「寝ても眠気がとれない」「気づいたら半日以上寝ていた!」このような寝すぎるトラブルは、ストレスを抱えている人や更年期の女性に多いといわれています。睡眠トラブルが起きる原因や、その対処法について薬剤師が解説します。
過眠症とは、夜に十分に寝ているはずなのに日中に強い眠気が出て居眠りをしてしまう状態です。
睡眠不足が続いている場合は、十分に睡眠をとれば眠気は覚めるでしょう。一方、ちゃんと寝ているのに日中も眠くて仕事や家事に集中できない場合は、過眠症の可能性があります。
過眠症の主な原因は、以下の4つを疑います。
強い眠気を感じ、突然寝てしまう「ナルコレプシー」という病気や、睡眠時に何度も呼吸が止まったり浅くなったりしてからだが低酸素状態になってしまう「睡眠時無呼吸症候群」の人は、夜にしっかり眠れず、日中に強い眠気を感じがちです。
ナルコレプシーにかかる原因はわかっていませんが、睡眠時無呼吸症候群は肥満や加齢が原因で発症するといわれているので、心当たりがある人は睡眠外来に相談してみましょう。
抗うつ薬や甲状腺治療薬といった一部の薬の副作用によって、睡眠の質が低下することがあります。
日中の眠気で昼間の活動に支障をきたす場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
寝る前にアルコールを飲むと、利尿作用によって夜中にトイレに起きたり、アルコールが分解される際に生じる「アセトアルデヒド」の覚醒作用で眠りが浅くなったりすることがあります。寝酒を飲む習慣がある人は控えましょう。
また、寝る直前にスマホやパソコンを見ることで、その光に含まれる「ブルーライト」の影響により脳が覚醒状態になり、睡眠の質が下がることがあります。
その他に、ストレスによって自律神経のバランスが崩れることにも注意が必要です。
通常、日中は自律神経の「交感神経」が優位になって活動モードになり、夕方からは「副交感神経」が優位になってリラックスモードに入りますが、ストレスがかかると夜になっても交感神経が優位になってしまい、眠れなくなってしまうこともあります。
女性の場合は生理前に脳内物質の「セロトニン」の分泌が減ることで、眠るときにリラックスできず睡眠の質が下がることも。
さらに、更年期になると女性ホルモンの「エストロゲン」の分泌が減り、自律神経のバランスが乱れて睡眠不足になる方もいます。
「過眠症かもしれない」と心当たりがある方には、以下の3つの対処法がおすすめです。
日中の強い眠気で日常生活に支障をきたしている場合、脳神経内科・睡眠外来・精神科などの病院を受診するのがおすすめです。また、前述の通り薬の副作用で眠りが浅くなっている方も、医師に相談してみましょう。
寝酒を控えたり、寝る前のスマホやパソコンをやめたり、ストレス解消のために気分転換を行ったりすることも、睡眠の質を高めて日中の眠気を解消するために有効な手段です。
就寝時間の3時間ほど前に散歩やジョギングなどの有酸素運動を行う、就寝の2~3時間前にお風呂に入り、約40度のお湯で30分ほど半身浴をするといったことでも、寝つきがよくなるといわれています。
過眠症のような睡眠障害には、睡眠外来や精神科で漢方薬が処方されることもあります。漢方薬は、体質を改善して全身のバランスを整えることを目指すため、服用することで根本的に悩みを解消できる可能性があるのです。
眠気の改善には、「自律神経を整えて、ストレスを緩和し、睡眠の質を改善する」「血流をよくして中枢神経の機能を回復し、眠気を改善する」「消化・吸収機能をよくして全身に栄養を届けて、心とからだを元気にする」といった生薬を含む漢方薬を選びます。
過眠症の人には、次の漢方薬がおすすめです。
・柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう):ストレスを感じ、不安や動悸などの精神症状のある方におすすめです。からだに溜まった熱を冷ますことで自律神経を安定させ、不眠を改善します。
・酸棗仁湯(さんそうにんとう):心身が疲れきって眠れない方におすすめです。ストレスや過労による神経の興奮や緊張を和らげて不眠を改善します。
・加味帰脾湯(かみきひとう):血色が悪く、からだの弱い方におすすめです。精神を安定させ、栄養をからだに行きわたらせることで、睡眠の質を向上します。
監修・文/あんしん漢方薬剤師 山形ゆかり●薬膳アドバイザー・フードコーディネーター。15社以上のメニュー開発に携わり、情報発信を行う。