世界で大ヒット!最終回を迎えた今でも大ブームは続いている / Netflixシリーズ「おつかれさま」独占配信中
皆さま こんにちは!韓流ナビゲーターみんしるです。
韓流イベントのMCやラジオパーソナリティーとしてお仕事をする傍ら、 毎日のように追い続けている韓国ドラマ。 私的おすすめ作品や見どころなどをご紹介していきます。
今回ご紹介するのは号泣必至の韓国ドラマ『おつかれさま』です。 済州島を舞台に描かれる3代にわたる母娘の物語はもちろん、 誰よりも妻を愛する夫の献身的な姿とその夫婦愛に、 韓国のみならず世界中を涙の海で包み込んだ「これぞ韓国ドラマ!」な作品。
Netflixの非英語・テレビ部門「グローバルランキング」でNo.1を獲得。42か国・地域でトップ10入りを果たし、韓国のゴールデングローブ賞と呼ばれる「第61回百想芸術大賞」ではなんと4冠を達成した話題の韓国ドラマです!
簡単にストーリーをご紹介しますと…
済州島で海女をしながら生計を立てる母の元に生まれた長女エスン(IU)。
彼女の夢は、早くこの島を出て大好きな文学の才能を開花させること。 幼馴染のグァンシクはそんなエスンを一途に想い彼女を支え続けます。
そして若い2人は様々な困難を乗り越え結婚。 文学に生きるという夢よりも大切な存在となった「家族」のために生きるエスンと、 彼女を支え続ける「鉄の男」グァンシクを軸に描かれる壮大なファミリードラマです。
1話たりとも無駄のない濃厚なストーリーもさることながら、 1960年代から2020年代という激動の時代を生きた市井の人々の姿を丁寧に描き、 今後、 間違いなく語り継がれるであろう珠玉の作品。 家族という枠の中で言葉にできない様々な感情をも紡ぎ出す韓国ドラマ『おつかれさま』の見どころを私みんしるの視点でご紹介します。
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※以下、ネタバレが含まれます。
1. 名作ドラマを手がけた2人の最強タッグ
『おつかれさま』を手がけたのは『ミセン-未生-』、『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』のキム・ウォンソク監督と『椿の花咲く頃』の脚本家イム・サンチュン。
日本でも人気の名作を手がけてきた2人のタッグということで配信前から話題でしたが、 期待を上回る素晴らしい作品となりました。 配信も週に一度4話ずつ、「春・夏・秋・冬」と人生の移ろいを四季に例えるあたりも粋な演出でした。
ドラマの軸となるのはエスンとグァンシク夫婦と家族の愛の軌跡。
貧困や時代に翻弄され、 不幸が訪れようとも互いを愛し家族を愛する2人の美しすぎる夫婦愛に涙。
そんな両親の愛を注がれながらも感謝の気持ちを素直に口にできないもどかしい子ども達の姿には思わず自分を重ねてしまい、 また涙。
韓国の普遍的な家族の形を描きつつ、 家父長制や男尊女卑が激しかったあの時代に誰よりも妻が最優先だという夫や、 率先して娘に「自由」を与えようとする母の姿など、 ありがちな韓国ドラマとはまた違う視点が盛り込まれているところも秀逸でした。
家族が生きた時代をニュースや新聞、 音楽などを使いさらりと見せていくところも上手で、 重大事件はもちろんソテジやH.O.T、 god、イ・ヒョリなどのアイドル、相撲選手だったころのカン・ホドン、 パク・チソンらスポーツ選手や「オール・イン」時代のイ・ビョンホンやムン・グニョン、 そして現在、 圧倒的人気を誇るトロット歌手イム・ヨンウンまで、様々な角度から韓国の文化を知ることが出来るのもポイントで、 舞台である済州島ならではの事柄も含め、 細かいところまで本当によく練られたドラマでした。
済州島のみかん / (C)topic_w5/PIXTA
ちなみに英語のタイトルは”When Life Gives You Tangerines”で直訳すると「人生があなたにみかんを与えた時」。 これは「人生に辛いことが起きた時」という意味のイディオム”When life gives you lemons”の「レモン」を済州島の特産品である「みかん」“Tangerines”に置き換えたもの。
制作報告会で主演のIUは英語タイトルについて「人生が渋いみかんを投げつけたとしても、 そのみかんで美味しいシロップを作り温かいみかん茶を作って飲もう」という意味が込められていると話していて、 幸せな時も辛い時も、 みかんを食べるシーンが多いのも印象的です。
2. 「涙ボタン」と言われたヨム・ヘランの演技
『おつかれさま』の第1話で描かれるのは幼いエスンと母グァンネ親子の物語。
海女として生き、 貧しく学もないグァンネにとって賢いエスンは自慢の娘。
