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表記や時代背景から沖縄文学の真髄に迫る価値ある1冊

  • 2021年4月13日
  • 沖縄島ガール

それぞれの作品の表現から沖縄文学に迫った著書「沖縄文学の魅力 沖縄の作家とその作品を読む」(仲程昌徳著)が発売中。

「沖縄文学の魅力 沖縄の作家とその作品を読む」は、元琉球大学文学部の教授を務めた仲程氏による沖縄文学論。詩人・山之口獏(やまのくち・ばく)、芥川賞作家・大城立裕(おおしろ・たつひろ)のほか、「個別の章」では、その他の沖縄の作家が発表した小説や戯曲などの表現から、“沖縄ならでは”の表現に迫っていく。

山之口の詩は、範疇の異なる語と語や文と文の連結、限定法、誇張法、擬人法、直喩などさまざまなレトリックが使われているにも関わらず“平易な詩”と言われている。その理由を、語のレベル、述部の処理、詩のモチーフとなった対象などから検証していく。

そして、山之口の詩が人々に親近感を覚えさせる理由を、“応答を基本にしている”点にあるとする。それを山之口が多用した一つの動詞から導き出していく点が興味深い。

第2章では、大城について論じている。1950年代のはじめ、大城は、当時新聞連載多く手掛けていた山里永吉と知り合いに。その際に、山里から「沖縄で文学をやろうとしたら、どうしても歴史をやるようになるよ」と予言されたという。

これは沖縄がたどってきた歴史と、沖縄という土地がその歴史をベースにアイデンティティーが確立している部分が大きいということなのかもしれない。大城は歴史上の「琉球処分」という出来事に向き合い、「小説 琉球処分」を執筆。これまで一つの国として独立していた琉球王国が強制的に日本の1県にされたその過程の中での人間模様を綴っている。

仲程氏は大城が「小説 琉球処分」のエピローグでつづった、若者が発しようとした最後の言葉に注目している。この最後の言葉にならない「……」に大城の歴史観が集約されていると読み取る。この“言葉にならない感情”に、沖縄という場所の特性が表れている。

そして、仲程氏は大城の戦争文学にも注目。大城は生前、「『悲惨な戦場』を書くのは他に任せて、自分は違う戦争を書こう」と、「生活の場が戦場になる」ことにこだわった。特に大城が2010年に発表した「幻影のゆくえ」の中で“遊女”についての考察は、仲程氏の気持ちが伝わってくる。

最後の「個別の章」では、「りゅう子の白い旗」「白旗の少女」を基に「沖縄戦」について、川満信一の詩を基に「母」について論じ、文学界における沖縄の置かれた状況の変化、沖縄における詩壇の歴史などについてまとめた。

沖縄文学を側で見詰めながら、深い愛情とともに見詰めている仲程氏の“沖縄文学愛”がにじみ出る1冊に仕上がっている。

「沖縄文学の魅力 沖縄の作家とその作品を読む」(仲程昌徳著)
発売中 2,200円(税込) ボーダーインク

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