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登校をしぶっていた児童が“鬼怒川小のヒーロー”になった日「ガンプラ工作で生まれた“教え合い”と“助け合い”」

  • 2021年8月28日
  • Walkerplus

6月11日 、栃木県日光市の日光市立鬼怒川小学校で、ものづくりの楽しさなどを学んでもらおうと、BANDAI SPIRITSの協力を得て全児童79人が参加するガンプラ(ガンダムシリーズのプラモデル)工作の体験授業が実施された。なぜ、体験授業のテーマにガンプラ工作を選んだのか?その経緯について、同小学校の武田幸雄校長に話を聞いた。

■きっかけは1人の1年生。ガンプラ工作は“課題解決型学習”そのもの

ガンプラ工作を体験授業の題材に選んだ理由について聞くと、2年ほど前にプラモデルクラブを立ち上げたのがきっかけにあるという。最初、クラブのメンバーは1年生1人だったが、プラモデルを組み立てている姿を他の児童たちが見て、「自分たちも参加したい!」と集まってきたのだそう。

「最初の1人は、 登校をしぶる1年生の子でした。校長室登校をしてもらっていて、いろいろ話を聞いているうちにプラモデルが好きだとわかりました。最初は『ダンボール戦機』 のプラモデルを買ってきて、それを作ってもらったんです。すると、校長室の窓の外から見ていた他の児童が『僕も、僕も』とどんどん集まってきて(笑)。下は1年から上は6年まで、最大で8人の大きなプラモデルクラブになりました」(武田校長)

こうした取り組みが、のちの全児童によるガンプラ体験授業に繋がるのだが、そこには明確な意図があったという。

脳科学に興味を持っている武田校長は、プラモデル工作が脳に良い影響を及ぼすという脳科学的研究データの実証(諏訪東京理科大学の篠原菊紀助教授の研究発表)に着目。「プラモデルを組み立てると脳が活性化され、集中力・計算力・記憶力のアップに繋がるようなんです」と、プラモデル工作の効果を解説してくれた。

その他にも、日本の文化でもある“ものづくり”の楽しさを知ってほしいという想い、何より「私が大のプラモデル好きなんですよ」と武田校長は笑った。

「私が子供のころは、戦艦や戦車、車なんかをよく作りました。特に思い出深いのは後部甲板を飛行甲板に改装した重巡洋艦『最上』です。娯楽の少なかった当時の子供たちは、プラモデルに“浪漫”を感じていました」

プラモデルの魅力と有用性はそれだけではない。「これが完成品だよって見せて、設計図に沿って作って行くプラモデル工作は、学校でよく言われる“課題解決型学習”そのものなんです。脳科学の面からも、手先を使う学習は脳の前頭前野の発達にも大いに有効です」と力説する武田校長。

さらに、プラモデル工作は“得意な子”と“不得意な子”がいるため、体験授業の中で学び合いや助け合いが自然発生するのだという。まさに「全児童で体験する教材として最高」だと教えてくれた。

■プラモデルクラブのメンバーが大活躍!教職全員の“学び”の場に

こうしたプラモデル工作の魅力を気づかせてくれたのが、前述したプラモデルクラブなのだという。

「まずは最初、7人とか8人のグループでやっていましたが、よく見ていると、メンバーそれぞれに教えあって、助け合ってプラモデルを作っている。これは“課題解決型授業 ”にピッタリだ、脳にもいいぞ、じゃあこれを全児童に体験させたらもっと凄いことになるかもしれない、と思い立ったわけです」

このような経緯で6月11日、鬼怒川小学校の全児童は体育館に集合。BANDAI SPIRITSの「オンライン授業×プラモデル」(2月よりテスト展開し今秋に本格展開)より、ガンプラ生産の過程を学ぶ動画を視聴した後、体験授業用のガンプラを1人1個製作した。この体験授業は、武田校長だけではなく、参加した教職全員に多くの“学び”を与えたという。

「先ほど説明した“助け合い”や“教え合い”がいろんな場所で見られました。特に印象深かったのは、プラモデルクラブの子供たちの活躍です」と武田校長は目を細めた。

プラモデルの工作に慣れ親しんでいるクラブのメンバーたちは、体験授業の場で一番最初にガンプラを作り終えた。さらに、ガンプラ製作に苦戦している児童たちを見つけ、率先して助けたのだそう。学校生活において“ヒーロー”になれる場面はそう多くはない。しかしその日は間違いなく「プラモデルクラブのメンバーたちがヒーローでした」と武田校長は語った。

■いろいろな特技で“ヒーローになれる”環境を作ってあげたい

「かっこよかったです。作った順に拍手を受けたりして。当日は新聞社も取材に来ていたんですが、インタビューを受けたりして、とてもうれしそうでした」

小学校では、ややもすると“スポーツができる”、“勉強ができる”、といった面で注目を浴びがちだが、「いろいろな特技でヒーローになれる環境を作ってあげることも重要なのです」と武田校長はいう。

ガンプラ工作の体験授業は、児童たちによる “教え合い”と“助け合い”により協働性を高めただけでなく、日本の文化でもある“ものづくり”の楽しさを知る貴重な機会となった。

最後に、同体験授業のきっかけともなった校長室登校をしていた児童のその後にについて聞くと、「今は元気に普通登校をしていますよ」と武田校長は破顔した。

2年前、登校をしぶって校長室登校をしていた1人の児童はプラモデルクラブでたくさんの仲間を作り、友情を育み、ものづくりの楽しさを知った。そして今年、全児童のヒーローになった。

(C)創通・サンライズ

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