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「分散参拝」に「オンライン授与所」…神田明神に聞く、コロナ禍の初詣

  • 2020年11月28日
  • Walkerplus

新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けることが予想される2021年の初詣。神社本庁が10月に感染防止のガイドラインを発表する一方、12月中に先取りして初詣をする「幸先詣」の推奨やオンラインを活用した施策など、独自に対策を行う神社も現れている。例年は正月三が日に約30万人が参拝するという東京・千代田区の神田明神は、開催中止となった納涼祭りを人気ゲーム「あつまれ どうぶつの森」の中で再現した動画が話題となるなど、オンライン施策に積極的な神社の1つ。初詣を前に公式サイト上でオンライン授与所やお札の郵送フォームを開設するなどの対策に取り組む神田明神の広報担当・岸川さんに、コロナ禍での初詣の変化や、分散参拝やオンライン参拝への見解を聞いた。

■三が日に30万人参拝の神田明神、「分散参拝」への対応は?
――2021年年始の初詣は、例年と比べてどう変化すると予想されていますか。
岸川:来年の初詣でどれほどの方が訪れるかの見込みはまだ分かりませんが、約30万人だった2020年正月三が日の参拝者数からは確実に減るとみています。ただ、それでも数十万人の人手はあると考えています。

年明け前の門の前の行列は、警備員による誘導や通路を一方通行にするなどで整理していますが、来年は行列の間隔をとっていただく、人と人との接触のある場所ではお静かにしていただくなどのご協力をお願いできればと思います。また、当社周辺の出店屋台についても、当社としては今年度はどのような形にするかを相談しています。

――初詣時期の分散参拝に向け、どういった取り組みを行う予定ですか。
岸川:当社は商売繁昌など会社のご参拝も多く、例年は1月中に約1万社の昇殿参拝の申し込みをいただいています。ですので、現在は仕事はじめに当たる1月4日、5日の対策に力を入れています。来年は企業の昇殿参拝については、4日・5日に限り御社殿に入れる人数を2人までに制限し、境内の神田明神ホールでの祈祷も1社5人までとしています。参拝される企業の件数は制限せず、人数を代表の方にしぼることで分散を進める形です。さらに1月中は、1度の昇殿参拝で、7人30社までに制限いたします。また、昇殿参拝の時間も、通常よりも1時間~2時間延長して対応する予定です。

■年明け前の「幸先詣」も話題に。時期をずらしての参拝、御利益に影響は?
――政府からも「年末年始の休暇分散」の提言が挙がっていますが、分散への戸惑いはありますか?
岸川:初詣の混雑分散は神社にとって昔からの課題で、当社でもこれまで分散参拝に取り組んでいました。その中で、参拝される方には「2月の旧正月までは初詣期間です」というお話もさせていただいています。今年は新型コロナウイルスの影響で分散参拝がより重要となったので、その対策をさらに進めていくという形です。

――年明け前に参拝をする「幸先詣」も話題になっていますが、正月から参拝時期をずらしても問題はないのでしょうか。
岸川:時期をずらしてもご利益がないということはありません。先ほどの通り当社では1月中は初詣の期間となりますし、その他、4月の年度初めや会社の創業日などの節目でのお参りでもよいと考えています。また、当社ではもともと年始ではなく年末にお参りにくる会社も非常に多いです。

■参拝できない人のためにオンライン授与所開設。混雑回避のための「お取り置き」も
――神田明神ではオンラインを活用した取り組みも実施されていますね。
岸川:当社では公式サイト上でお札やお守りをオンラインで授与するオンライン授与所やお札郵送フォームを導入しています。お札郵送フォームというのは、どうしてもご来社してのご参拝が叶わない方にかわり、神職が祝詞をあげて御祈祷した木札やお守りを郵送するというものです。当社もご参拝者もまだ慣れていない仕組みにはなりますが、開始以降申し込み数は徐々に増えてきています。

――今後、分散を促進するオンライン施策を追加する予定はありますか?
岸川:ご来社される方にも、オンライン上で授与品の決済をしていただいて、ご来社の際にはその場でお金を納めていただくことなく、お渡しするだけで済むお取り置きをすることで、滞在時間の短縮や参拝時期の分散につながればと考えています。このほか、ネット上で混雑情報を確認できる仕組みも、現在実施するかどうかを含めて検討しています。

――実際に参拝されないことでネックになるお賽銭についてはどうお考えでしょうか。
岸川:本来、オンラインでのお賽銭は許されるべきことではありませんが、「コロナが怖いけれど、どうしてもお参りしてお賽銭をしたい」という方もいらっしゃいます。そこで、たとえば事前にお預かりしたお賽銭を当社の者が代わって新年にお賽銭をするなど、何か応えられる仕組みができないかとも考えています。

■コロナ禍の初詣、神社として「あらゆる選択肢を持てるよう」
――この他にはどのような感染症対策に取り組んでいますか。
岸川:消毒や紫外線の照射による殺菌を実施しており、初詣期間は機材の設置台数を増やすなどの対応を予定しています。神社といっても感染症対策として特殊な環境ではないので、そういった部分は一般常識に従う形です。

――神田明神としては、2021年の初詣の形についてどのように考えていますか。
岸川:コロナ以降、当社に参拝される皆様には感染拡大防止のご協力をいただけていると感じています。混雑して距離が狭まっても、会話を控えるなどの単純な対策でリスクを大きく避けることはできますので、そうした注意をしていただければ新年も初詣にご参拝いただくことは問題ないと考えています。もちろん分散の取り組みも重要ですので、時期をずらした参拝のおすすめはしますし、感染症を懸念してご来社されない方に向けても対応できるよう、あらゆる選択肢を持てるようにしたいと思います。

また、今後、新型コロナウイルスの動向がどうなるかは未知数ですので、今回お話しした内容が対策の全てというわけではありません。その時々の状況に応じて対応していくのが参拝者のためにもなると思いますので、初詣前の準備だけでなく、年を越してからもより良い対応があれば取り入れていければと思っています。

そして、初詣は大きな行事ですので、神社だけでなく、周辺の公共交通機関など社会みんなで対策を考えていかなければならないと考えます。また過度に不安がる方が増えないよう、メディアにおいても感染症やその対策について正しい情報を発信していただければと思います。



取材協力(画像提供):神田明神

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