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スターバックス「JIMOTO made Series」第14弾は甲州印伝に着目!若手伝統工芸士の想いとは

  • 2021年1月27日
  • Walkerplus

日本各地の産業や素材を取り入れた商品開発を行い、その地域のスターバックス限定で販売する「JIMOTO made Series」。14回目となる今回は、鹿革に漆で模様を付けて加工した日本の伝統工芸品「甲州印伝」の文化が息づく甲州エリア(山梨県)を舞台に、甲州印伝のスリーブ付きマグが、このエリアの8店舗で2021年1月27日(水)より販売されることとなった(甲府平和通り店、ラザウォーク甲斐双葉店、甲府和戸通り店、甲府リバーシティ店、イオンモール甲府昭和1階店、イオンモール甲府昭和3階店、甲府アルプス通り店、山梨大学医学部附属病院店)。山梨に根付く“甲州印伝”の伝統と歴史、そしてその“甲州魂”をどのようにしてスターバックスのアイテムと融合させたのか?商品に込められたストーリーを取材した。

スターバックスの「JIMOTO made Series」第14弾として完成したのは、和と洋が美しく融合したモダンなアイテム「甲州印伝スリーブ付カップ296ml」(9020円)。伝統技法を受け継ぐ山梨県甲府市の老舗工房「印傳(いんでん)の山本」と、スターバックスが共同で開発したペーパーカップ形状陶器カップ&甲州印伝スリーブだ。

スリーブには、山梨県のニホンジカの皮をなめしてできる、柔らかくて白い鹿革による印伝である「URUSHINASHIKA」を活用し、そこにスターバックスらしさを感じさせる、“サイレンの鱗”をイメージしたパターンデザインを施している。また、カップには甲州らしさを感じさせるデザインをオン。コーヒー豆のモチーフをアクセントに、武田菱、蔦、富士桜の柄をあしらった。そして、“四方を山に囲まれた甲州”を表現したベースのパターンと、スリーブの“サイレンの鱗”をイメージしたパターンが合わさり、趣のあるトラディショナルなパターンに。世界遺産の富士山のシンボリックな柄もポイントとなっている。

■「JIMOTO made Series」が甲州印伝に着目したワケ

当アイテムの共同開発に携わった「印傳の山本」は、総合部門では日本唯一の甲州印伝 伝統工芸士 称号保持者・山本裕輔氏の祖父にあたる金之助氏が終戦後に創業したのが始まり。金之助氏は戦前に学んだ印伝の製作技術を活かそうと「山本商店(旧社名)」を立ち上げたのだという。そして、金之助の長男・誠氏が事業を継ぎ、社名を「有限会社印傳の山本」と改めて甲州印伝専門の製造企業として再スタート。2000年以降は裕輔氏と次男の法行氏が入社し、企業や消費者のさまざまなニーズに応えながら、新たな甲州印伝の可能性を探っている。

近年は、ゲーム、アニメ、漫画、ブランドなどとのコラボレーションを積極的に展開しており、幅広い世代に受け入れられ、海外からも人気がある甲州印伝。今回のアイテム「JIMOTO made Series 甲州印伝スリーブ付カップ296ml」は、「人々の心を豊かで活力あるものにするために、コーヒーを通じて地域や社会とつながって貢献し、『JIMOTO made Series』で一つのコミュニティを醸成する“きっかけ作り”をしていきたい」と考えるスターバックスの理念と親和性があったことから誕生した。

裕輔氏に話を聞くと、甲州印伝について「20代で店舗を構えるまで、住まいの中で共に家族のように育ってきたので“愛情”を感じる存在です」と、その想いをコメント。「JIMOTO made Series」を開発するにあたっては「革の柔らかさや、持ったときの漆の凹凸感、手触りがポイントです。コーヒーは味覚、嗅覚を刺激しますが、印伝は触感を刺激するもの。五感で楽しめるアイテムになったと思います。開発に時間がかかった分、サンプルを手に取ったときは『いざ形になると感慨深いな』と思いました。スリーブとカップは併せて一つになるものですが、併せた感じも、非常によいものに仕上がったと思います」と胸を張った。

