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第3回 インタビュー 備前焼陶芸作家 藤原和さん
人間国宝の藤原啓を祖父に持ち、人間国宝・藤原雄の長男として、土と炎を継ぐ、伝える。

  • 2006年3月1日
 

日本の六古窯のひとつである岡山県の備前焼。
人間国宝の藤原啓を祖父に持ち、人間国宝・藤原雄の長男として、土と炎を継ぐ、伝える。

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第3回 備前焼陶芸作家 藤原和さん

 

profile
1958年人間国宝・藤原雄の長男として備前市穂浪に生まれる。
1980年明星大学終了後、帰郷。祖父・啓、父・雄に師事し作陶を始める。
1990年3月初窯を焚く。1994年朝日新聞社主催「備前藤原三代展」を東京、横浜、京都、大阪高島屋各店。
姫路、山陽百貨店にて開催。
その後、個展および祖父啓の生誕百年記念「備前 藤原啓-炎の詩」展などプロデュース多数。
http://www.zikisai.com

日本の六古窯のひとつである岡山県の備前焼。
きめ細かな黒土で器を作り、釉薬をかけず、1000℃以上の高温でじっくりと焼きあげていく。

--お祖父の藤原啓さまのこと少しお話ししていただけますか。

 私の家は、物書きをしておりました祖父が病気になり郷里の備前に戻ったことから始まります。小さい頃から文学に憧れ、小学生の時日本少年に応募した「名月や棹さしかねて流す船」が一等賞になったことでますます文学へ傾倒し、20歳になった祖父は、郷里を飛び出します。

 菊池寛、坪内逍遥等とかかわりながら自らも新聞に小説を連載し、詩集も出版しており、中でもサトウハチロウ、西条八十のお二方とは公私共にお世話になったようです。昭和18年頃の話です。そしてその頃実家のご近所に住んでいた正宗白鳥さんの弟で万葉学者の正宗篤男さんに勧められたのが備前焼でした。「筆を土にも変えただけ」と後ちに書き記している祖父は備前焼を評して「はちきれんばかりの健康美を持った田舎娘のようなもの」とし、それまで備前の主流であった桃山の茶陶写しよりも、より以前の鎌倉期の力強い作風に引かれ、単純、明快、豪放を自信の作陶理念とし、藤原備前の骨子としました。

--藤原啓さんが備前焼の中興の祖といわれていますが…

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 1948年国の指定による丸技作家の資格を受けました。この時資格を得られたのは備前焼では金重陶陽、山本陶秀、藤原 啓の三人だけであり、このとき作陶一筋の決意を固めたといわれています。
 岡山県指定無形文化財「備前焼」保持者に認定され、1970年「備前焼」の重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、岡山県初の名誉県民に選ばれました。

--備前焼が変わらず日本人に愛されている理由は何でしょう。備前焼の独特の風合いはどうして生まれるのですか。

 ご存知のように陶芸に使われる粘土は花崗岩の風化物で出来ています。種類は大きく分けて3種類。山頂近くにある花崗岩が1万年から1万5千年程の時間をかけて風化して出来た粘土が「磁器土」。主に乳白色で、有田焼や伊万里焼等に使われています。

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 その「磁器土」が、10万年以上の時間をかけて山を下り、山の土との混じりあいの中で生まれた粘土が「山土」。主に黄土色又は赤茶色で、瀬戸物や信楽焼等に使われています。そして「山土」が130万年以上の時間をかけ、山から平野に下り、色々な成分を持つ土との混ざり合う事により生まれたのが「田土」。黒又は濃い灰色をしており備前焼はこの粘土を主に使用しています。
 田圃の上土をどけて、その下にある粘土の層を露出します。その深度は地表より20〜40センチから7〜8メートルに及び何層にも別れており、現在は10メートル以上掘らなければ出土しない場所もあります。又、それぞれの土は海側、山側、川添いと言った採土した場所により不純物の含有量が異なりますので、造り手は個々の好みや、窯の構造にあわせ調合し使用します。私の家では祖父の使っていた古い土から順番に3〜6種類を作品に合わせて(壺、花入、茶碗等)混ぜ合わせて使用しています。
 まず土を切り出してから自然乾燥とあくとりを兼ね3年程野外にさらしておきます。その後、6〜7種類に選別し、一度水槽で溶かした後、素焼きの鉢に移し、半乾きにし、2〜3ミリ程度にスライスし、断面に見える砂や小石などを丁寧に取り除いた後、10キロ程度の塊に揉み固め地下室に収め3年〜5年寝かせてバクテリア等の微生物の力を借り粘り気のある粘土へと成長させます。

--燃料には何をお使いですか。

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 備前焼の登り窯で使用する燃料は赤松です。おおよそですが4トントラックで4杯から5杯分の割木を使用します。備前焼が千年以上の永きに亘って赤松を使い続けている理由は、まず、油分が多い事。窯の中には500から700点の作品が並べられており、ただ単に火力が強いというだけでは焚き口から煙突へ向かって炎が伸びて行かず、後方の温度が上がりません。ですから、炎に伸びがあり、火力が強く、一定の温度が保ちやすい赤松が一番相性が良いとされています。現在は窯からの煙害でご近所にご迷惑をかけるので昔のように頻繁に焼くことは出来なくなった場所もあります。

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