ビール風呂6選、すべすべの肌やアンチエイジング効果にも期待?

  • 2025年5月5日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

ビール風呂6選、すべすべの肌やアンチエイジング効果にも期待?

 入浴の歴史には、古代からさまざまなものがある。クレオパトラがロバの乳の風呂に入っていたのはよく知られているし、ローマ人はワインに、ウェンセスラス王はボヘミアの醸造所で作られたどろどろの麦汁に浸かっていたとされている。現代では、日本の温泉やトルコのハマムなどの世界中の入浴文化が、昔ながらのやり方と、今の健康のトレンドとを織り交ぜながら発展している。

 東ヨーロッパでは、風呂にホップや麦芽、酵母にオオムギを加える手法がある。中世までさかのぼることができ、今でも受け継がれている。このビール風呂は、ベルギーやフランス、スペイン、アイスランド、英国、米国にも広がり、各地で異なる体験ができる。

 無濾過や熟成期間が短いビールを加えるところもあれば、酵母は入れないところもある。ビールにはビタミンBがたくさん含まれているおかげで、肌がしっとりしなやかになるとうたう施設が多い。

 2013年に学術誌「JEADV」に掲載された、ビールの成分の皮膚への影響に関する報告によれば、ホップには、抗菌性や抗炎症性、抗酸化性など、複数の健康増進作用が確かにある。とはいえ、個人差を含めて入浴での効果には検証の余地があり、実際のところは試してみるしかない。

 いずれにしろ、ホップの入った熱い風呂に入れば、とてもリラックスできることはわかるだろう。それでは、そんなトレンドを形作る、おすすめのビール風呂6カ所を紹介する。

ザ・ノーフォーク・ミード
(ノーフォーク、英国)

 英国初のビール風呂、ザ・ノーフォーク・ミードが2024年にオープンした。ノーフォークブローズ(湖沼地帯)を流れるバー川沿いに建つ、高級ブティックホテルの中にあり、最新式のサーマルスイートでは、水治療法プールやハーブの蒸気風呂、ミネラルが豊富でデトックス効果のある泥を塗れる部屋などが楽しめる。屋外には、アロマサウナや熱い浴槽、爽快な冷たいシャワーもある。

 目玉がユニークなビール風呂だ。木の浴槽には、近くのウッドフォード醸造所で作られたビタミンたっぷりの麦芽とホップが泡立つ。これらの成分には、抗酸化作用とアンチエイジング効果があるとされている。

 また、皮膚を若返らせてすべすべにし、炎症を抑え、血液循環を促進するとも言われている。さらに、浴槽のジェットが筋肉をマッサージしてくれるほか、同じ醸造所のエールビールを飲む楽しみもある。

次ページ:ハイテク健康設備とビール文化のミックス

シャトー・スパ・ビールランド
(プラハ、チェコ)

 チェコ人はビール好きとして知られ、一人当たりの消費量では常に世界上位に入る。そんなチェコにさまざまなビール風呂があるのは不思議ではないだろう。

 プラハ初のビール風呂、シャトー・スパ・ビールランドは、1981年にオープンした。その壮大な17世紀の建物には、かつて占星術師であり錬金術師でもあったティコ・ブラーエが住んでいた。同じグループのスパは今ではチェコ国内6カ所に展開されていて、それぞれに特徴があるが、やはり一番輝かしいのはこのシャトー・スパ・ビールランドだろう。

 ここでは、3つある部屋から1つを選んで入浴できる。一つ目は、かまぼこ形の屋根の部屋。二つ目は、ホップやオーク、オオムギなどのモチーフが描かれたステンドグラスの飾られた部屋。三つ目は、ホップを含んだシーダー材のサウナ室が置かれた部屋だ。

 1000リットル入る手作りのオーク材の浴槽は、チェコのクルショヴィツェ醸造所のビールの原料であるホップや麦芽、酵母で満たされている。ホップに含まれる精油には毛穴を目立たなくする効果があるとされ、ビタミンBと活性酵素が豊富な酵母によって、皮膚の再生が促進されるとうたう。

