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第3回 インタビュー 備前焼陶芸作家 藤原和さん
人間国宝の藤原啓を祖父に持ち、人間国宝・藤原雄の長男として、土と炎を継ぐ、伝える。

  • 2006年3月1日
 

日本の六古窯のひとつである岡山県の備前焼。
人間国宝の藤原啓を祖父に持ち、人間国宝・藤原雄の長男として、土と炎を継ぐ、伝える。

備前焼陶芸作家 / 藤原和さん

--なぜ備前焼は他の窯業地のように釉薬を使用しないのですか?

 「使わない」のではなく「使えない」のです。理由は土と釉薬の収縮率の違い。備前の粘土は釉薬よりもちぢみ率が多いので釉薬が剥離してしまいます。
 備前焼は窯は登り窯を使用します。備前焼は釉薬を使用しませんので、煙の量、灰の質(量)、温度(熱量)、炎の作品へのあたり具合等の組み合わせに、作品を並べた場所の環境が加わる事でその肌に映る炎の景色が変わります。

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 川の流れをイメージしてください。流れの激しい場所。水の動かない場所、流れてきた物が溜まり易い場所。それぞれの場所に大きさの違う石を置きさまざまな水の流れが作れるように配置する。
 そんな風に、窯の中で場所を選び、作品を置き、炎の流れを作ります。その時、一つ一つの作品にどんな衣装を着せるのか、どんな表情を描くのか、我々は頭の中で想像し、経験を元に考え、炎の形を作品に写しこむ最後の決定をするのです。

--備前焼の焚き方の特徴は…!

 備前の窯焚きは長い時間を掛けて焚き続けるのが特徴だと言われます。一般的な大きさの登り窯で8日〜14日間焚き続けます。しかしこれは備前だけの特別な焼成方法です。

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 焼き物は、まず素焼きをし、釉薬を掛け、掛けた釉薬を定着させる為に再び焼きます。それぞれの窯業地で工程差はありますが、釉薬を使う焼き物の場合素焼き2〜3日、本焼き3〜4日、釉薬を定着させるのに1〜2日と、分けて焼くのが普通です。それを備前の場合は一度に全工程通して行うのだとお考えください。ゆっくりと少しずつ温度を上げて素焼き。割り木を増やしながら温度も上げ、自然に灰を飛ばし作品に付着させながらの本焼き。さらに千度以上に温度を上げて肌にかかった灰を溶かしながら定着させ備前独特の焼き締めが完成するのです。備前土は他の陶土に比べて土の耐火温度が低いので、素焼きに要する時間が長いのは否めませんが、製作にかかる時間は他の窯業地と比べそんなに変わらないのです。この素朴な力強さが備前の魅力ですね。

--今後の和さんのお仕事は…

 私は昭和33年生まれで、55年に備前に戻り、あたり前のように土にさわり、あたり前のように弟子入りし陶芸家になりました。幸い景気もよい時代でしたので先行きに何の不安も無く暮らしておりましたが、3年程前ファンの方からの「藤原家の今後はどうですか?」の問いかけに答えることができませんでした。

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 祖父、父、私と作品はもちろん人柄をも含めた比較。家の維持や管理。先の見えない不安。初めて感じる恐怖感を振り切るように考えた末に浮かんだ言葉が「時代の要請」。今になって考えてみれば祖父が陶芸を始めた事も、父が弟子入りした事も偶然にしてはドラマテイックに演出されすぎており、当時の備前焼の風土がエンターティナーとして力強い個性と豊かな感性を備えた人間を新しい時代の始まりに生まれる光のように捜し求めたのでしょう。それが藤原家だったような気がしてなりません。そして今、藤原備前の伝統を守り、豊かな創造を、技術を、後の時代に伝えて行くことが私の仕事です。  6月に東京で個展を開きます。
 (藤原和作陶展2006年6月14日〜20日 日本橋高島屋)

--私も環境デザインとして、人が生活をしているところの建物や空間をデザインしていますが、人が主語で形なり、色を作っております。和さんはどういうお気持ちでお創りになられてますか?

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 まず、私の作品を囲んで微笑んでいる人達の姿を頭の中に描き、僕の作品がどんな風に使われているかを第三者的に興味を持って見つめます。このイメージはとても大切です。少々大げさかもしれませんが、「私の作品と暮らす人達が、私の作品を使うことによって、より幸せに、より豊かな人生を歩んでくれればれば嬉しいな」と言う想いが僕の作品造りのベースですので、主語が人と言う意味では今井さんと同じだと思います。

--とても嬉しいですね。私は鉄と自然の植物、木と緑そして水の組み合わせが大好きで主語である人間がそれによって楽しく快く美しく感じて生きてゆけるかを作りたいと願っております。備前は私にとって鉄の部分でもあります。どこかでご一緒出来るとうれしいですね。今日はどうもありがとうございました。

■インタビュー後記 今井澄子(環境デザイナー・東京大学講師)

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大好きなジノリ、リモージュ、アラビア、バウハウス等を毎日の食卓に使い、飾りでなく生活の中に入れ、一つ一つに思い出があり、壊れては悲しくなり、手に入れては喜んだりします。私は本物を自分のそばにおいて使うことを一番大切にしています。LOHASと備前焼は唐突のように感じます。しかし海外に出ていて日本に帰ると、言葉、人種、文化の日本の素晴らしさを感じます。日本に古くからあるローハス的思考はこれから世界に発信されていくように感じます。今、藤原和さんとお話しさせていただきそのことを強く感じました。

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