無料で楽しめる芸術文化巡りや大自然の散策など、5月の旅先5選

  • 2025年4月12日
  • ナショナル ジオグラフィック日本版

無料で楽しめる芸術文化巡りや大自然の散策など、5月の旅先5選

 5月は、地中海、エーゲ海やイオニア海の水温が上がりはじめ、周辺の保養地やビーチクラブが開きだす。イビサ島のスーパークラブでは、観光シーズンの始まりを告げる盛大なオープニングパーティの準備が進む。

 海辺での芸術祭も数多くおこなわれる。英サセックス州にある海岸沿いの都市で開催される「ブライトン・フェスティバル」(5月3〜26日)は、多種多様な形のアートが見られる大きな芸術祭で、街のいろいろなところで実施されるフリンジイベントもあり、プログラムは充実している。ハリウッドのスターや新作が集まる77回目の「カンヌ国際映画祭」も、5月13日〜24日に開催される。

 海に目を向けると、回遊性の海洋生物が観察できる季節だ。オーストラリア西海岸のニンガルー・リーフには、ジンベエザメが現れはじめる。マデイラ諸島の周辺では、シロナガスクジラ、イルカやウミガメの群れが目撃されることが増え、ホエールウオッチングの時期が始まる。

 英スコットランドではシャチが数多く見られるようになる。運がよければ、ハイランド北西部からスカイ島やヘブリディーズ諸島に沿って続く「ヘブリディアン・ホエール・トレイル」のどこかでその姿を目にできるかもしれない。

 英国やアイルランドの古くからの森林地帯も暖かくなって、4月半ばから5月半ばにはブルーベル(ツリガネスイセン)の花が咲き、カーペットのように広がる。英ナショナル・トラスト敷地内の散策コースが開くので、花の中を歩き回ることができる。

ガーンジー島、チャンネル諸島

 チャンネル諸島の春は祝祭の季節で、注目度の高いイベントが続く。「ガーンジー・リテラリー・フェスティバル」(4月25日〜5月4日)は、2週間にわたる本の一大祭典で、プログラムは50を超える。地元の作家から国際的な作家までが集まって新作を披露したり、読書会やサイン会、質問会が開催されたりする。また、子ども向けのイラスト教室や本をテーマにしたお茶会などもある。

 アウトドア好きの人には、毎年恒例の「スプリング・ウォーキング・フェスティバル」(5月24日〜6月8日)がおすすめだ。ハイキングや採集ツアー、ガイド付きの散策などのプランがあり、ガーンジー島の魅力的な地質や曲がりくねった沿岸部、世界大戦の歴史、ブルーベルをはじめとする春の花々を楽しめる。

 解放記念日(5月9日)には、第2次世界大戦中のドイツによる占領からの解放を記念し、セント・ピーター・ポートでは花火が上がる。

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パリ、フランス

 春のパリを訪れる理由のひとつは、「ラ・ニュイ・デ・ミュゼ(夜の美術館)」だろう。例年、5月の第3土曜日(2025年は17日)に開催される。

 パリにある数多くの芸術文化施設が入場無料になり、深夜まで開館してイルミネーションやDJセッションなどの特別イベントもおこなわれる。今夏の終わりごろから5年間の改修期間に入る予定の、かの有名なポンピドゥ・センターもこのイベントに参加している。

 パリを屋外ギャラリーとして探索するのにも、5月はぴったりだ。カルティエ財団の庭には現代アーティストによる作品が展示されている。約2.8ヘクタールあるロダン美術館の庭にはロダンの彫刻作品が並べられているほか、緑あふれるブールデル美術館にも彫刻作品が飾られている。

 廃道となったチュイルリー・トンネルは、2023年に約800メートルのストリートアートギャラリーに生まれ変わった。アンドレア・ラボ・マットーニやイドラン、マダムといったヨーロッパのアーティストによる、パリをテーマにした壁画が展示されている。