 ライトエールとダークエールが飲み放題なので、入浴前に一杯飲んで生き返ろう。入浴後は、暖炉のそばで、有機わらのベッドでリラックスしながら、自家製ビールパンが楽しめる。ロビーにあるビールの噴水やビールグラスの飾られた銅のシャンデリアを見るのも忘れずに。

オークウェル・ビール・スパ
(デンバー、米国)

 米コロラド州デンバーの中心部にあるオークウェル・ビール・スパは、ハイテクな健康設備(無重力マッサージチェア、赤外線サウナ、シーダー材の水治療法浴槽など)と、クラフトビール文化をミックスしている。フランス系米国人のオーナーであるジェシカ・フレンチ氏とダミアン・ゾアウィ氏は、地元のクラフトビールの醸造所(デンバービール、セルベセリアコロラド、グレートディバイド、プロスト、スパイストレードブルーイング、ローンツリーブルーイング、レフトハンドブルーイングなど)を月替わりで招き、ビールやビール風呂のためのホップと麦芽を混ぜたものを提供してもらっている。

 このユニークな、ホップやオオムギ、ハーブ類の手作りのミックス(酵母は抜き)は、スパの利用者から「泡だった巨大なビールのお茶」と表現されている。浴槽の気泡発生装置によって、身体の周りがビールのように泡立ち、これが新陳代謝や血液循環を促進するほか、小じわを伸ばし、赤みを抑え、ストレスを軽減すると言われている。

ビョウルボージン・ビール・スパ
(リトリ=アウスコウサンドゥル、アイスランド)

 アイスランドのトロットラスカギ半島にあるビョウルボージン・ビール・スパでは、木製のビール風呂に入り、周辺の山々やフリースエイ島の素朴な景色を眺めながら、くつろぐことができる。皮膚と髪を滑らかにする効果を最大限に得るためには、水着は着ず、少なくとも4時間はシャワーを浴びないことが推奨されている。まず、活性酵母やホップ、水、ビールオイル、ビールソルトからなる熟成期間の短いビールに30分間浸かり、それから20分間リラックスルームで休息しよう。

次ページ:3段階の「ダイブ」

 発酵の初期段階にあるビールは、pH値が低く、髪の毛包を引き締め、しなやかにするとされている。また、酵母には皮膚や髪に活力を与える効果があり、ホップにはコラーゲンの生成を促し、しわを軽減する効果があると言われている。入浴後には、館内のレストランで地元のクラフトビールを楽しめる。

バス&バーリー
(ブルージュ、ベルギー)

 バス&バーリーの創業者であるルイ・レゾフ氏とバルト・デ・ブラバンテール氏は、チェコでビール風呂に触れ、2021年にブリュッセルに最初のスパを、2023年にブルージュに2店舗目をオープンした。基本的な設備は変わらない(木製の浴槽、地元で醸造されたピルスナー、サウナ、わらのベッド)が、ブルージュ店はより高級路線で、インテリアはベルギーのデザインスタジオであるWeWantMore(ウィウオンツモア)が担当した。

 中世の食料倉庫が使われており、ドーム状の受付は銅板で覆われていて、伝統的な醸造釜を思い起こさせ、乾燥ホップとオオムギが敷き詰められた天井からはアロマが漂う。利用者は事前に頼んでオリジナルのホップミックスを作ることもできるほか、入浴中にホップで身体をこすることもできる。また、食べ物とペアリングされた、ビールの飲み比べセットのオプションもある。

タアカ・ビール・スパ
(ストラスブール、フランス)

 フランス初のビール風呂、タアカ・ビール・スパは2022年にアルザス地方の中心部にオープンした。アルザス地方はフランス北東部にある、醸造の歴史をもつエリアで、フランスのビールの60%、ホップの大多数がこの地域で作られている。ここでは地元の小さな醸造所のビールやホップの香りを移した爽やかなレモネードが楽しめる。

 スパには木製の樽を使った浴槽が4つあり、ローカルかつ親密な雰囲気がある。おすすめコースは3段階の「ダイブ」で、まずは15分間サウナに入る。それから30分間、ホップと麦芽、酵母を混ぜた風呂に浸かり、15分間クッションを敷いた木製ベンチでリラックスする。この没入できるコースでは、身体を解毒し、心をゆったりさせ、地元の醸造文化を独特な形で体験できる。

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