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Vol.17 福井利恵さん
「命を育てる」「命をいただく」コミュニケーションが世界を変える

  • 2009年5月1日
福井利恵さん

コーチング獣医/ 福井利恵さん

Profile
1974年千葉県千葉市生まれ。自然に恵まれた山里で少女時代を過ごす。小学5年生の時、自らの判断で飼い犬の安楽死を選択する機会を1年間に2度も体験。その時に、命の尊さを扱うことの重要さに気づき、獣医師になることを決意。
日本獣医生命科学大学出身。就職した動物病院を結婚を機に退職。家畜保健衛生所に勤務し、養豚の現場で、産業獣医師の必要性に気づき、養豚獣医師となる。2005年、なのはなベテリナリーサービスを開業し代表となる。

 

養豚獣医師が感じた日本の農業

養豚場にて 子供のころから動物が大好きで、犬・猫・近所にあった牧場では馬とよくコミュニケーションをしてきたという福井利恵さん。獣医師となってから育児をしながら、社会復帰の第一歩として始めた千葉県の臨時職員時代。「仕事で訪れた養豚の現場を見て、農場主が信頼できるパートナーがいないために、薬品ディーラーや飼料会社の方などからの情報に翻弄されているのを見ました。パートナーとしての獣医師の必要性と不足に気づき、養豚獣医師となる決断をしました」
 その後、福井さんは養豚場で1年間研修し、養豚の仕事の素晴らしさと日本農業に於ける養豚業のきびしい実情に驚きました。家畜飼料の殆どを輸入に頼り穀物の国際市況に経営が左右される現実、エネルギー費用の高騰による経営の不安定、安い輸入豚肉に直接影響を受ける国産豚肉の出荷価格など日本に於ける農業の縮図を見てきました。また高齢化と若年労働者の不足は養豚農家を直撃して中小養豚農家は廃業や身売りを余儀なくされている現実。食のグローバル化は否応なく農家を直撃していますが、生き残りをかけた養豚農家の奮闘を見て、獣医として使命感を感じているそうです。


食とは命をいただくこと

 動物の豚=食卓で食べる豚肉、と結びつく方、どのくらいいらっしゃいますか。私たちの食べるものは水と塩を除き殆どすべて他の生命体の命をいただくことで成り立っています。食品としての豚肉が昔も現代も日本人の体質や嗜好に合い、その豚肉を食卓に供し創りだすことに仕事のやりがいを学びます。同時に、養豚場内でのコミュニケーションがうまくいっているかどうかが、私たちが食する「命」というものの大切さが社会全体に浸透するかどうかを決定する要因であることに気付いたそうです。
豚のはな  アメリカでも食肉用動物の飼育環境を高め、食肉用の動物をHumane (Humanに由来するヒューメイン)に扱う運動が、アメリカのロハスなスーパー「ホールフーズマーケット」で始められており消費者にも受け容れられている。これらの食品には「Animal compassion」のラベルが貼られ区別されています。
 そして現在は、Humane食品がテーブルに並ぶことが人間社会にいかに大切か、という視点から農場HACCPを学び広め始めた福井さん。現在は養豚HACCPの農場向け指導、講演、勉強会の開催、コーディネーター獣医師の指導を手掛けています。HACCP(ハサップ)とは、安全な食品生産の国際基準です。現在、予防的な方法を用いて、安全な食品を作る方法として、食品業界に広く用いられています。

 「先日、豚の採血に行ってきました。豚さんの鼻を保定器でぎゅーっとつまんで、おとなしくなっているところへ頚静脈から採血します。うーん、出来るだけストレスをかけないようにスピーディーに、かつ的確に。豚のオーエスキー病というのを撲滅する事業の中での検査のために採血をするのですが、何をするのにも段取りと、何か起こった時も素早く対応する必要があります。特に、肥育舎では豚さんがいっぱいいるので採血に夢中になっていると他の豚がどどーん!と突進してきたりもします」と、楽しそうに話す福井さん。


コーチングとの出会い

 また、農場で機能するコミュニケーションを広めたいという想いから福井さんは、2006年よりコーチングの第一人者である岸英光氏に師事、コーチングを学びます。その中で、機能するコミュニケーションが農場だけでなく、家庭に、教育現場に、職場に、地域社会に、政治に、日本に、世界に。いかに必要かということに気づきます。2008年、機能するコミュニケーションを日本に広めるため、獣医分野のコーチとして独立しました。

日本の獣医大学にもコミュニケーション教育を

世界の獣医コミュニケーション会議で
世界の獣医コミュニケーション会議で
 2008年、カナダで開催された世界の獣医コミュニケーション会議に参加しました。参加されたのは、各国MBAをはじめ、コーチや教育者、獣医師、動物看護士など様々でしたが、欧米やカナダでは意識が高く、その中で日本のコミュニケーション教育が約10年の遅れを取っていることを知ります。そして、世界で出来たパートナーの協力を得ながら、獣医大学にもコミュニケーション教育の重要性を伝え、実践しています。


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