また、デザインについては「開発の趣旨に沿って、一つひとつのモチーフを決めていったところがポイントです。デザイナーさんやスターバックスさんと共に考え、いくつかの案の中から採用されたものが今回のデザインになりました。コーヒー豆は今までにないモチーフなのですが、従来からある和テイストのモチーフにうまく馴染んだのではないでしょうか」とのこと。

スターバックスと“ものづくり”を行ったことで「経験値を上書きできました。今後、同じように依頼があったとき、自信を持って前へ進めると思います。新しい型紙を彫ったり、新しい革を用意したりと、今回さまざまな新しいことにチャレンジできたのもよかったです」と、コラボレーションの感想を話し、「『甲州印伝』の名前を聞いたことはあるけど、どういうものなのか分からない…という人たちにも、商品を展開する甲州エリアの8つの店舗で知ってもらえるようになるのではないでしょうか。伝統工芸は職人が少なくなっているという課題などもありますが、これを通じてよいなと思う人が増えてほしいですし、『こんなよいものがあった』と口コミで伝わっていってくれることを期待しています」と、関心を持つ人が増えることを願った。

■甲州印伝は400年にわたって「鹿革や漆のよさを生かしながら提供してきた」

当企画について、甲府印伝商工業協同組合・上原重樹理事長にも話を聞いた。「甲州印伝は、今はバッグやお財布などいわゆる“袋もの”が作られているのですが、昔は武士の鎧や兜のつなぎの部分などの武具で使われていて、全く用途が違いました。丈夫で柔らかく軽いという機能性に着目されていたのかもしれません。また、装飾などで自分を強く見せる意味(縁起をかつぐ意味)もあったと思います。その後、江戸に入って旅の道具として使われ始めて、現在は鹿革に漆を付けて装飾を施した“袋もの”などで展開しています」と、まずは甲州印伝の変遷について解説してくれた。

ちなみに、革工が大いに栄えることとなったのは応仁の乱(1467年)以後。甲州印伝は、1521年に誕生した武田信玄(晴信/※信玄は出家後の法名)が、“甲冑が入る鹿革の袋(信玄袋)”を愛用していたことを礎としている。

民政に尽くし、領民に深く愛され、後世でも「武神」「山梨県の郷土史の象徴的人物」と評価された戦国時代きっての名将・信玄は、現在「武田神社」(山梨県甲府市)にて御祭神としてお祀りされている。武田家ゆかりの貴重な品々を収める同所では、印伝に武田氏の家紋「武田菱」をあしらったお守りや、“勝運”のお守りも展開している。

上原理事長は続けて、「鹿革と漆を使った印伝は、やはり丈夫さ、使っていく内に柔らかく手に馴染んでいく感じ、愛着が湧いてくる感じ、凹凸感のある手触りが魅力。使っていくうちに黒はより黒が濃くなる、ベージュ系ならより白くなる…といった経年変化を我々は『漆が冴える』といっていますが、時間が経つことにより色が冴えてきて、光沢が出てくるところも魅力ですね。そして、伝統的な意味のある柄、美しい柄…そういった点も日本人が大事にする部分で魅力になっていると思います」と、その魅力についてコメント。

「印伝は、技法が変わっていないこと、そのときどきに使われるものを素材のよさや漆のよさを生かしながら提供してきたことが、400年にわたって愛されてきた理由なのではないでしょうか。今回のコラボレーションをはじめ、新しい革新を続けているのは大切なことだと思います」と話す。ちなみに現在は、名刺入れやお札入れ、ショルダーバッグやトートバッグ、合切袋(一切合切を入れる巾着)などが人気だという。

■3年間、技術の試行錯誤を繰り返した「URUSHINASHIKA」

さらに、日本初の真っ白な印伝シリーズ「URUSHINASHIKA」のプロジェクトに携わる山梨県産業技術センター デザイン技術部・串田賢一氏も「JIMOTO made Series 甲州印伝スリーブ付カップ296ml」を見て笑顔に。「URUSHINASHIKAが媒体となって甲州印伝がスターバックスさんというブランドと結び付いて、プロダクトとしてもコーヒーマグというものと融合し、こういう製品が生まれたのだなと感慨深いものがありました。デザインも、山梨県の意図を酌んでいただき、白色の印伝に白色の陶器をコーディネートしていただいたことで、ちょうど新しい年の始まりとなる今の時期にぴったりのデザインだと思います。軽いし、色味も明るいし、印伝文様もさすがスターバックスさんならでは。爽やかな印象の製品に仕上がっていると思います。こういう形で、今までと違ったもの同士が結び付いて、化学反応を起こしたものが広がっていくのもよいなと感じました」と喜びのコメント。