メンフィス、米国

 フェスティバル「メンフィス・イン・メイ」では、ブルースやソウル、ロックンロールの故郷といえる米テネシー州メンフィスにアーティストやミュージシャン、シェフが毎年集まる。1カ月間、どこかの国をテーマとする祭典が開かれる。

 2024年のテーマはマレーシアで、2025年は韓国の予定だ。ストリートミュージックが楽しめるほか、バーベキュー料理コンテスト、ミシシッピ川沿いを走る「グレート・アメリカン・リバー・ラン」のようなスポーツイベントも開催される。

 9億円を超える規模の開発が行われた、川沿いのトム・リー・パークには、新たなパビリオンやのんびり過ごせるサウンドガーデン、公園とダウンタウンをつなぐキャノピー・ウォークなどが誕生した。また都市開発によって、歴史的な建築物のホテルへの改修が相次いでいる。

 例えば、古い鉄道駅はホテル「セントラル・ステーション」に生まれ変わり、おしゃれなエリアのホテル「アライブ」はもともとアートスクールだった。レストランに関しても、昔ながらの肉中心の料理からの転換が見られ、ビーガンの創作料理が急増している。

マデイラ諸島、ポルトガル

 ポルトガル本土から少し離れた自治領であるマデイラ諸島は、アフリカ大陸北西沖の亜熱帯海域に位置し、自然を満喫する旅のちょっとした拠点になっている。野生動物に富んだ大西洋のうねりに囲まれ、サーフィンに適した大きな波が見られるほか、沈没船などを観察するレックダイビングのスポットもある。

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 森の深い内陸部には、2200キロメートル近く張りめぐらされたレバダがあることで知られている。レバダとは古い水道橋で、これがヨーロッパでもほかに類を見ないハイキングコースになっている。ガイドなしでも見事な景色が楽しめるが、ガイド付きツアーに参加すると春から初夏の花々をはじめとするマデイラの植生の秘密を学べる。

 5月のマデイラ島では、フラワーフェスティバルも開催される。主都のフンシャルの公園は花々であふれ、花の山車によるパレードもある。ごつごつした急な崖や連なる滝など、島には峡谷のキャニオニングや沿岸のコースティアリングのようなアクティビティができる場所も豊富だ。また、ホエールウオッチングの時期も始まる。

オーストラリア

 南半球に位置するオーストラリアの南部沿岸の町は秋から冬に向かっていく時期だが、5月はアウトバック(内陸部の砂漠地帯)を探検するのにぴったりだ。ノーザン・テリトリーではふたつの空想的な光景が見られるイベントが控えている。

 まずは「ウィンジリ・ウィル」で、ウルルでおこなわれる魅惑的な音と光のショーだ。この名前は地元のアナング人の言葉で、「地平へと続く美しい眺め」を意味する。1000機以上の光るドローンによって、昔から地域に伝わるイメージ、ウルルとカルタカチャラ(ドッカーリバー)に伝わる「マラの物語」が空に描き出され、夢中になれる演出が楽しめる。

 定期的に開催されるドローンを用いたショーとしては、この規模のものは世界初で、観光会社のボヤージュ・インディジェナス・ツーリズム・オーストラリアと、この地域を管理する世界最古から続く文化のひとつをもつアナング族との協力によって生み出された。観光客は、砂漠の丘の上に持続可能な手法で建てられた観客席からショーを眺めることができる。

 もうひとつは、大規模かつ没入感のある作品「ザ・ライト・タワーズ」で、レッドセンターにある。英国人かつオーストラリア人のアーティストであるブルース・マンローによるインスタレーションで、69本の高さ2メートルの塔が流れる音楽に合わせて色を変える。これはアウトバックにおけるマンロー氏の作品としては、2016年にウルルに設置された「フィールド・オブ・ライト」に続くふたつめとなる。

 また5月は、メルボルンの有名なホージャーレーンで行われている地域最大の無料のストリートアート展「ジ・アウトサイダーズ」を見る最後のチャンスだ(5月末まで開催予定)。バンクシーやスウーンをはじめ、たくさんの作品を楽しめる。

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