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沖縄にルーツを持つ日系人のインタビューから移民者たちの人生に迫る

  • 2022年2月7日
  • 沖縄島ガール

沖縄でレストランを開いた日系人への取材を通して、沖縄県民の移民の歴史に迫る書籍「南米レストランの料理人 海を越えて沖縄へ 日系家族のかたいつながり」(ボーダーインク)が発売中。

「南米レストランの料理人 海を越えて沖縄へ 日系家族のかたいつながり」は、海外ものの取材が多いフリーのエディター・漢那朝子(かんな・ともこ)氏の著書。明治から昭和にかけて、沖縄県民はアメリカ・ハワイや南米などに移民として渡ることが多く、その数は全国一多かったといわれている。約5年に一度の割合で今でも開催されている、海外移民など沖縄にルーツをもつ海外の沖縄県系人を招待するイベント「世界のウチナーンチュ大会」が一大イベントになっているほど。

本書では、日系人として沖縄に戻り、料理店を開いている人にスポットを当てている。構成は「第一章 アルゼンチン日系人」「第二章 ペルー日系人」「第三章 ブラジル日系人」「第四章 ブラジル帰国子女」「第五章 ペルー日系人 料理人ではないけれど」と、国別に5章だて。

「はじめに」で、沖縄県民になぜ移民が多いのかなど前提となる記述があり、知識がないまま読み始めても背景が理解できる点がうれしい。

読み始めると「いままで、いいことも悪いこともいっぱいあったけれど、すべてにおいて感謝です」(ヤンバル食堂 比嘉ミリアン氏)など、総じて沖縄に戻ってきて幸せに暮らしていること、さまざまな経験があったからこその“関わった人たちへの感謝の気持ち”が非常に強いことが伝わってくる。そのことは、「自分たちは、ピザや料理を売っているんじゃない。思い出をつくっている」(Salsa 目差パトリシア氏)と、この料理を食べた人の人生にまで思いを馳せている点からも、考えさせられる。

子供の頃に沖縄に戻って来ている人は、さらに「学校」をどうするか、という問題も。多くの人は日本語のスキルのために勉強についていけないことを考えて、自分の年齢よりも下の学年に編入することが多かったことが分かる。自分たちよりも下の年齢の子たちと同じことを学ぶということ、また子供であるがゆえに、移住先の国と日本という国の中でアイデンティティーをどう保つかということも相当苦労があったことも想像に難くない。

さまざまな苦労が想像されるが、読んでいてホッとするのは、上記のような言葉と、それぞれの人の紹介の冒頭に“笑顔の写真”が掲載されていること。この笑顔の写真が1枚あるだけで、読み手がすごく安心でき、次のページから始まるその人のストーリーに期待をしてしまう。この構成がこの書籍が伝えたいことの大きな部分を占めていると感じさせる。

この編集者と漢那氏の構成のアイデアだけでなく、地図をベースにした書影のデザイン、凹凸のある表紙の紙質…これらの全てで紹介した人たち全ての思いを表現しているようで、温かい気持ちになれる書籍となっている。

「南米レストランの料理人 海を越えて沖縄へ 日系家族のかたいつながり」
発売中 2,420円(税込) ボーダーインク

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