシア)”など、旅の雑学を盛り込みました」と言う通り、その国に伝わる伝統や意外な豆知識が細かく紹介されている。

「また、日本人観光客に人気の旅先からあまり馴染みのない国や地域まで、とことん網羅すること。それもこのシリーズのこだわりです」と福井さん。従来の『地球の歩き方』として1冊では出版できなかったような国や地域名も登場させたのだそうだ。

「おうちで海外旅行気分を楽しみながら旅の知識を蓄えることもできるし、次の旅先選びとしてもこの図鑑を使ってほしいですね」

■反響があった図鑑とは?
シリーズ1作目を発売して以降、グルメや奇岩、パワースポットまで幅広いテーマで図鑑を発行してきた福井さんたち。読者から反響の大きかった3作を聞いてみた。

★『世界246の首都と主要都市』(2021年3月発行)
199の首都と47の主要都市を旅の雑学とともに解説した「旅の図鑑」シリーズ第4弾。

「都市名の由来や言語、都市ができるに至るまでの歴史など、意外と知らない、ためになる知識が満載です。写真も豊富に掲載していますので、コロナ禍で海外旅行が難しい今こそ、次の旅先選びや妄想旅行を楽しんでほしいと思っています」と福井さん。

とはいえ、『地球の歩き方』の情報収集力をもってしても「各都市の細かいデータを調べるのが本当に大変で。国の情報は公開されているものがたくさんあるのですが、都市となると正確な情報が少なくなるんです。エビデンスのあるデータ集めに苦労しました」。


★『地球の歩き方的!世界なんでもランキング』(2021年6月発行)
旅行や自然、経済と産業、社会と人々、日本の5カテゴリーから130ものランキングを掲載した「旅の図鑑」シリーズ第6弾。

「ランキングから見えてくる世界各地の意外な文化や習慣、トレンドまでを旅人目線で徹底解説しています。小学生以上のお子さんに向けて、夏休みの自由研究や自主学習のネタ探しにもぴったりと思い、夏休み前に発行しました。巻頭特集『地球の歩き方が選ぶ!旅ランキング』も掲載しているので、世界を知るきっかけ作りや家族旅行の計画にも使える1冊です」

★『世界のグルメ図鑑』(2021年7月発行)
世界の名物料理だけでなく食の雑学も詰め込んだ「旅の図鑑」シリーズ第7弾。

「世界中を旅して食べ歩いた『地球の歩き方』編集部が、116の国と地域の名物グルメを一挙集結した1冊です。各国の大使館や観光局の方から聞いた、日本でそのグルメが食べられるレストランも掲載しているので、国内に居ながら海外気分を楽しみたい方におすすめです。シリーズのなかで最も反響が大きかった1冊で、発売後2ヵ月で5刷となりました」

アジア編では、シルクロードを通って広がったスパイスやハーブのほか、麺やパンについて、スペイン編ではバルや名物グルメ&おやつなどから食文化を、ペルー編では先住民族や華僑、ヨーロッパからの移民やアフリカの文化がミックスした食のルーツに触れながら郷土グルメを紹介、台湾編では外食文化に注目、屋台での名物料理や台湾茶の話題が続々登場。読んでいるだけでおなかが空いてくる、妄想グルメツアーにどっぷり浸ってしまう。

しかし、コロナ禍でのやりとりは大変だったのでは。

「そうなんです。各国の大使館や観光局の方から情報を収集する際、コロナ禍で自国に帰られてしまった方が多く、情報集めに苦労しました」と、社会情勢が編集にも大きな影響を与えたことを教えてくれた。

■笑いの絶えない編集会議。巨像や奇岩、世界の指導者!切り口は誰が決めている?
それにしても、10タイトル以上発売されている「旅の図鑑」シリーズは、巨大な石だけを集めた『世界の魅力的な奇岩と巨石139選』、大統領・首相・国王などの指導者たちを、豊富なイラストや写真とともに紹介した『世界の指導者図鑑』(各2021年3月発行)、世界の巨大な像や大仏に特化した『世界のすごい巨像』(2021年8月発行)など切り口が独特。これは誰がどうやって決めているのかと聞くと…

「巨像や奇岩・巨石は、編集長の宮田の趣味です(笑)」と福井さん。

図鑑のテーマを決める時は「全世界をひとつのテーマでくくれるか?ということを精査したうえで、これまで『地球の歩き方』が蓄積してきた旅の知識を最大限活かせるテーマを選ぶことを重視している」という。

「読者の方におもしろいと思っていただけることはもちろんなのですが、自分たち自身が楽しんで本を作れるテーマを選んでいます。編集会議では毎回おもしろい企画が登場し、笑いが絶えません!」

