今年も本格的な夏がやってきました。海や川でのレジャーが増える夏は、1年で最も水難事故が起こりやすい時季でもあります。子どもの水難事故の特徴と、命を守るマストアイテムの必要性について聞きました。
グローブライドの主要事業、フィッシングの【DAIWA】にて、ライフジャケットやレインウェアなど様々なウェアの企画を手がける。
子どもの水の事故は毎年起きていますが、実際にはどれぐらいの件数なのでしょうか。まずは警察庁の生活安全局地域課発表「令和5年における水難の概況」から、子どもの水難事故データを見てみましょう。
年間の水難事故の件数データ出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における水難の概況等」より作図
警察庁の生活安全局地域課が発表した「令和5年における水難の概況等」によると、令和5年の子ども(中学生以下)の水難事故件数は全国で93件で、前年度比-11件。
実際には夏に起こりやすいですが、単純に12ヶ月で割ると、ひと月で約7~8件の事故が起きている計算になります。
そして水難した子は177人。このうち、死亡・行方不明となった子は27人で、全体の約15%にあたります。
水難事故が多く起きる場所は?データ出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における水難の概況等」より作図
全体の水難事故で死亡・行方不明が発生した場所を見てみると、第1位が「海」、ついで「河川」となっています。
しかし、子どもだけで見ると、事故が発生している場所は「河川」が最も多く16人。海や用水路、プールよりも、かなり多いのがわかります。
水難事故が起きたときのシチュエーションは?データ出典:警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年における水難の概況等」より作図
シチュエーション別に見ると、全体が「魚とり・釣り」が177人で多いですが、子どもだけで見ると「水泳」や「水遊び」が多く、合わせると21人でした。
子どもに限りませんが、ライフジャケットを着用している場合と着用していない場合では、溺れたときの生存率が大きく変わります。
浮くことができれば救助を待つことができますし、パニックに陥ることも防げるので、生存のためにライフジャケットの着用は必須です。
【着用者の死亡率(令和3年)】
【非着用者の死亡率(令和3年)】
データ出典:海上保安庁「令和3年 海難の現状と対策~大切な命を守るために~」より作図
ライフジャケットを着用していた人の死亡率は10%ですが、着用していなかった人の死亡率は51%まで上昇しています。
上のグラフは海中での転落事故のデータなので、「川など水位が低い場所では、ライフジャケットを着けなくてもいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし水深が10cm程度でも、転倒して口や鼻が水面下に沈むと子どもは溺れてしまいます。
先程のグラフにもあったように、子どもの場合、川での事故が、海での事故の3倍以上です。
川は思っている以上に流れが早く、水流も強いです。川底には苔などが生えていて滑りやすかったり、川底の石が思う以上に簡単に崩れたり、突然深い穴があることもあります。
川は淡水のため、浮力が海より少なく、水位が低くても海より沈みやすいという特徴も。
ライフジャケットの着用はとても大切なのです。
▶次の話 「子ども用ライフジャケット」チェックポイント。「ライフジャケットもどき」に注意!
撮影/瀬津貴裕(biswa.) 取材・文/佐藤望美