しかし裕福な子が優先されるという理不尽な状況。班長選挙で大差をつけても班長になれず、 誰よりも上手な詩を書いても1位になれなかったエスンは、 幼いながら不公平な壁にぶち当たります。
そんな娘を見たグァンネはエスンのために尽力するのですが、 その姿がもう「ザ・韓国のオンマ」そのもの。 その時代、結婚して子どもを産み、 夫を支えることだけが女性の仕事だと言われていた中、 自分のような人生を送らせまいとするグァンネの姿に胸を締め付けられます。
そんなグァンネを演じたのは今や名バイプレイヤーの名を欲しいままにしているヨム・ヘラン。
今回の役が本当に素晴らしすぎて彼女が登場するだけでみんな一斉に涙を流す…と韓国でつけられた愛称が「涙ボタン」。私もヨム・ヘランの演技に「涙ボタン」を何度押されたかわかりません。
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ここ最近の彼女の役柄は『マスクガール』の息子を愛しすぎるキョンジャや、 夫のDVを受けながらも主人公ドンウンの助力者となる『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』のヒョンナムなど、 命を賭けて子どもを守る母親役が続いていて、 このグァンネ役はその頂点であると思います。
5月5日に開催される百想芸術大賞で昨年に続き助演賞を勝ち獲るのではないかとの期待も高まるばかり。 ちなみに夫に先立たれたグァンネの再婚相手ビョンチョルを演じたオ・ジョンセは『椿の咲く頃』でも夫婦を演じていて、 ドラマファンにはたまらないツーショットでした。
3. 中年の主人公を演じたムン・ソリとパク・ヘジュン
中年になったエスンとグァンシクを演じたムン・ソリとパク・ヘジュン。
若かりし頃の2人があまりにも可愛すぎたので、 俳優が変わった時は若干の違和感は否めなかったのですが、 そこはベテラン2人のこと。 あっという間に説得力のある演技で中年時代のエスンとグァンシクに魅了されました。
今や韓国を代表する演技派女優ムン・ソリが演じるエスンは中年になっても本当にチャーミングでしたね。 かと思えば、文句ばかり言われようとも子ども達を守り味方になってくれる心強い母の姿に、 やはり韓国のオンマは強い!と感じたものでした。
特にクムミョンの結婚話が破談になった時、 エスンが相手の親に言い放ったあの言葉は胸がすく思いと同時に、多くの母娘が号泣したはずです。
考えてみるとドラマ『ジョンニョン スター誕生』では自分の二の舞にならないよう娘の夢を断ち切ろうとする母親役だったので、 今回とは全く反対のキャラクターだったのも面白いところ。
そんなムン・ソリに負けない演技力を見せたのがパク・ヘジュン。
どんな時もクムミョンの砦だった父グァンシク役で名俳優の仲間入りをしたのは間違いないでしょう。 長い無名時代を経て、 40代で大ヒットドラマ『夫婦の世界』の浮気夫イ・テオ役でブレイクと遅咲きの俳優ですが、 最近では観客動員数1300万越えの大ヒット映画『ソウルの春』で主人公チョン・ドゥグァンの右腕ノ・テゴン役の悪役演技で高い評価を得ました。
今作では孫より子どもより妻であるエスンが一番大切だと豪語する一途な「鉄の男」を熱演。
こんなに愛し支えてくれる人がずっと側にいてくれたらどんなに幸せなことでしょう。
娘の恋人にやきもちを焼き、 何かあればいつでも「バックして戻ってこい」といい続けるあったかいお父さんの姿も忘れられません。
だからこそグァンシクが病に冒されやつれていく様は本当に辛く悲しかったのですが、 パク・ヘジュンはリアリティを出すため数日間、 水だけの生活をしフラフラの状態で演技をしたのだとか。 その俳優魂に脱帽です。
4. リアル・グァンシクと言われたパク・ポゴム
『おつかれさま』にパク・ポゴムが登場した時、 思わず「新たな人生キャラ登場!」と心の中で叫んだのは私だけではないはずです。 今まで数々の作品を見てきたファンとしては驚きと同時に、 新たなパク・ポゴムを発見したことに大きな喜びを感じました。
幼馴染のグァンシクはエスンを一途に想い、支え続けます / Netflixシリーズ「おつかれさま」独占配信中
彼のイメージというと公私共に誠実で優しいイケメンの好青年ですよね。
でも俳優として成熟していくには、 誰もが抱くそのイメージからの脱却が必要だと常日頃思っていたのです。 そんな彼が演じた朴訥でありあがらテコでも動かない強さを持ち合わせた男グァンシクのなんと魅力的なこと!しかも実の親よりもエスンが一番という最強の愛妻家なのですから、 好きにならずにはいられません。
父親になってからは貧しさと不幸に飲み込まれそうになりながらも、家族のために生きる静かな大黒柱という姿が多くの視聴者の涙を誘いました。