★『世界の魅力的な奇岩と巨石139選』
「旅の図鑑」シリーズ第3弾は、落ちそうで落ちない巨石や伝説が宿る不思議な形の岩、圧倒的スケールの一枚岩など、大迫力の奇岩が大集合。どうやって生まれたのか?歴史は?など、岩を通して壮大な地球旅が満喫できる1冊。ウルル-カタ・ジュタ国立公園(オーストラリア)やカッパドキア(トルコ)など絶景がぎっしり詰まっている。

★『世界のすごい巨像』
「旅の図鑑」シリーズ第8弾は、世界中の巨像を迫力ある写真と情報で展開。そもそも巨像とは?から始まり、大きさ、素材、見どころ、大きさベスト30まで、巨大造形の魅力を徹底解説した保存版。日本にもこんなにあったのか!という驚きも。巨像界のスターだらけで「推し」が発見できるかも。

この本が発売されると「巨像」という大胆なテーマにSNSは大にぎわい!

「実は編集長が大の仏像好きで、個人的に仏像を何体もコレクションしてしまうほど。それがきっかけで、世界の仏像や巨像にスポットを当てた図鑑を出すことが決まりました」

★『世界の指導者図鑑』
「旅の図鑑」シリーズ第2弾は、なんと世界のリーダーに迫った!
大統領・首相・国王などの指導者を豊富なイラストや写真とともに紹介。彼らの経歴や豆知識、その国の歴史にまつわるキーパーソンまでをしっかりと深堀り!

これは、世界の国や地域の情報を長年追いかけてきた『地球の歩き方』だからこそできる、リーダーガイドブックなのでは!?

「この本を企画したのは、コロナ禍において世界各国のリーダーの発言や行動が連日のように報道され、まさに世界の国や地域でリーダーシップが問われる局面が続いているなか、現役で活躍しているリーダーのことがすぐに調べられる本を作りたかったからです」と福井さんは熱く語る。

「いかにしてそのポジションにたどり着いたのか、生い立ちや幼少期のエピソード、コロナ禍の発言に至るまでをたくさん盛り込みました。ただ、リーダーがしょっちゅう変わることも多かったのが難点です。制作中も、指導者が頻繁に変わり、イラストの書き直しもしなくてはならず大変でした」と苦労があったそうだ。

現在も刻々と変化する世界情勢。「まだ在庫も残っていますが、もう改訂版を作りたい(笑)。ただ、読み物としてはおもしろいので、ぜひ多くの方に手に取っていただきたいと思っています」。

■読者のつぶやきで反響を実感。「SNSでのコメントも取り入れて企画会議に挑んでます」
「ツイッターに、図鑑シリーズが並べられた写真とともに“『地球の歩き方』が本気で生き残ろうとして図鑑シリーズを出している”という趣旨の投稿があがったことがあったんです。このつぶやきに約2万4000件のリツイートと7万5000件のいいね!がついたことで、図鑑シリーズが改めて注目されたのではないかと思っています」と福井さんは言う。

その後に発売した「城」がテーマの『世界のすごい城と宮殿333』、「パワースポット」を追いかけた『世界197ヵ国のふしぎな聖地&パワースポット』(各2021年8月発行)にも読者の目が向けられて「予想以上の反響に編集部一同大変驚いた」そうだ。


さらに先日、驚きのニュースが発表された。『世界197ヵ国のふしぎな聖地&パワースポット』で不思議を探求する雑誌『ムー』(株式会社ワン・パブリッシング)の名物編集長・三上丈晴さんにインタビューしたことがきっかけで、『地球の歩き方』と雑誌『ムー』とのコラボ本『地球の歩き方ムー』の制作が進んでいるというのだ。2022年2月に発売予定で、こちらも目が離せない!

また、「旅の図鑑」シリーズとしては11作目となる最新作『世界の祝祭』が2021年10月21日に発売。祝祭の起源や世界各地の文化を再発見できる1冊が誕生した。

「ほかにも『絶景でめぐる世界遺産』など、新刊を続々予定しています。みなさんからいただくツイッターのコメントなども拝読しながら新刊のアイデアを練っているので、今後も楽しみにしていてくださいね」と福井さん。

40年以上の旅知識と笑いの絶えない編集会議を経て生み出される「旅の図鑑」シリーズが、なかなか旅に出かけられない私たちの縮こまった日常に、今後も大きな風穴を開けてくれるに違いない!さあ、図鑑を片手に、おいしいもの、絶景、巨像を味わいに妄想旅行に出かけよう!

取材・文=田村のりこ

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