「URUSHINASHIKA」は、環境への負荷、自然環境への負荷を考慮した印伝。自然環境への負荷が少ない、なめし技術は3年の試行錯誤を経て開発したとのこと。「通常のなめし加工では、仕上げの段階で染色や塗装をするので、なめし上がりの色や革表面の状態にはそれほど神経質にならなくてもよいのですが、URUSHINASHIKAに使用している鹿革の白色は革本来の、素材そのものの色であるため、このレベルで仕上げるためにはさまざまな工夫が必要となります。汚れを100パーセント除去して、より白く、より滑らかに、より柔らかく…と、一般的ななめし加工では得ることのできない仕上がりを求めるURUSHINASHIKAの革では、加工にごまかしがききません。3年間、技術の試行錯誤を繰り返して、ようやく世に出せるものになりました」と、真っ白な鹿革の希少性についても教えてくれた。

■「JIMOTO made Series 甲州印伝スリーブ付カップ296ml」の生産工程を見学!

これまで「JIMOTO made Series」は、工房などの製作現場で“パートナーツアー”を実施し、商品のお披露目を行ってきたが、今回はコロナ禍につき、オンラインツアーで実施することに。「JIMOTO made Series 甲州印伝スリーブ付カップ296ml」を販売する店舗の店長をはじめとした、近隣のパートナーたちが参加し、商品のアンベールを見守った。

画面に登場した山本裕輔氏から、「甲州印伝」の起源やいわれを聞きながら、実際に制作するところを見学。オレンジやブルー、グリーンなどさまざまな色に染めた鹿革からチェックし、プレス機で裁断した「少ししか取れない」という1枚の革も確認。約200種類も保有するという、美濃和紙(岐阜県美濃市)を用いて作られる伊勢型紙(いせかたがみ/型染め染色用の型紙)も見せてもらった。デザインは小桜やトンボなど多岐にわたる。「こうして、伝統工芸同士が数珠つなぎのように繋がっているのが、印伝の特徴でもあるんです。相互で支え合っているんですよ」と裕輔氏。

そして、パートナーのリクエストで、代表柄のトンボを使って、漆で鹿革に模様付け。ヘラに漆を付け、奥から手前にグッと力を込めて手を移動。裕輔氏は「この3~4秒の間に決まるので、この間に持てる技術を集約させているんですよ。漆を1回で、多過ぎず、少な過ぎず取るのが勝敗を決めるポイントです」と説明した。これを見て、「緊張の瞬間ですね!」「美しい!」「すごい」「まさに職人技」と感動のコメントを送るパートナーたち。

漆を乗せた鹿革は、湿度の高い、特殊な室(ムロ)で乾燥させるそうで「この湿度で表面を硬化させます。ぷっくり膨れ上がった、立体的で凹凸感のある手触りが印伝の特徴ですが、“ぷっくり”の状態のまま固めるために、室で硬化させています」と裕輔氏は解説していた。

最後に、用意された「JIMOTO made Series 甲州印伝スリーブ付カップ296ml」がベールの中から出現すると、「すごい!すごい!」「カッコイイ!」「かわいい」「コーヒー豆とか武田菱がある!」と一同、大興奮。いつものコーヒーをさらに楽ませてくれそうな新たなアイテムを見て、甲州の文化のすばらしさも再発見した様子だった。購入できる店舗は限られているが、甲府観光の際に、日常使いできるこの甲州印伝のスリーブ付きカップも手に入れて、伝統工芸に触れてみてはいかがだろうか。

取材・文=平井あゆみ

※新型コロナウイルス(COVID-19)感染症拡大防止にご配慮のうえおでかけください。マスク着用、3密(密閉、密集、密接)回避、ソーシャルディスタンスの確保、咳エチケットの遵守を心がけましょう。

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