役のために体重を増やし日焼けした肌を作って挑んだパク・ポゴムは実際の撮影現場でも数々の逸話を残していて、 大型客船から海に飛び込みエスンの元へ泳いで行くシーンはスタントマンが待機していたにも関わらず冷たい海の中で何時間も演技を続け、 陣痛を起こしたエスンをリヤカーに乗せ走り続けるシーンも文句ひとつ言わず何度もやり続けたと言います。
そんな姿を見てスタッフたちは「リアル・グァンシクだ!」と称賛したとか。
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ちなみに私が菜の花畑のキスシーンと同じくらい大好きなのが、 2人が愛の逃避行を決意するシーンでしょうか。
文学少女だったエスンに「ノスタルジーも知らないなんて」と言われ続けたグァンシクが大きな声で詩を詠む場面。 あの詩は韓国を代表する詩人・柳致環(ユ・チファン)の代表作『旗』です。
韓国の学校の教科書に載っている有名な詩で、 理想を夢見ても現実に囚われ動けない人々の姿を竿に縛られた旗に例えた作品。 まさにあの時のエスンの姿そのものなんですね。
グァンシクは詩を間違えながらも叫び続けるのですが、 あれは演技ではなくパク・ポゴムが本当にど忘れしたNGシーン。 けれども周りがアドリブだと思うほど素晴らしかったので、 そのまま使われることになったそうです。
5. 一人二役を熱演したIUの女優魂
IUの表現力には脱帽! / Netflixシリーズ「おつかれさま」独占配信中
2008年にデビューし今やK-popを代表する女性シンガーソングライターIU。
本国で「国民の妹」と呼ばれた彼女が『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~』の主人公イ・ジアン役で女優としての実力を開花させ、 その存在感に魅せられた是枝裕和監督が映画『ベイビー・ブローカー』にキャスティングしたのは有名な話です。
そんなIUが今作では一人二役に挑戦。
負けん気の強い文学少女だった学生時代のエスンを可憐に、 3人の子どもの母になったエスンを体は小さくとも愛情たっぷりに家族を守る逞しさで演じ分けました。
かと思えば、 様々な困難に飲も込まれようとも母親譲りの強さで生き抜く娘クムミョンの姿はもう「国民の長女」という称号がついてもおかしくないほどの演技力で、 長女な私は強く共感し涙したのはいうまでもありません。
またこのドラマで忘れられないのが、 感動をさら増幅させるIUのナレーション。
年代とともに声のトーンを下げていかなければならず、 録音だけで2ヶ月もかかったそうです。
私が最も心打たれたフレーズは「ドアが1つ閉まると別のドアが開く」。
トーンだけで世代の変化を感じさせその意味の重さを伝える、 本当に素晴らしいナレーションでした。
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実は昨年、 ラッキーなことに彼女の12年ぶりの来日公演を見る機会を得たのですが、 その成長ぶりに大きく感動しました。
特に表現力の進化に驚き、当時の最新シングルだった「Love Wins All」で思わず涙したのを覚えています。
このドラマはまさに「Love Wins All = 愛は全てに勝つ」だなぁと思いつつ、 女優としてさらに成熟したIUの次の挑戦が楽しみでなりません。 そしてドラマタイトル通り「本当におつかれさま」という言葉を彼女に送りたいです。
『おつかれさま』にはその他にも、 クムミョンの弟ウンミョン(カン・ユソク)やグァンシクの家族たち、エスンの2人の恋人ヨンボム(イ・ジュニョン)とチュンソプ(キム・ソンホ)、「ハッシ!」が口癖の元お見合い相手プ・サンギル(チェ・デフン)とその妻ヨンラン(チャン・ヘジン)とその娘ヒョンスク(イ・スギョン)、 そしてグァンネ親子を支え続ける海女さん達を演じた名バイプレイヤーたちと、 俳優陣のアンサンブルも素晴らしく語りたいことがありすぎて困ります(笑)。
ドラマの結末も本当に美しすぎました。
最多8部門にノミネートされた今年の百想芸術大賞では、作品賞と脚本賞、ヨム・ヘランとチェ・デフンの助演賞を含め、4冠を達成!
日本の朝ドラにも似た極上のヒューマンドラマ『おつかれさま』は2025年最重要ドラマのひとつ。 まだ未見という方はどうぞお見逃しなく!
みんしる
韓流ナビゲーター。 韓流イベントのMCやラジオパーソナリティーとしても活躍中。 初めてハマった韓国ドラマはキム・レウォン主演の「屋根部屋のネコ」。 Netflix、Amazon Prime Video、 Disney+、 U-NEXT、 Leminoを駆使し毎日のように韓国ドラマを追う日々。『おつかれさま』の裏話はインスタとTikTok(@minsil323)でもご紹介しています。 そんな私は今『君は天国よりも美しい』のソン・ソックの可愛さにやられまくっております♡