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生きづらさを感じる世の中でも、自分を変える一歩を踏み出すために。『君の心に火がついて』の著者・ツルリンゴスターさんに聞きました

  • 2023年4月23日
  • レタスクラブニュース


対等でない夫婦関係に苦しむ主婦、好きなメイクを否定される男子学生、社会のレッテル貼りに息苦しさを感じる女性会社員。そんな、閉塞感の中で生きる人々の前に、「人の心に灯る火の力で生きている」という不思議な少年「焔」が現れて……。
さまざまな背景を持つ登場人物たちが自分の「火」と向き合う過程を描いた話題作『君の心に火がついて』。作者のツルリンゴスターさんに、作品を描いたきっかけを聞きました。

SNSでの発信がきっかけで副業漫画家に


――ツルリンゴスターさんが漫画家になったきっかけを教えてください。

ツルリンゴスターさん:育児エッセイを日記がわりに漫画にしたり、好きなドラマやアーティストのファンアートをSNSで発信していたことがきっかけで少しずつ反響をいただき、この2年くらいでやっとイラストレーター・漫画家という肩書でいろいろなお仕事に関わらせてもらうようになりました。本職は会社員で、ウェブサイトを組み立てる仕事です。



――現在も会社員をしながら漫画を描かれているのでしょうか?

ツルリンゴスターさん:はい。創作は副業ですが、フルタイムで働いたあとに家事育児があり、こどもたちが寝たあとに体力が続く限り描く、という感じで全くおすすめできません。でも会社員のときと、創作のときで使う脳みそが切り替わったり影響しあう感じが好きで、自分にはこれが合っていると思います。

育児中の転職活動で感じた大きな壁


――『君の心に火がついて』は、これまでとは毛色の違う作品ですね。

ツルリンゴスターさん:これまでの連載は育児エッセイ漫画だったので、創作漫画に挑戦したい気持ちがありました。自分自身、出産育児との両立のためにパートだったところを正社員を目指して転職活動していた時期で、いろいろな壁を感じていたことと、SNSで夫婦関係や母親の役割についての投稿が話題に上がることが増えてきたタイミングが合わさり、生きづらい状況にある人々と、その背景にある社会構造の問題に触れられる物語が描けないか、と考えました。



――様々な心の葛藤や生きづらさを抱える登場人物たちを描く時に工夫したことや気をつけたことなどはありますか?

ツルリンゴスターさん:その人物の生い立ちや日々の生活が想像できそうなところまで描けるように、できるだけセリフや表情に気を配りました。そこをおろそかにすると、登場人物が「性的マイノリティ」や「母親」「妻」「女性」「男性」…といったカテゴリー、属性を持ちながら、様々な環境や経験が反映されて生きているということが伝わらないと思ったからです。

作品が公開されてみると「自分とは違うのに、自分がいる気がする」という声があって、不思議な気持ちでした。登場人物たちを「女性はこうだ」「母親はこうだ」と主語を大きく捉えられないように、個々のリアリティを掘り下げていったことが、結果的に多くの人が「自分のように思える」と感じることに繋がったことが意外でした。

心に一度火がついたら、もうそれ以前にはもどれない


――最後に現代社会の中で生きづらさを感じている読者に向けて、メッセージをお願いします。

ツルリンゴスターさん:本当に今そこにいることだけで素晴らしいと思います。毎日辛いニュースが流れて、SNSを開けば心ない言葉が精神をえぐる、そういう状況にうちのめされてしまうことばかりだと思います。フェミニズムやLGBTQ+、環境問題、貧困問題、そういった話題が数年前より発信されるようになって、知識がアップデートされても、実生活に浸透するのには途方もない時間がかかり、その先の見えなさに今みんな少しだけ疲れているかもしれません。

でもそういった状況に気づいて、自分自身が価値のある大切な存在であることに気づいたら、きっと明日から周囲の人にかける言葉や仕草もきっと変わってきます。社会は個でできているので、そこに絶対に意味はあります。私も毎日失敗ばかりですが、勉強し続けて、またみなさんに届けられるストーリーを作っていきたいと思います。



      *      *      *

自分の「辛い」という気持ちを無視しなくていい。ただそこにいるだけで素晴らしい。閉塞感を抱えながら生きている人々をまっすぐに肯定してくれる物語『君の心に火がついて』。自分の心の熱い思いが消えかけているかも……?と感じた時に、改めて読み返したい作品です。

取材・文=宇都宮薫

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